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人恋しい夜は冬のはじまり


肌寒い夜。表参道を散歩すれば、ORIGINAL LOVEの接吻が聴きたくなる。

3年前の11月、クラスメイトの作品撮りのお手伝いをした日のこと。表参道のレンタルスペースで撮影を終え、友達と3人で微妙に電飾をされた表参道を大荷物で歩く。接吻が恋しくなったので、歌ってみるとみんなも合わせてくれた。

冬特有の人恋しい空気をいっぱい吸い込み、エモエモちゃんだねえ〜〜とみんなでキャッキャした。


毎年ながそうな夏が一瞬で終わり、秋になる。秋の夜は冬をちらつかせてくる。

あれから季節は3回循環した。

今日は友達が働く表参道の美容院を目指す日だった。スタートは渋谷パルコ。

公園通りのはなまるうどんであったかいかけうどんを頂き、住所を打ち込んだマップを頼りにキャットストリートを跨ぎ、住宅街を進む。

ヘッドホンから接吻を流すと、今年もあの冬が来たことの確認ができた。冬の匂いが一層キツくなる。人目を気にしつつ歌ってしまう。恥ずかしいね。

表参道の住宅街、一体どんな人が住んでるんだろうと気が遠くなるものの、窓から漏れる家庭のひかりは地元のものとおんなじ。テレビの音や、肉じゃがの香りは来ないけれど。

家庭のひかりをみることはすきだ。知らない誰かのいきづかいを微かに感じることができるから。道沿いに建つ冷たそうな建物が、人の生を支え包み込む逞しくも優しいものとなるから。

そうこうしていると美容院に到着した。住宅街から2階にある店内は丸見えで、ポンチョをきた友人の髪を慣れた手つきで捌くもう1人の友人を下から見るのは可笑しかった。階段を登り2人と合流。彼女たちとは中学に入学して1番初めの班がおんなじだったことをきっかけに仲良くなった。みんなが天秤座だからか、関係はないか、波長があってゆったりとした時間を過ごすことができるのが好き。


帰る支度をし、外はすっかり寒くなっていた。もうこんな季節か〜と向かい風に体を縮めながら地下鉄へ乗り込んだ。

電車のシートに並んで座る。真ん中に座る友人の匂いがする。彼女はどんな匂いなの?といまいち不服そうだったが、3人で〇〇の匂いは〇〇の匂いなんだよ!となるべくひそひそ声でキャッキャした。

その匂いはお気に入りのペンケースとか授業中にせっせと回した交換ノート、雪解けの道路ですっ転んだ帰り道を思い出させる。憂鬱だった寒い体育館での集会も、大好きだった担任の先生も。



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