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Libya Updates #42: January 2021 Week 4


こんにちは🕊
1週間のリビアをめぐる動きを整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。10月以降は停戦へ向けた協議が進んでいるが、現地での戦闘は続いている状態だ。

■2020年のリビアまとめ

■先週のアップデート


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1. 和平交渉

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モロッコのブズニカで22日、リビアで対立するGNAとHoRの両勢力が5回目の国連主導の和平交渉 (LPDF) を開始した。
まずは各勢力13人ずつが政府の上層部を選出する方法についての話し合いを行うという。


UNSMILは前日の21日、行政当局の候補者選出へ向けた作業を開始したことを発表している。作業は22日から28日の1週間行われる予定。

選出方法は前回のLPDFでの合意に基づき、交渉に参加している3人のメンバーが一定の基準で立候補者を承認する仕組みだという。その後、国連リビア支援ミッション (UNSMIL) がトリポリとキレナイカ、フェッザーンの3地域の最終候補を確定する。


2. 妨げとなる動きも

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一方、不穏な動きもある。
CNNは22日、ロシアの民間軍事会社 (PMC) 、ワグナー・グループがリビアで少なくとも70キロにわたる塹壕を掘っていることを報じた。

塹壕は同国北中部にあるシルト付近から南のワグナー・グループの拠点であるアルジュフラに向かって作られている。
GNA勢力がハフタルの側に攻め込むのを防ぐために作られたものと見られており、途中には市街地も通っているという。

CNNの記事では、塹壕の地図や航空写真などが詳細に取り上げられています。

GNAとハフタル勢力側は昨年10月、「永続的」な停戦に合意するとともに、3ヶ月以内に外国の傭兵を含む全ての軍事勢力の撤退を行うことを決定している。だが、実際にはこれに反した動きが起きている格好だ。

CNNの取材によると、米国のインテリジェンス関係者は「トルコとロシアの勢力のいずれからも国連が仲介する合意を守る意思や動きが見られない。既に脆弱な和平プロセスや停戦の妨げになる可能性がある」と話す。「ここからの1年はとても難しいものになるだろう」

2019年4月にハフタル勢力による軍事侵攻が開始して以来、トルコはGNA、ロシアはハフタル勢力の後ろにつき、それぞれ軍事支援などを行なってきた。


ロシアはワグナー・グループを通して、800人から1,200人の傭兵をリビアへ派遣しているとされている。同国政府はリビアへの直接の関与を否定。ただ、ハフタル勢力を支援しているとの見方は専門家やメディアからも根強い。


3. 新型コロナウイルス

新型コロナの感染拡大状況

リビアでは28日 (現地時間) 時点で、累計116,064人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,940人。日に平均約700人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,802人で、1週間で87人の増加。


同国の感染者数は5月頃まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月。10月末をピークに新規感染者数は減少傾向にあるものの、依然として高止まりの状態が続いている。

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人口は約689万人。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。

4月から5月には医療従事者や医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いだ。


4. 移民・難民

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ミドル・イースト・アイは28日、リビアを経由して地中海を渡る移民・難民についての7分ほどの映像を公開した。

映像ではナイジェリア出身のジョン・ケレチさんの物語を中心に取り上げている。
ケレチさんは姉妹が性暴力の被害に遭い、友人が加害者に襲撃されたことで母国から避難を余儀なくされた。知人のつてを辿り、戦火のリビアへ移動した後、地中海を渡ることを決意した。

ケレチさん含む30人を乗せたボートは2019年3月24日、地中海を渡っている最中にエンジンが故障した。5日間、悪天候のなか地中海に取り残されたという。
途中、救助船と見られる船が近くを通行。ケレチさんらは助けを求めたものの、救助されることはなかった。次の日、目が覚めるとリビアへ連れ戻されており、収容施設へ送られたという。

本当に「黒人の命も大事」なのであれば、それは米国でだけ「大事」であるべきではないと思う。地中海中央にも広がるべきだ


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国際移住機関 (IOM) によると、2020年には985人が地中海を渡ろうとして命を落としている。

カダフィ体制の崩壊後の混乱で、サブサハラアフリカ諸国よりリビアを経由し、欧州を目指す移民・難民が急増。密輸業者の台頭も確認されている。
EUなどとの協力のもと、同国は移民・難民が地中海を渡るのを阻止しようとしてきた。
EUは地中海で移民・難民の救助を行うNGOに対する圧力をかけているほか、イタリア政府は職員の拘束も行なってきた。

リビアに留め置かれた移民・難民らの一部は、GNA政府や武装勢力により収容施設へと送られることもある。収容施設では生きるために必要なものへのアクセスも絶たれ、外へ助けを求めることもできない。難民・移民から金銭を巻き上げるために脅しをしているほか、リビア人が暴行や性暴力を行なっていることも分かっている。

EUなどがこうした現状を知りながらリビア当局との協力を続けているとして、国際NGOなどが批判を続けてきた。


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