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こんな風に生きていけたなら?映画『PERFECT DAYS』


「こんな風に生きていけたなら」

『PERFECT DAYS』は、2023年に日本・ドイツ合作で制作されたドラマ映画。 ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役に迎え、東京を舞台に清掃作業員の男が送る日々を描く。

映画って、観た直後にもいろいろな感想を抱くけれど、自分にとってどんな映画なのかが分かるようになるまで時間がかかったり、後から思い返したら全然違うテーマの作品に思えることがあって

特にこの映画は、観た直後には何のシーンだったんだろう?って思う場面とか、私には理解できていないところとか、気が付けなかったこととかたくさんあって、気がついたら鑑賞してから1ヶ月以上が経過していた。

トイレ清掃員平山さんの日常生活を穏やかに描いているその作風も相まって、普段の生活の中でふと思い出される場面がとっても多くて

今更ながら腑に落ちる場面があったり、あぁこれはこういう映画なのかな、少なくとも私にとってはこういう意味があったなって思うことがじわじわとあって

そんな風に1ヶ月かけて咀嚼してきた中で、私にとっては【自分なりの幸せを生きていくこと】と【そのために失われたもの】みたいなものがすごく印象的に思えてきた。

平山さんの生活は、世間一般的には豊かなものとは言い難いものなのかもしれないけど、そんな生活を満喫している平山さんは、とっても豊かな人生を送っているようで、まさに自分なりの幸せを生きていて

自分が何に満たされる人間なのかを把握して、きちんとそれに満足して過ごすことは、自分が豊かな心の持ち主であることの証明みたいだなーと思った。

そしてそんな平山さんの生き方に憧れを感じてしまうわけで、映画のキャッチコピーの「こんな風に生きていけたなら」がとってもしっくりくる。

でも、自分の幸せを追う平山さんの生き方は、とてもカッコよくて豊かであることには違いないんだけど、やっぱりそのために失ったものとか、普通の幸せと自分との距離感みたいなものについて、どうしようもなく虚しくなったり不安になったり寂しくなったり、するものなのかな。

そんな風に思うと平山さんの涙したシーンとか、寂しそうなシーンとかが急に腑に落ちる気もして、

平山さんは自分の幸せを生きようという強い意志を持ってこの生き方をしている訳ではなくて、むしろ、世の中の幸せに適当に自分を合わせることができなかった結果として、自分なりの幸せな人生を生きているだけなのかもとか思ったり、

それなのに「こんな風に生きていけたなら」というキャッチコピーみたいな気持ちになったのは、私に社会的評価を気にする側面があって、さらにそこに自分のコンプレックスみたいなものがあって、自分なりの幸せをしっかり追っている姿に憧れてしまうからなのかな?

平山さんのように、自分が何に満たされるのかを理解して生きていくこと、とっても豊かな生き方で憧れるけど、結局今の私が社会的な地位とか快適さを追うことから逃れられないのは、全然かっこよくないけど、一般的に幸せとされているものをそれなりに受け止めて満たされることができるっていうことでもあって、結局どっちが幸せなんだろう。

そして、もしかしたら(もしかしなくても)この作品のテーマって全然こんな部分じゃないのかもしれなくて、私が映画を見てから勝手に考えたことで、むしろ作品の中で提起されているものにはきっと気がつけてすらいなくて、

それでも、鑑賞後にこんな風に物事を考えさせてくれる映画とか、そんなものを作れる人がいることとか、本当にすごい。今年もたくさん映画見て、勝手にいろいろなこと考えて、色々な価値観に触れたり、自分のことも誰かのことももっと理解できたり、したらいいな〜〜〜


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