見出し画像

つぶやきから生まれた物語②

2023/1/3のつぶやき
久しぶりに妹と会ったのでスイーツデートです🤭

☆**☆**☆**☆**☆**☆**☆**☆**☆**☆**☆

サッカーが好きだ。
照りつける太陽も叩きつける雨も
ボールを蹴っていれば何も苦にならない。
「マコト頼んだ!」
パスを受けてドリブルで走り出す。
1人抜き、2人抜き、3人目をかわしてシュート!
思いを込めて蹴ったボールは見事ゴールネットを揺らす。
「やった!さすがマコト!」
チームメイトからの祝福は勿論嬉しいけれど、それよりもヒカルにゴールシーンを見せられた事が凄く嬉しい。
一卵性の男女の双子はとても珍しいって母さんが言っていたけど、そのせいなのかな?ヒカルは生まれつき体が弱くていつも寝てばかりいて、サッカーの試合は滅多に見に来れなかったからさ。
「マコト凄い!カッコイイよマコト」
「当たり前だろ?ヒカルが応援してくれたんだから!」
きっとヒカルが寝てばかりいるのは自分のせいなんだ。ヒカルの分まで元気を貰っちゃったから。
だから、自分がヒカルを守らなきゃ!
もっともっと強くなって、大人になってもヒカルを守るって決めたんだ。
なのに…

「なんで?なんでマコトは一緒に行かないの?ヒカルだけなんて嫌だ、嫌だよお母さん!」

お父さんが死んでヒカルとは離れ離れになった。
神戸と東京ってどれくらい離れているんだろう?
お小遣いで会いに行けるのかな?
「ねえお爺ちゃん、すぐヒカルに会えるよね?」
何度も何度も聞いてみたけど、お爺ちゃんは何も言ってくれなくて、強くなるって決めたのに、おかしいなぁ、涙が全然止まってくれないんだ。

あれから10年…

『全国高校サッカー選手権決勝、国立競技場は4万人の大観衆で沸き立っています。神戸K学院高校 対 東京K澤大学附属高校どちらが勝ってもおかしくありません』

国立競技場のロッカールーム。
高校サッカー最後の試合、この試合に勝って胸を張って再会するんだ!
妹の為に強くなる、そう心に誓ったからここまで来れた。あの日の涙があったからこそ!

『さあ、2-2の同点で後半も残り僅か、アディショナルタイムは1分を切っています、このまま延長戦になるのか?』

おそらくこれが最後のプレー、決める!このボールを絶対にゴールまで運ぶ!
1人抜き、2人抜き、3人目をかわしてシュート!
思いを込めて蹴ったボールは…

渋谷のハチ公前で待ち合わせなんて、まさか自分がするとは夢にも思っていなかった。
おまけに約束の時間より30分も早く着いてしまってどうしたものかと思っていたのに
「お兄ちゃん!」
いきなり肩を叩かれて飛び上がってしまった。
「や、やあ」
「何それ、10年振りに可愛い妹に会ったっていうのに酷くない?」
「いや、その、何か見違えてしまって」
「何で見違えるのよ、同じ顔なのに!」
「いや、その、雰囲気が随分変わっているから」
「当たり前でしょ?いつまでも小学生じゃないんだから」
「いや、そうじゃ無くて、その」
「綺麗になった?」
「はっ?同じ顔の奴にそんな事聞く?」
「そうか、それもそうだよね。あっ!それよりさ、美味しいスイーツ食べに行こうよ」
「スイーツ?何で?もっと焼肉とかステーキとか食べに行かない?」
「はあ〜お兄ちゃんモテないでしょ?」
「えっ?」
「女の子とデートするのに焼肉とかステーキはあり得ないから!」
「何だよデートって」
「デートでしょ?凄く楽しみにしてたんだよ、10年振りの再会」
「俺だって!だけど…お前本当に…真琴だよな?」
「何よ、どう言う意味?」
「だってすっかり女の子じゃん」
「昔から女の子だけど何か?」
「いや、別に」
「そんな事言うなら光だって大変身じゃん、病弱のか弱いヒカルちゃんが懐かしいなぁ」
「昔の話だろ!」
「先に昔の話をしたのは光でしょ?」

ああ、そうだ。あの頃の真琴は俺の為に無理していたんだ。あの別れの日でさえ、泣かずに我慢していたっけ。
俺はそんな真琴を守りたくって、真琴の為に強くなりたくって、だから俺は…

「どうしたの光?」
「えっ?いや何でもない」
「あのね」
「ん?」
「逆転のシュート、カッコ良かったよ。優勝おめでとう!」
「当たり前だろ?真琴が応援してくれたんだから!」
「あれ?何処かで聞いた事あるかも」

そう言いながら腕を組んでくる妹と、今日はスイーツデートをしよう。    end





  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?