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Sonita Alizadeh(ソニータ・アリザデ)

衝撃的な映画を観た。

6月20日の世界難民の日にあわせて開催された上映会に参加して、『ソニータ』という映画を観た。アフガニスタンからイランへ逃れた少女の3年間を追ったドキュメンタリー映画である。

アフガニスタンの少女を主人公にした映画は『カブールのツバメ』や『ブレッドウィナー』を観たことがある。しかし、これらはアニメであり、実写の、しかもドキュメンタリーは今回が初めてであった。

アフガニスタンに生まれ、イランの学校に通うソニータは音楽が大好きで、自分でも歌詞を書いては友人たちの前で披露している。彼女が歌うのはラップだ。その内容は、ソニータと同じ年頃、境遇の少女たちの内なる心の声を歌っている。

ソニータのような10代の少女たちが、お金のためによく知りもしない男性と結婚させられるという現実がある。本編でもソニータの友人の一人が30代と思われる男性と結婚することになったと話すシーンがある。彼女は「たぶん30以上だと思う」と語っており、顔はおろか年齢すら不確かのようだった。なぜこのようなことが起きるのか。それは、彼女の結婚は彼女自身の意志ではなく、親(特に父親)が生活費のために決めたことなのだ。

アフガニスタンではよくあることで、もちろんソニータにとっても他人事ではない。ソニータには兄弟姉妹がいるが、彼女の母親は「兄の結婚資金のためにソニータを嫁に出す」と言い出す。これにソニータは強く反発する。学校側も母親の説得を試みるが、法外な額の金銭の要求に応えるわけにもいかず、ソニータ自身で闘うしかなくなる。監督のロクサレが支援し、一時的に猶予を得たソニータは、ミュージックビデオを制作、彼女の音楽は世界に拡散された。

ソニータは本人の意志の強さもさることながら、運良く見出され、運良く自身の運命から逃れられた例外的な少女である。今もなお、紛争地帯で難民となり、少女たちは金銭のために花嫁として売られる。

「それが女性の人生だ。自分もそうだったから」という口ぶりで語るソニータの母親を観て、私は何とも言えない気持ちになった。「女の敵は女」というのは、お気楽な男性たちが女性間の対立を見せ物のように例えたくだらない戯言だと思っていたが、私はこの映画で心の底から「女の敵は女なのかもしれない」と思った。特に、自分もそうだったから同じように生きろと言う、社会を変える気など毛頭ない保守的な女は、現代を生きる私たち若者の敵なのかもしれない。

映画を観たあと、恥ずかしながら私はソニータについては何も知らなかったため、すぐさま検索した。本編で力強いラップを披露する彼女の姿は忘れ難い。今はどうしているだろうと思った。

そこで驚きの事実が発覚する。彼女はなんと私と同い年だった。

私が部活と勉強に明け暮れ、友達と笑って過ごしていたころ、彼女のクリエイティブな才能は頭角を現していた。現実と向き合い、理不尽な世界を変えようと、命懸けと言っても過言ではないような挑戦をしていたのだ。

現在の彼女はといえば、どうやら活動停止中らしい。出身地も顔も名前も明かし、命の危険に晒されていてもおかしくはないと思っていたが、どうやら生きていることに安堵した。私はラップには詳しくないが、いつしか活動を再開した暁には、ぜひ彼女のライブに足を運びたい。

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