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私の作品紹介1 : 家具職人だった父の道具でつくったグッズ

noteの投稿企画「春の連続投稿チャレンジ」、
少々無理やりながらもテーマを見つけて書いてきました。

今回は私の作品紹介のテーマで投稿チャレンジ。

と言いつつ、noteでは本業ずばりの話はあまりしないと(ゆるく)決めています。それに、どうも私は自分の仕事を「作品」と言ってしまうのには抵抗がある(たいてい制作例と言っている)。

なので、そこから少しはみ出て、作品と言っても良さそうなものを紹介したいと思います。たぶん今回ともう一回くらい。今回は父の道具をモチーフにしたグッズについて。


家具職人だった父

私の父は家具職人でした。

会社勤めの職人でしたが、休みの日に自宅用や親戚から頼まれたものをつくることも多く、家の面積に対して広めだった玄関の土間や、時には家の前で作業をすることも。

当然、家にも道具があり、玄関には道具を入れる引き出しが置かれ、家族分のたくさんの靴と並んでいつも墨壺が置かれていました。(それで小さい頃は靴の仲間と思ってた)

墨壺というのは、長い距離の直線を一瞬で引く道具。墨が入った、靴のような形をした器から糸が引き出せるようになっていて、それを引っ張り出してもう一方に固定し、途中の糸を指でピンと弾くと、糸についた墨が下にある板について直線が引ける仕組みのもの。
…って、こんな説明でわかるかな。
画像検索してみたら今の墨壺は随分形が変わってるんですね、かと思うとやたら装飾的だったり。我が家にあったのはかーなり質素な雰囲気のもので、靴っぽい形だったんですけど。

道具の中でも家族が使っていいものと、父だけが使うプロ仕様のものとに分かれていて、父専用のほうは子どもがおいそれとは触れない存在。

その特別感もあって、私は女の子向けの一般的な手伝い(料理とか)よりも、こちらのほうに興味がありました。

ところが女の子ゆえにたいしたことはさせてもらえず、せいぜい妹と一緒に下地のとのこを塗るくらい。それでも作業をしている近くで父が鉋をかけたり、鋸を引いたりするのをみるのが好きでした。

父も小さな娘がそばで見ているのは嫌ではなかったらしく、昔は鉋は◯年、鋸は◯年、なかなか触らせてもらえなかった、今はそんなこと言ってられないけどね、とか、作業や修行にまつわる話を時折してくれたのを覚えています。

私もやってみたいなーと内心悔しく思っていたけれど、自分が道具を使う身になったら(デザイナーの道具だけど)、確かに人に道具を使わせるのは嫌だよね、と理解するようになりました。
父もよく、人に使わせると変な癖がついちゃうんだよ、と言っていましたが、ほんとそうなんですよね。

階段下の小部屋

時は流れて、父は会社を定年退職。建て替えた家の階段下には父専用の物置ができました。

かつて玄関先に溢れていた道具は、ハリーポッターが住んでたみたいなこの小部屋に、すっかり収まりました。退職して会社から持ち帰ってきた道具の数々も加わり、鉋だけでも大小結構な品揃え。

会社出入りの道具屋さんに注文して、自分好みのをちょくちょくつくらせてたみたいなんですね。それはそれは母が呆れるくらいの量。

すごいなーと私も半ば呆れつつも、道具がいろいろ欲しくなる気持ちはすごくわかるのでなんとも言えない。

そして数年前に突然父が逝ってしまった後、このたくさんの道具が残されました。

撮影

告別式も済んで、落ち着いた頃。一眼レフを持って実家に行きました。

道具の一つ一つの使い道は誰もちゃんとはわかっていないけれど(←同じようなものでも微妙な違いで多数ある)、何か記録に残したいという気持ち。

母に許可を取り、小部屋を開けてランダムにピックアップしました。

触っちゃダメなんだと思いこんでいたこともあり、ちょっと恐れ多いというか、聖域に踏み入り、神聖なものに触れているような不思議な感覚もあって。でも触っても取り出しても怒る人はいない。

