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Libya Updates #44: February 2021 Week 2


こんにちは🕊
1週間のリビアを巡る動きを整理しました。

リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。10月以降は停戦へ向けた協議が進んでいるが、現地での戦闘は続いている状態だ。


■ 2020年のリビアまとめ

■ 先週のアップデート


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1. 暫定政府樹立へ合意

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リビアの対立する勢力は5日、暫定政府の樹立で合意した。
両者は10月に停戦に合意して以来、国連の仲介で和平交渉 (LDPF) を続けていた。

5回目となる今回の交渉は1月末からスイスのジュネーブで始まっており、70人ほどのメンバーが暫定邸に行政を担当する執⾏評議会 (Presidential Council)の4人を選出した。

投票の結果、評議会の議長にモハマド・メンフィ氏南部代表としてモッサ・アルコーニー氏西部代表としてアブドゥラ・フセイン・アルラフィ氏首相にアブドゥル・ハミド・ドゥベイバ氏が選ばれた。
4人は3月までに就任し、今年12月に予定されている選挙まで任務を務める予定。

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■ モハマド・メンフィ (議長)
2012年から2014年の国⺠議会 (General National Council; 以下 GNC) の議員経験者。シラージュ首相への支持を表明しており、2019年のハフタル勢力による軍事侵攻に反対している。軍を民政政府下のもとに置くことを強調している。
東部トブルク出身。

アルコーニー氏、アルラフィ氏に関しても、トルコのアナドル通信社による以上の記事を参照しています。


■ モッサ・アルコーニー (南部代表)

国内では少数派のトゥアレグ族の出身。カダフィ体制下で軍関連の役職についていたが、2011年に反体制派の弾圧のため、トゥアレグ族から傭兵を募るよう求められ辞任。体制崩壊後はGNCとHoRで議員を経験している。
2016年にはGNA側の執⾏評議会の副議長を務めたが、同政府のシラージュ首相が政府としての機能を果たしていないとして辞任している。

■ アブドゥラ・フセイン・アルラフィ (西部代表)
HoRの議員でありながら、ハフタル勢力の軍事侵攻に対して批判的な見方を示してきた。対立する政府に対して国の統一のための選択を行うよう呼びかけてきた人物。

■ アブドゥル・ハミド・ドゥベイバ (首相)
ビジネスマンから政治家へ転向した。カダフィ体制の時代に国有の開発投資会社で住宅整備などに携わっている。体制崩壊後は議員などの経験はないが、政治家とのつながりを持っていると言われている。


2. 今後の動きは

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国連リビア支援ミッションのステファニー・ウィリアムス特使は首相らが選ばれたことについて「国連の代表として、歴史的な瞬間を目撃することができて嬉しい」と評価。


EUや米国も国連仲介の和平交渉を今後もサポートしていく姿勢を見せている。


ただ、新たな暫定政府が抱える課題も大きい。
国内の分裂状態が長期化するなか、4人がどこまで国の統一の実現に向け歩みを進めることができるかは疑問だ。

リビア情勢に詳しいエマデッディン・バディ氏とウォルフラム・ラッチャー氏は「この交渉では、誰が統一した軍を指揮するのか、この数年の戦争における犯罪の責任を誰が取るのかなど、リビアの対立する勢力の間のあらゆる本質的な不合意を避けた」と説明する。
「4人には共通の政治的なビジョンがない」

ドゥベイバ氏らの起用自体、専門家や関係者にとって想定外のことであったという。バディ氏とラッチャー氏は、各勢力が対立する相手の敗北を目指した結果として、同氏らが選ばれたと見ている。

新首相となる人物がもともと、カダフィ体制の側で活躍していた人物であることについても懸念の声が上がっている。


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国内の問題も山積している。

■ 経済

経済の立て直しは喫緊の課題だ。経済状況が悪化するリビアでは、銀行へ行ってもお金を下ろすことができない事態などが続いてきた。人びとの生活も困窮している。

世界銀行によると、2019年のリビアの世界の若者の失業率は50%で、北アフリカ地域最悪だった。こうした状況も影響して、昨年は市民による抗議運動も起きている。

■ 停戦
停戦の実現を確実なものとする必要もある。
国連安保理は4日、グテーレス事務総長に対してリビアへ停戦監視団を送るよう要請を出している。

停戦に向けては、外国勢力の動きにも注視が必要だ。
GNA、ハフタル両勢力にはそれぞれトルコやロシアなどが軍事支援を行っており、国内には現在も多くの傭兵がいるとされている。
昨年10月の停戦合意では両勢力が外国勢力の撤退にも約束しているが、実現に向けた動きが十分に進んでいるとはいえない。

その他にも、カダフィ体制やその崩壊後に起きた人権侵害が不問に付されてきたことも問題となっている。
リビアでは現在、国内の司法は機能していない。国連人権委員会は2020年6月、同国への事実調査団の派遣を決定したが、資金不足により延期されている。


3. 新型コロナ

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リビアでは11日 (現地時間) 時点で、累計126,028人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,785人日に平均680人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,989人で、1週間で75人の増加。

同国の感染者数は5月頃まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月。10月末をピークに新規感染者数は減少傾向にあるものの、依然として高止まりの状態が続いている。

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人口は約689万人。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。

4月から5月には医療従事者や医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いだ。


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