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抗争〜皆さんに聞いてみたいこと〜

最近家族でジャニーズを応援している。Snow ManとSexy Zoneが主な対象なのだが、僕はジャニーズJr.も併せて広くチェックするようになった。まだ青いグループにも、燻っているメンバーにも、一方で旬を過ぎたグループにだって、光り輝く一瞬を捉えることがある。それを見つけた瞬間にはたまらない充足感がある。

家族のひとりが時々「ミリオンいってほしい」「SixT◯NESには負けてほしくない」などと洩らすことがある。僕はその心理をいまいち理解することができなくて、もう少し掘り下げて聞いてみる。すると

「だってジャニーズだから。昔からジャニーズは誰もがトップアイドルを目指すことを前提とした集団でしょ」

という解が返ってきた。どうも事務所内のグループに序列らしきものがあるらしく、みな上へ上へと目指しているらしい。腑に落ちないところが多かったのだけど、昔からジャニーズを応援してきた家族が言うのだからきっと一理あるのだろう。その後も会議を続け、家族の理論を用いれば、アンチが出現する理由も、推しを変更する理由もスムーズに理解できるような気がした。

矢口はまどろっこしいこと考えるなぁ、と思う人もいるのかもしれない。ただ僕はこのジャニーズ論議から、漠然とした疑問を抜き出している。たとえば、文学好きの人が「最果タヒの最新刊、5万部達成してほしい!」とか「伊坂幸太郎には恩田陸に負けてほしくない!」とか考えるだろうか……? また本屋大賞の1位と3位で、本の価値に優劣を感じるだろうか?

そんな思案の中で僕はひとつ自分に圧倒的に欠けているものに気がつく。薄々気づいていたのだが、決定打を食らったのだ。

人と争うということがよく分からない

頭では分かる。争って優位に立った方が、アイドルとして自分の存在をアピールできるし、挑戦できることの幅も広がる。作家だってヒット作が出て専業になった方が、執筆や取材に全力に打ち込めて好循環になるだろう。

自分が無意識に争っていることも理解している。学校や会社なんかで、自分は意識していなくともライバル視されていたこともあったかもしれない。そもそも他人の評価尺度がある中に籍を置いている時点で争いと無関係とは言えないだろう。

僕が宗教学を学んだことに、この「争いを好かない」という習性はかなり影響していそうだけど、宗教史だって実際には争いの連続である。争いを諌めるはずの文化が争いを生む。原始宗教や土着信仰も例外ではない。
芸術においても前衛的なことを始めた人たちだって、元々は従来の評価基準の中でトップレベルにいた人ばかりだ。「自分らしさでいい」と言っている人が何かを形にした歴史はおそらくないだろう。

僕はこのように頭では争いの存在を肯定しながら、心がそれを排除しようとする力動を感じている。争うことの歴史もメリットも重々理解しているにもかかわらず、自身の意志としてその選択を取ることが難しい。

争いに身を置くことに躊躇いのない人はいつも溌剌としているし、彼がどんな人間かは置いておいて、成しているものの数は圧倒的に多いように感じられる。そういう人に憧れる気持ちがないわけではない。……というか、生きていく上で全く憧れないという態度を取るのが段々難しくなってくる。優越感や溌剌さといったものはどうしても生存に有利なのだ。

アーティストや作家であればその芸術性を目指し形にしていくこと、一般社会人であれば目の前にある仕事をキチンとこなし新たな仕事を掴んでいくこと。他人の評価は後から付いてくるオマケにすぎない……
……というのは詭弁だと思う。行為と評価は綺麗に二分できるものではなく、論じがたい厳しい現実に対する反動のようにも聞こえる。逆に勝てば官軍、というのもまたある種の反動のように見える。

ここで読者の皆さんにひとつ聞いてみたいことがある。
争える人間になるにはどうしたらいいか?
もういい年なので、自分を変えようなどとは露も思わないのだけど、自分に圧倒的に欠けているものとどう向き合ったら良いかの参考にさせて頂きたい。もしコメントを貰えたら嬉しいです。

最後に、家族との論議の話に戻る。
アイドルは結局はビジネスである(ビジネスの上に成り立っている)。ただその性質上、視聴者にはビジネスであることを感じさせないような配慮は必要だ。家族の方が現実を受け入れているし、僕はその構造の配慮をありがたく受け取っているだけなのだ。
ラジカルに考えたら、お気に入りのアイドルが不動の一位を長年独占したら家族は興味をなくしてしまうだろうし、リリースしても泣かず飛ばずの時期が続いたら僕だって応援し続けることが難しくなるだろう。
互いに極論を肯定できない時点で、意見の相違はあれど同じ穴のムジナなのだと思う。常識的範囲内っていうフワフワした存在。多くの人と同じところにいる。だから議論なんてものは睡眠を削ってまでするものではないのだ(自戒)

お目汚し失礼しました

#エッセイ

ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!