大学教員の出張:宿泊費
少し前に、大学教員の出張旅費について記事を書きました。
旅費についてはいろいろ思うことがあり、そのうち書こうかなと思っていましたが、先日、ヤフーニュースに国家公務員の出張旅費に関する記事が出ており、今こそ、我々、大学教員の切実な叫びを書かねば!という気持ちになりましたので、記事にしたいと思います。
現在の国家公務員の出張の宿泊費は定額の支給になっていますが、今後は上限を定めた上での実費支給になるそうです。
ヤフコメでは、これに関して、上限ギリギリのグレードの宿で贅沢するのではないかなどの批判は少なく、どちらかというと、現状、公務員の出張や転勤の費用に自腹が多いことに同情の声が寄せられています。
ヤフーニュースでは、国家公務員の話になっていますが、国立大の大学教員についても国家公務員時代の旅費に関する規程がそのまま運用されているため、待遇は国家公務員とほとんど同じです。
宿泊費は実費の支給ではなく、各大学で定められた一定の金額になっています。
それも職位(役員、教授、准教授、助教など)ごとに差が付いていたり、地域によって金額が変わったりしています。
東京大学の場合、以下のような金額になっています。
海外の宿泊料の、指定地域、甲地方、乙地方、丙地方というのは、各地域の物価に応じて支給額に差をつけるための決まりです。
先進国の中でも大都市を指定都市、先進国を甲地方、途上国を丙地方としています。
大学教員は、学会発表、調査、研究打ち合わせ、各種会議、高校訪問など出張が多いため、事務手続きの簡略化のために、宿泊料を実費とせず、上記のような定額支給で対応しています。
宿泊費はどこに泊まろうが定額の支払いなので、実際は安宿に泊まって差額を懐に入れているのではと批判があるようです。
それもできなくはないですが、出張に伴うさまざまな出費(共同研究者への手土産、ラボへのお土産、会食の費用など)で相殺どころか、マイナス収支になるので、出張は行けば行くほどお財布がさびしくなります。
そして、コロナ禍前はインバウンドの影響で東京、京都、札幌などの観光都市ではホテル代が高騰し、自腹を切らないためにはカプセルホテルまたは健康ランドの休憩室しか選択肢がなかったことがありました。
学会が観光地でハイシーズンにおこなわれようものなら、赤字覚悟です。
また、コロナ禍の中でやっと出張にいけるようになった頃は、比較的ホテル代が落ち着いていたのですが、GoToトラベルが始まり、値引きを前提とした高め設定のホテル価格が出るようになったときは辛かったです。
GoToトラベルや県民割のような国や自治体による旅行支援は、出張では使わないようにお達しが来たため、大学教員は高め設定の料金で泊まらざるをえませんでした。
お達しは以下の通り。一般旅行者のための割引なので、使わないでねとのことです。
次に、海外出張についてです。
こちらも行けば行くほどかなりのマイナス収支です。
特に途上国は悲惨です。
物価が低いからと宿泊費が低く抑えられていますが、地域によっては、この金額内の宿では治安や衛生面で問題があったりするため、規定よりも高額な宿に泊まるはめになります。
遊びに海外旅行に来ているわけでなく、現地調査や共同研究者との打ち合わせに来ているので、そのための高額な研究機材やパソコンを持ち込んでいます。
これらが盗まれたら一大事ですので、そのようなリスクの低い高めのホテルに泊まります。
アフリカの某国でフィールド調査をおこなう先生は、毎度の長期滞在によるマイナス収支に困り、一度、規定額内の安宿に滞在したら、ベッドに何かの虫が棲んでいたようで、一晩で全身に多数の発疹が出るという体験をし、その後はお金で衛生を買うとおっしゃっていました。
研究のためとはいえ、痛い出費です。
昨今の円安の影響も重なって、海外出張は行けば赤字確定です。
国家公務員の出張旅費のルールが変われば、自動的に国立大もそれに従うでしょう。
そして我々が気になるのは、「宿泊費の上限」です。
記事に「円安や物価高に伴う宿泊費などの高騰に対応する」とありますが、まさかの現行の規定額に近い金額でないことを祈ります。
できればハイシーズンでも自腹を切らなくて済むといいなと願ってます。
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