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「かくれてしまえばいいのです」、公開1ヶ月で200万アクセス超えが示す可能性

「生きるのがしんどい」と感じる人のためのWeb空間「かくれてしまえばいいのです」のアクセス数が、3月1日の公開から1ヶ月で200万を超えました。

何度か発信しているとおり、この数字は居場所を必要とする多くの人に届いていることを意味する一方、この社会の過酷な現実を映す数でもあります。

自殺対策強化月間である3月が明け、新年度の4月になっても多くの人が「かくれが」を訪れています。「かくれが」は、いつでもだれでも来訪をお待ちしています。「生きるのがしんどい」と感じたら、ぜひ「かくれが」にかくれにきてみてください。


子どもの自殺者数は過去最多ペース


2024年3月29日に公表された「令和5年中における自殺の状況」によれば、2023年の全体の自殺者数は2万1837人で、前年と比べ44人減少しています。

しかし20代以下においては、2023年の自殺者数は3331人と、前年の3281人より増えています。男女別に見ると、男性は減少した一方、女性は大きく増加しました。

厚生労働省自殺対策推進室「令和5年中における自殺の状況

小中高生に絞れば、2023年の自殺者数は513人であり、前年と比べ1人減少。内訳は、小学生13人(4人減)、中学生153人(10人増)、高校生347人(7人減)です。男女別では、男子生徒が34人減少した一方で、女子生徒は33人増加しました。

厚生労働省自殺対策推進室「令和5年中における自殺の状況」

それぞれのグラフからもわかるとおり、小中高生や20代の若者の自殺者数はこの数年、高止まりしている状況です。

このように、2024年のいま、子ども・若者の自殺問題はきわめて深刻な状況が続いています。当然ながら、自殺者数は「亡くなった一人ひとり」を数え合わせた人数のことです。20代以下の自殺者数3331人の先には、3331人それぞれの人生がありました。

自殺は、その多くが追い込まれた末の死です。たった2年間で1027人もの小中高生が、追い込まれた末、自ら命を絶ち亡くなっている――。そんな過酷な現実が、この社会にはあるのです。

大人たちには何ができるのか


こうした事態を受け、自殺対策(生きる支援)の一環として、これまでにないアプローチを用いてつくられたのが、「かくれてしまえばいいのです」です。

「かくれが」は、いま「死にたい」「消えたい」と思い悩んでいる子どもや若者への大人からの提案です。

「いまのつらさに耐えられない → この世から消えて楽になりたい → 死にたい」といった思考ではなく、「いまのつらさに耐えられない → この世から消えて楽になりたい → であれば、まずは一度、この世からかくれてしまいましょう」という提案をかたちにしたものです。

その提案は、ローンチ以降、多くの大人たちによって広がっていきました。

公開した3月の1ヶ月で200万アクセスを超えたのは、いろいろな立場の大人たちが力を合わせて、「かくれが」を同じ時代に生きる子どもや若者を支える場にしていこうする、一つの結果です。

SNS上の広がりやメディアの報道に加え、関連サイトへの掲出や学校などでのポスターの掲示など、いま様々な場所で「かくれが」の存在が広がっています。

「自殺対策」というと、特別な取り組みのように聞こえてしまうかもしれません。しかし、いざという時に使える制度や相談できる窓口、また「かくれが」の存在を知っておくこと、そしてそれを身近な人に伝えること。

そのことが、自分や身近な人、子ども・若者の身を守ることにもつながるかもしれません。

「かくれが」が持つ可能性


「かくれが」の存在は少しずつ、着実に広がっていますが、まだまだ必要とする人にを届けられていない、届いていないのではないか、とも考えています。

「かくれが」がつくられた背景には、これまでの自殺対策や既存の支援の枠組みでは、アウトリーチできない人が大勢いるという課題がありました。

ライフリンクが運営するSNS相談「生きづらびっと」にアクセスする人のうち、半数以上が子ども・若者です。

しかし、全体の相談数は毎月1万人前後と膨大な数にのぼっています。相談現場はパンク状態で体制強化を図っているものの、対応しきれない相談も多くあるのが現状です。

また、そもそも「相談すること」に拒否的な子ども・若者も少なくありません。子ども・若者の自殺問題がきわめて深刻な状況にあるなか、そうした人たちの受け皿となる場をつくること、従来の相談窓口とは別のアプローチを施行することは、社会としての喫緊の課題でした。

「かくれが」はそうした課題に向き合う、これまでにない自殺対策における新しいアプローチでもあります。

「公開から1ヶ月で200万アクセス超えたこと」によって示されたのは、その可能性です。同時に、「かくれが」をきっかけに自殺問題やその対策への社会的関心が高まることにも期待しています。

「かくれが」を「生きる支援」に


「かくれが」を運営するライフリンクでは、「誰も自殺に追い込まれることのない生き心地の良い社会」の実現をめざし、自殺対策(生きる支援)を社会全体で推し進めるための様々な事業や活動に取り組んでいます。

2024年1月に年頭所感として公開したnote「自殺問題・自殺対策、2024年の現在地」で、ライフリンク代表の清水康之は、2024年は「生きることの促進要因」をつくることに力を入れていく、と語りました。

自殺対策においては、自殺のリスク要因になる「生きることの阻害要因」を減らしながら、生きることを支える「生きることの促進要因」を増やしていくことが必要です。

「生きていこう」「生きていていいんだ」と思えるような機会や場、関係性を社会の中にいかに増やしていけるか。「かくれが」がその一つとして、多くの人にとっての「生きるための促進要因」になることを願っています。

ライフリンクでは、今後も「かくれが」が必要とする人に広く届くよう、情報を発信していきます。X(旧Twitter)Instagramでぜひフォローやスキをいただけたらと思います。

また、メディアの取材や出演も引き続き受け付けていますので、依頼の際は、kakurega●lifelink.or.jp(●を@に変えてください)までご連絡をいただけますと幸いです。

1年前の今月、2023年の4月だけで、直近5年間で最多の53人もの小中高生が自ら命を絶ちました。

子ども・若者は社会の未来であり、子ども・若者が多く自殺で亡くなっているということは、日本社会の未来が失われているとも言えます。

1年後に、この状況に少しでも変化が起きているよう、引き続き、一人でも多くの人に様々なかたちで自殺対策に参画をしてもらえたらと思っています。

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