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きょう心にしみた言葉・2023年1月4日

私がみなさんに伝えたいのは、言葉を持ち続けて欲しいということです。
人は、辛いとき、言葉を失います。言葉を重ねることで、さらに深く傷つくことから身を守るために。
しかし、言葉を失うと、自分という存在を見失ってしまいます。言葉によって、自分という存在が形作られているのですから。
人が言葉を取り戻し、自分の存在を回復するにはふたつのことが必要です。
ひとつは、信頼できる他者です。受け止めてくれる相手の存在があって初めて、言葉の意味が生まれるのです。
もうひとつは安心して言葉を交わすことのできる場所の確保です。言葉が批判されることなく受け止められ、外に漏れる心配のない場所です。

「癒しのメーリングリスト」(田村毅・著、講談社)

インターネットのメール交換で、辛い気持ちを吐露しあう取り組みをまとめたのが、この著書です。「癒しのメーリングリスト」と題されたこの取り組みは、1997年に始まり、2005年にこの本にまとめられました。まだ、スマートフォンが登場する前ですが、驚くほど的確に現在のネットのリスクと可能性を言い当てています。著者の精神科医、田村毅さんは当時、東京学芸大学助教授で、「ネット自殺」に関心が高まる現状に心を痛めてしました。田村さんはこうも書いています。「今まで、死にたい人同士が出会う場所は存在しなかったが、インターネット上にできてしまった。ただ、自殺サイトを禁じても、根本的な自殺抑止にはならない。むしろ、安心して死にたいほど苦しい気持ちを語れる場をネット上に作っていく必要がある。自分のことを理解する他者がこの世の中に存在することが、生きがいを創出し、本当の意味での自殺予防につながる」。本質を見抜いた指摘だと思います。

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