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MMTとマッカーサーの呪い:憲法第9条と財政法

MMTをなぜ主流派は認めないか。論理的に明らかなMMTの主張を、世の中でも最も頭が切れるはずの「経済学者」が真正面から認めようとしない。彼らの反論はどれを見ても、明らかな誤りがあるか、何かとすり替えた議論をしているだけだ。そして彼らを御用学者として財務省は抱え、誤った政策を何十年も政府に続けさせ、日本の世界的な地位をどんどん落としていっている。

MMTは、変動相場制で自国通貨を有している政府は通貨発行に制約がない、ということを言っている。もちろん、無意味に通貨を発行して価値が下がれば当然インフレになるので、インフレ率に基づいた財政規律を主張している。
 現代における貨幣とは何なのか、ほとんどの人が理解していない。私もそうだった。ところが、実際に日本の通貨制度を素直に観察して見れば、MMTの主張は実に当然で当たり前のことを言っていることが分かる。だから、以前、竹中平蔵が主張するプライマリーバランスをなるほどと思っていた自分が恥ずかしいし、知っていて嘘を広める彼らの罪の大きさは計り知れない。

日本はドルショックを契機として、1973年に変動相場制に完全に移行した。その後1985年のプラザ合意を経て、1988年に日本の本位金貨は貨幣ではなくなり、名実ともに現代的な管理通貨制度に移行した。その時から、日本ではMMTの言っていることは誰にも否定のできない論理的帰結になっていたわけだ。日本で最も頭の良い官僚の組織である財務省がそのことに気が付いていないはずは、もちろんないだろう。

MMTを認めずに、必要のない財政再建を唱える財務省の言いなりになって政府が政策を進めた結果どんなにひどいことになったのか、次の動画の中野剛志の解説を見るとよく分かる。

日本を代表する経済学者はそんなに頭が悪いのか。官僚の中でも最も優秀な人たちを集めているはずの財務省はそんなに知能指数が低いのか?
 もちろん、そんなはずはない。なぜこんなことになるのか、その理由の一つについて興味深い説があったので書いておく。

その説とは、日本人の多くが国家を信用していない。だから国家が強力になることに対する強い抵抗があり、ひたすら国力を損なうことに勢力を傾ける。その大本に、マッカーサーが作った日本国憲法がある、というのだ。
 一体何の陰謀論だよと思ってしまうが、次のとおり、簡単な論理でつながっており、確かに筋が通っているのだ。
 日本国憲法には第9条があり、戦争放棄を規定している。独立国家が現代でも紛争の解決手段として重要な戦争という手段を放棄するのは間違っていると思うから憲法は改正するべきだが、それは本稿のテーマではない。
 そして、歴史的事実として、国家が戦争をしようとする時、無制限に財政出動をすることになる。つまり、財政出動ができなければ、戦争もできないわけだ。国家の財政を担う財務省が憲法第9条を守るためにできることは、政府に無制限に財政出動をさせないことだ。

この仕組みをマッカーサーは財務省(旧大蔵省)に意図的に組み込んだ。
 財政法第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
 この法律の直接的な起案者となった大蔵省主計局法規課長の平井平治は、第四条の意義について、戦争と公債がいかに密接不離の関係にあるか、そして公債無くして戦争の計画遂行の不可能であることを述べている。
 この法律は1947年にできている。そう、日本国憲法の施行された年だ。つまり、財務省は憲法第9条の理想を実現するために作られた財政法をひたすら守ろうとしているだけだった。官僚が法律を守ろうとするのは当然のことではある。しかも、この第四条を変えようとすることは、日本国憲法9条を変えることにも等しく、財政法の根幹を揺るがすというわけだ。

これには驚いた。三橋貴明氏が運営している三橋TV第87回で説明されているが、日本のバブル以降の低迷はマッカーサーの掛けた呪いだったというわけだ。

先にリンクを掲載した動画の中では、中野剛志は別の理由として、センメルヴェイス反射なのであるとの説を述べている。過去に誤った施策で招いた悲惨な結果を認めることができないためなのだそうだ。

ただし、MMTが主流派である先進国などそもそもまだ存在しない。三橋貴明もお金とはなんなのか、世界中のほとんどの人が理解していないと述べている。確かに、日本が管理通貨制度に完全に移行したと言えるのはちょうどバブル最盛期の頃だ。長い歴史の中ではほんの最近のことで、一般人が理解できないのも無理はないだろう。
 権威主義国家の中国が、資本主義のうまいところだけ取り入れ、MMTの見地からは極めてまともな財政出動を20年間続けた結果、一気に日本を抜いて世界第二位の経済大国になった。これこそMMTの実証事例になるのではないか。
 さらに、いま、感染拡大の状況を乗り切るために、世界中が未曾有の財政出動をしている。これを、自分たちの税金を使って、というトンチンカンなことを言う人も後を絶たないが、結果としてMMTの実証事例になっていくのだろう。

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