見出し画像

或る音楽ライターのプレイリスト(2018/9/26)

最近買ったCDとここ数日でライヴを観てグッときたバンドに関して書きました。たまたまですが、邦楽のみ。北海道のバンドが二組いるので、そこも是非聴いて欲しいところです。グッドミュージック揃いになりました。

MUSICA在籍時には武道館ライヴレヴューを自ら志願したぐらい好きだったバンドなのに、久々にアルバムを買いました。ごめんなさい。でもその理由は明白で、“栞”が素晴らし過ぎて。女性の喚き声のような歪んだギターとしっかりとボトムを支えるリズム隊で織り成す、クループハイプらしい邦楽ギターロック。ただそれだけだったら、もう個人的には飽き飽きしたフォーマットのありきたりの楽曲なのだけど、あまりにメロディの強度が素晴らしいし、もう尾崎さんは過激な表現なんてなくとも、生活の中に零れ落ちた感情と物語を、日本語らしい機微を放って描いている。僕のようにクリープハイプから少し疎遠になってしまっている人も、尾崎世界観という人間のソングライターとしての才能に惚れ直すと思います。そうだったな、最近の言葉を詰め込んだ歌モノギターロックはマイヘアじゃなくて、クリープが流行らせたんだったよな。

まだショートバージョンしかないから伝わり切らないのですが、この楽曲はThe Floorというバンドそのものを、初めて完全に描けたリードトラック。彼らは、最近の歌モノバンドのメンバーとしては珍しく、メンバー全員が洋邦問わず、音楽をディグり続けているバンドで。この曲は彼らの好きな音楽の要素を混ぜて薄めるではなく、全部乗せで継ぎ接ぎしたにも関わらず成り立ってしまっている、奇妙奇天烈な楽曲なんです。ジャンプ漫画の主人公ってラスボスと闘うときに、今まで出逢った仲間や宿敵とかの技を借りて、最終奥義!みたいなの出したりするけど、そのイメージに近い。海外インディー、ポストロック、邦楽ギターロックーー彼らの音楽的源泉を全部そのまま出して、フロアのセンスで一曲に丸め込んだ、まさに「革命を鳴らす」楽曲。昨日、ツーマンでの長尺ライヴの中でも抜群に光っている楽曲でした。

フロアに続いて札幌のバンドですが、マイアミパーティのライヴを先週末に観た(もちろん初めてではないが)。THA BLUE HERBやeastern youthというバンドを生んだ北海道という土地で、ポエトリーリーディングに通じるフリースタイルの歌とコンプ感のない裸の音作りを武器に持つバンドが久々に出てきたな、とワクワクした。ヴォーカルのさくらいは、いつだって過去に縋ってばかりだし、目の前にいない君にばかり向けて歌を叫んでばかりいて、あなたの救世主になるような歌はまったく歌わない。ただ、その裸の感情が人々の共感を呼び、その共感がライヴハウスで膨らんで弾けるエモーショナルな瞬間が、僕はとても好きだ。「くよくよすんなよ」とさくらいはオーディエンスによく言うが、一番「くよくよ」してるやつがステージに立って、その「くよくよ」を歌にしてるもんだから、その言葉が凄く腑に落ちてしまう。

バレーボウイズというバンドのライヴを先週末初めて観た(マイアミパーティと対バンだった)。身も蓋もないことを言うと、本当にライヴがよかった。昭和歌謡的、フォーキー、ブルージー……いろいろな形容詞が思い浮かんだのだけど、何よりも最初に思ったのは、カオティックで、ぐっちゃぐっちゃで最高だ!という、ライターである自分を張り倒す感情だった。音楽的定石からは外れているようにも聴こえる合唱の圧力、ステージ上で見せるまったくもって共通項を持たないメンバー達の動き、そして何よりも日本人の根源的感性に何故か深く刺さるメロディラインは必聴。ただ、是非ライヴで観て欲しいバンドだ。

こちらで今まで挙げた楽曲をすべて聴けます。

更新情報をお知らせしているTwitterはこちら

いただいたサポートは、すべてテキスト作成の経費とさせていただいております。いつも、本当にありがとうございます。