手を繋ぐっていいわね、と言われたある朝のできごと
ある晴れた朝、ビーチまで散歩とお茶と読書に出ました。いつも出かける時は斜めがけのポシェットに、Kindle、財布、iphone、ハンカチ、メガネ、を入れていきます。時々、充電したまま携帯不携帯のこともあります。
この日は右にかけても左にかけても肩が痛いので、Kindleとメガネをこっそりトラオさんのリュックサックに(勝手に)入れて、ハンカチとiphoneだけをポケットに入れてテブラーシカに決めました。トラオさんはリュックサックを上の方で背負うので、いつも大きな蝉が止まってるみたいだなとくすりとしてしまいます。
手を繋いでいることの利点
出かける時は自然にトラオさんと手を繋ぎます。ここに暮らしていると、手を繋いでない人の方が珍しいような気がします。とても自然なことなんですよね。
これは転倒防止(そそっかしいわたし)を少々兼ねていて、実際よくつまづいて、おっとっととなりますが、それ以上の被害は防げます。
気持ちよく鼻歌なんかも歌っちゃいます。自然と「真っ赤なお鼻のトナカイさん」からです。歌い始めるとトラオさんがちらっとみてきます。「季節間違ってるよ」と言う視線が10個くらい刺さります。そこで、ハッとして、次に出てくるのはサウンドオブミュージックの「My favorite things」です。大好きな曲だけど英語で歌えないから鼻歌になります。必ずこの2曲、ワンパターンなんです。
手を繋ぐことの利点は上の空でもいいこと。正直言って、5歳の女の子を連れて歩いているような感じになるでしょうね、トラオさんは。
見ず知らずの人との会話
イギリスにいると見ず知らずの人に声をかけられるということはあります。例えばある雨の日にカフェで隣に座った女性が、「このカッパ(合羽)今日2枚目で、これもびしょ濡れよ」と雨が染み通ったカッパをみせられたり(雨が染み通るカッパ持ってる人の多いことよ)「あと一枚持ってるの?」ときいたら、持っているといってました。
さてこの日は、ビーチ間際の信号で立ち止まった時に、右側の道から来た女性が声をかけてきました。こういう時は道を聞かれることが多いのですが、その方はこういったんです。
何度も言うようですが、この国ではそこら中に、手を繋いでいる人たちがいます。ですから、そういうことをいう人がいるなんて!とすごく不思議でくすぐったいような気分になりました。その後こう続けられました。
次の信号でまた一緒になった時に、トラオさんがその方にこう言ったんです。
だから私も負けずに言いました。
笑顔でその後別々の方向へ歩いていきましたが、そうして優しい声をかけられて、手を繋ぐ相手がいることの幸せを改めて感じました。私たちが特別幸せそうにしていたわけではなく、そのなんとなく当たり前に手を繋いで歩いているという光景に、その方はつい言葉が口から漏れた、という感じでした。
手からの温もりには効果があるようです
手からの温もりに効果があるというコノエミズさんのこの記事を、ご紹介させてください。とっても素敵なことが書いてあります。
コノエミズさんのエッセイはいつもしっかりとした読後感があります。おやつというより、素敵なランチを食べたような気持ちになるんですよね。是非是非読んでみてくださいね。
娘と手を繋ぐことはもうありません
小さな頃、娘と手を繋いでいたことがとっても幸せだったなと思います。今となってはもう繋がなくなりました。全力で断られます。そうよね、普通そうよね。子育てって大変だけど、小さな温もりがそこらじゅうに残っていて、はっきりと覚えていなくても、体のどこかにそれは漂っています。次に手を繋いでもらえるのは、私がもっと歳をとって、歩く足取りがおぼつかなくなってからでしょう。複雑な気持ちもありますが、それを楽しみにすることにしましょうか。
いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。