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おばあちゃんへの手紙 16-1


その後も順調に歩を進め、
七十七番札所道隆寺を訪れたところで、

子供たちと修練している、
少林寺拳法の総本山を
見学しに行こうということになった。



開祖、宗道臣が
戦争で体験した辛い経験を踏まえ、

「力の伴わない愛は無力、愛の伴わない力は暴力」
「人づくりによる国づくり」の理念をもとに、

しっかりとした力と愛を持った若者を、
敗戦から復興していく日本を
導くリーダーとして育てよう、
ひいてはそれが愛する祖国の
復活への近道となる。

「とにかく、人・人・人、全ては人なのだ」
という気持ちから
裸一貫ここ香川県多度津に立ち上げた
武道+仏教という特異な組織なのだ。

「半ばは自己の幸せを半ばは他人の幸せを」
と謳い、まずしっかりとした
幸せな自己の確立が先であって、
そうした者だけが
本当の意味での他の幸せを願い助けていける、
としている。

つまり、
自分の足元もおぼつかないものが、
他人に要らぬお節介を焼いている暇があるなら、
自分を磨けということである。

多度津の緩やかな丘陵地を車で登っていくと、
小高い山の斜面を
段々にくり抜いた広い敷地いっぱいに、
2段にわたって大きな寺院と思われる建物群が姿を現した。

日本の寺社仏閣というよりは、
中国の寺院を思わせるような造りで、
大きな武道場を従えるその様は
まさに少林寺拳法の総本山
といった風格を漂わせている。


駐車場に車を停め、
みんなでその山門へと向かう。

佳乃も勇作も自分が習う少林寺拳法の総本山、大元を見学出来るとあって嬉しそうだ。


私も愛も少し緊張しながら山門をくぐると、

そこには夏の陽射しに照らされて、
青々と輝く芝生の参道が真っ直ぐに伸び、
広々とした芝の緑の先には、

目にも鮮やかな赤を基調とした外壁に、SHORINJI KENPO という文字と、

シンボルであり道着の胸の部分にも縫い込まれている、
盾の模様の中に双円があしらわれたロゴマークが刻まれていた。


その佇まいは、
まさに威風堂々といった感じで、
見るものを圧倒していた。


ちなみに
この二つの円を重ねて図案化した
双円のシンボルマークは、
力と愛の調和を願い表している
と教えられている。

あたりを見回しながら、
ゆっくりと芝に囲まれた参道を進み、
建物の中の事務所らしきところを訪れた。

扉を開けると、
数名の職員の方々がデスクに向かって
何やら作業をしている。

恐る恐る私が声をかけた。

「すみません。
東京の水元道院に所属している
加藤と申す者ですが、
家族でお遍路をしていて
近くに来たものですから、
ぜひ本山を見学させてもらいたい
と思いまして…」


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