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オリジナル教材論


世界史講師のいとうびんです。

今回は教材、なかでもオリジナル教材について書いていきます。とくに授業案に苦労している初年度や教員志望者のみなさんに、読んでいただきたいです



1.オリジナル教材の光と影


まずはオリジナル教材の有用性から。

といってもベテラン講師の皆様にとっては言うまでもないですよね。そう、有用性なんざこれでもかとありまくりです!!!

なんといっても教材を完全オリジナルで作ると、教えやすさはピカイチです。この利点のためだけでも作る価値はあるといえます。

それだけではありません。オリジナル教材を作ることは、教科の内容により深く触れることになり、またこの点は歴史は特にそうですが、1回の完結授業だけでなく、前後の内容にも言及しやすいです。

つまり、背景や影響の説明がグンとしやすくなるということ。のちの出来事の伏線をしっかりと張りやすいのも魅力です。

そもそも塾や予備校では統一テキストがない、あるいはテキストの使用が自由にできるところが少なくはありません。むしろオリジナルテキストがあることを前提に話が進むなんてZARAです。講師のオリジナリティを出すのは授業だけではなくこのオリジナル教材にこそ、その真価があるといえるでしょう。

授業者=講師たるもの、何といっても重要なのは初回授業です。その重要性はまた別の機会にお話ししますが、初回授業でその場にいる生徒の信頼を勝ち得ねばなりません。「たった1回の授業でどうやって信頼を得ろってんだよ!」とツッコミたくなる気持ちはよーーーーーーーくわかります。が!そこで大きく授業者を助けてくれるのが教材です。

生徒が教材を一目見て、「あ、この先生なんか違うな(いい意味で)」という気持ちになれば6割は勝ったも同然!こちらのペースに誘導しやすくなるというものです。


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しかし一方で、オリジナル教材には思わぬ欠点もあります

有用性、すなわち利点についてはいわずもがな何となくでもわかっている方が多いとは思いますが、世の中そうそう都合よくはないもの。。。オリジナル教材であるがゆえの欠点も当然ながら出てきます。

主な欠点を順に見ていくと、

① 情報量がスカスカ

これはあきまへん。教科書の劣化バージョンのプリント類をまあまあ見かけますが、これでは正直作る意味はないです。特に情報量が絶対的に少ないのは致命的といえます。情報量に関しては多い方がいいです。しかし、多すぎると ↓ のようになってしまいます。

② 情報過多で見づらい

「さっきと矛盾しとるやんけ!」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。情報量は多いほど良いのですが、多すぎるのがよくないんです。バランスマジ大事。例えば、教科書で説明がハショられている箇所をうまく説明するために、あえて詳しく解説する、情報を多くするのはアリアリのアリのムハンマド=アリーです。

また、情報過多でもれなくよくない点は、教材が見づらくなってしまうことです。散らかったおもちゃ箱よろしくなプリントを見ることがありますが、大人ですら見づらいとなると、生徒はもっと見づらいはずです。

③ 教材に依存してしまう

これはあえて挙げれば、といった程度ですが、オリジナル教材があればどうとでも教えることはできますが、一方でないと授業者が何もできない、あるいは応用が利かなくなる恐れもあります。

とはいえ、これは教材を作りながら、授業者の授業スキルも上がっていきますので、そこまで欠点らしい欠点とは言い難いですけどね。



いずれにせよ、オリジナル教材を作るのであれば、こうした点に注意しなければなりません。作ったはいいもののただの自己満足に陥らないように



2.オリジナル教材の注意点とは??


さて、誰が何と言おうと便利なオリジナル教材ですが、上記の通り一歩やり方を間違えれば途端に残念極まりないものになります。

そこでここでは、作成に当たり何に気をつければいいかという注意点を述べていきます。


その注意点とは、

レ イ ア ウ ト

この一点に尽きます。

もっと言えば、「見やすさ」です。

もちろん中身もすごく重要ですが、いくら内容が良くても見てくれがあまりにも悪いとそもそも生徒が見てくれません

「俺は中身で勝負!」とかもわかるんですが、まずは第一印象から、ね

ってかモテないやつと同じで、「中身で勝負」とかただの自己満足だからな?? 相手のこと何も考えとらんだけやで

さて、変な本音が一瞬見えましたが、レイアウトが良ければたくさんの情報量があっても見づらくなることはありません。

というわけで、うだうだ説明ばかりしていてもイメージがつきませんので具体例を ↓

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レイアウトでポイントになるのが余白

余白をうまく使うことで一目見た時の見やすさが向上します。また、全部の情報をテキストにぶち込むのではなく、あえて板書などで図解したい箇所にも専用の余白(こちらはスペースという方が適しているでしょう)を設けることも重要です。

基準になり得るのが、大学のゼミで作ったレジュメ。きれいなレジュメのレイアウトは、そのままきれいな教材に転用できます。


3.いきなり全部を作らずとも


とはいえ、オリジナル教材は手間と時間が鬼のようにかかります。これはもはや疑いようのない事実。

急に手を出しづらいというその気持ち、よくわかります。

そこで初年度や志望者の方におすすめなのが、「テーマ史」のオリジナル教材。

世界史であれば東南アジアイスラーム中国の諸制度社会主義思想文化史など、普通に授業をしようとするとどうしても難しいところから手を出してみてはいかがでしょうか。

これらの単元は、ある程度独立しているので、前後関係をあまり気にしなくとも教材にしやすいという利点もあります。

文章にするのか、空欄補充にするのか、表にするのか、板書の補助とするのか……あーでもないこーでもないと試行錯誤を繰り返すうち、「これだ!」という授業にたどり着けるはずです。


それにこれは私の実体験ですが、だんだん教材の手入れが楽しくなってくるんです

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今回はここまで。

ご参照いただけましたら幸いです。








読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!