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幸福の値下げ【エッセイ】

過去に「幸福は800円で買える」といった内容のエッセイを書いたことがある。失意のどん底にいた時に、導かれるままに入った【牡丹園】の入場料が800円、その後に立ち寄った本屋で手に取った新書が800円だった。どちらも自分の人生に大きな転機をもたらした体験であり、幸福を見い出すために必要な金銭はそれほど多い額ではないという意味だった。

今年、地元にある牡丹園がリニューアルオープンをしたそうで、それをきっかけに初めて存在を知った。見頃には少し(だいぶ)早そうだったが、あの来訪から10年弱、久々に牡丹を観たいと想って足を運んでみた。ウェブで見たところ、入場料は1200円とのことだった。ああ1000円を超えてしまうのか、と少し残念な想いがしたが、いたしかたない。

しかしいざ入場受付の前に立つと、こんな看板が建てられていた。『開花株が少ないため本日入場料半額600円』と。なんだか笑ってしまった。まるで僕の来訪を待ってくれていたみたいではないか。

色んなものの価格が高騰し、有名アミューズメントパークの入場料もビックリするほど値上がりし、ではその分心に残りやすくなったかというと決してそうではなく。値上げしても値下げしてもさして変わらない幸福の価値というものを、きちんと見定めながら心に刻んでいきたいと思った。

ひと株の牡丹が花をつけているのは3〜4日だそうだ。それはつまり見頃に先駆けて咲いた疎らな株たちは、満開の頃にはもう花を落としているということ。その時その時にしか出逢えない花があるなら、600円ラッキー!とか言ってないでちゃんと1200円払ってあげたいものである。
というわけで来週か再来週にももう一度訪れるだろう。それで計1800円。シーズンパスは2000円だそうだ。半額の日があったことで絶妙になった価格設定になんだかむずむずする。

一期一会の花々たち。牡丹園の前後に行ったお花見や散歩の写真も併せて、どうぞご覧ください。

#エッセイ #日記 #花テロ

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