ああ、もう父はいないんだという静かな実感。

父の部屋で撮影しました。下に敷くものもその辺にあるもので、スタイリストの如く、母がこれはどう?などと持ってきてくれます。

ファインダーを覗いて見えてきたのは、装飾的な要素のない実用本位の道具に、使い込んでついた傷や凹み。

大小の鉋

ART TOWEL COLLECTION

何か形にしてみようと最初に思いついたのは地元の見本市の準備をしていた時のこと。撮った写真をもとに、マグや巾着、缶バッジをつくりました。

その後、外苑前のギャラリーダズルさんでタオル展の参加者を募っているのを見つけて応募しました。デザインを作成してデータを送ると、タオルにして展示してくれるというものです。

道具の写真をコラージュして、パターンを施し、さらにタグのようなデザインを加えてタオルデザインに仕上げました。展示まで仕上がりがわからず、ゴツゴツした道具をやわらかいタオルに印刷した時にどんなふうになるのか、ドキドキです。

それに他の出展者の皆さんと違って、明るくもかわいくもない題材。一つだけ浮いちゃうかも。

ギャラリーダズル(外苑前)

少し心配に思いながらも迎えた搬入日でしたが、不思議とタオルとマッチしていて自分としても大満足の仕上がり。ありがたいことに好評で、注文してくださった方もいらしたのでした。

自分で言うのもなんですけど、ちょっとブランドものぽいでしょう?首に巻いたりしても結構おしゃれなんです。

FATHER'S TOOLS

このグループ展がきっかけでその後芋づる式にいくつか展示のお誘いをいただきました。せっかくなのでとタオルに入れた「FATHER'S TOOLS」という文字をブランド扱いにして、いろんなアイテムをつくりました。

アクリルのチャームや枡。Tシャツやてぬぐい、風呂敷、コースターなど。見本市などのイベントでも販売しましたが、在庫もあるので、ネット販売もそのうちしてみようかなあと思いながら今に至ります(欲しい人いるかな)。

こんな経緯で、なんとなくでつくり始めたシリーズ。家具づくりの技術は受け継げなかったものの、私なりの方法でコラボをしているような表の感覚のほかに、子どもに返って親に隠れて禁じられたことをしているような裏の感覚もどこかにあります。

こんなことを書いていると、仲良し親子だったのかと思う人もいるかもしれないですね。でもそこは昭和の親子。一緒に出かけたりじっくり話したりということも特になく、ドラマみたいな特別な絆というのもなかったと思う。4人きょうだいだったせいか、親娘関係はわりと希薄。

ただ、手に職つけようと思ったのは父の影響大だし、働くようになってからは世界は違ってもなにかをつくる職業として(たぶん一方的な)仲間意識やリスペクトみたいなものは感じていたように思います。

一連のグッズを見て「お父さん喜んでるよね、きっと」と言ってくれる人もいるけれど、どうなんでしょう。父がもし何か言えたとして、喜んでくれるのか、それとも勝手にこんなことをしてとムッとして機嫌が悪くなるのか。それは永遠にわからない。

おっかなびっくりですけど、確かに意見を聞いてみたい気もします。

マグ2種類
アクリルチャーム(表)
裏側もデザイン
アクリルチャーム(表)
裏側には寸法の換算表を。
てぬぐい
サコッシュ
アクリルの枡

*アクリルグッズとサコッシュは駅周年グッズでご一緒させていただいた(株)エコーさんにつくっていただきました。
*グループ展で特にお世話になったのはテノヒラZAKKAさん。きめ細やかなフォローがやさしく、楽しく参加させていただきました。



普段はこの作品とは全然違う感じのグラフィックの仕事をしています。その他、商品開発のお手伝いもいたします。ご興味ある方はこちらからお問合せくださいね!


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