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ACTにおける「価値」を掘り下げてみる

 ACTの勉強をはじめると、一つ掘り下げないといけない事に「自身の価値の明確化」があります。しかし、そもそも「価値」という言葉の意味するところにピンと来ない方もいるのではないでしょうか。私もそうです。深く考えすぎても混乱するし、かといってざっくり過ぎる理解だと、ふわふわした実践にしかならないし…と、中々厄介で奥の深い言葉だと思います。ACTには「ACTにおける価値とは」というそのものズバリな本がありますが、中身は割と重厚なのであまり人にお勧めする本ではありません。
 今回は、先ほどの書籍を参考にして、ACTにおける「価値」の捉え方について、いくつか自分の調べた範囲で分かったことを、かいつまんでお伝えしてみようと思います。書き出したらいくらでもポイントが挙げられるので、今回は特にACTを実践する上で必要な「価値を明確にする」作業の中で、重要だと感じるポイントを3点に絞ってお伝えしたいと思います。

①価値には「階層性」がある

自分の中にある価値をいくつかの階層に分けるという考え方があります。その中では、より自分の中で本来価値づけられた活動が中核として含まれていて、より低い階層は、その中核となる価値づけられた活動と接触できる機会をもたらす(より具体的な)活動になります。
(例)
中核的な価値:人に親切にする
低い階層の価値:パートナーを大切にする、両親の世話や介護をする、育児
        をする、ボランティアで人と関わる、ペットの犬の世話を
        する、対人援助の仕事に従事する、etc….

 例に挙げたように、中核的な価値はその人にとってより本質的かつ普遍的な「価値」が当てはまります。そして低い階層の価値は、「中核的な価値を目指すためのより具体的な手段」になります。よってその手段には沢山の選択肢がある場合が多いです。
 何が大事かと言うと、自分にとっての「中核的な価値」をまず見定めてから低い階層の価値を考えないと、単なる手段を自身の中核的な価値と捉えてしまうと、「本当に自分にとって価値のある行動ではない活動を優先してしまう」という結果になりかねない、という点です。
 例えば「お金を稼ぐ」事が自分にとっての価値だと考える人がいるとします。ですが、「お金を稼ぐ」という事は、価値あるいは活動として浮かべやすいものの、本質的で中核的な価値には当てはまりにくい場合が多いです。例えば「人から好かれたり称賛されたい」「社会的に成功したい」あるいは「自分や周囲の人間を大切に守りたい」事が中核的な価値にある人の場合でも、その手段としてお金を稼ぐ事を優先的な活動として選択する場合は往々にしてあると思います。そこを自覚してお金を稼ぐ活動に注力する分には大丈夫だと思いますが、ともすれば「お金を稼ぐ事が目的になってしまう」場合にはその価値は途中で崩壊する可能性があります。例えばお金を稼いでも自分の健康が崩れたり、お金を稼いでも友人や家族がいなくなったり、お金を稼いでも人から後ろ指をさされたりする、などです。その場合はいくらお金を稼いだとしても、その人にとって中核的な価値にかなう活動を行ったとはいえず、どこかで破綻するリスクが高まります。そのような事態を避けるために、自分にとって何が「中核的な価値」なのかを掘り下げる作業は、目指す方向を間違えないためにも極めて重要だと言えます。

②価値は「ゴール」ではない

 価値とは、あくまで生きていくための方向を指し示すコンパスの役割を果たすものであり、「〇〇を達成する」と具体的な到達点を定めるものではありません。例えば①で挙げた「人に親切にする」という価値には、本来明確なゴールは存在しないと思います。例えば「ボランティアで1000人もの人の支援をした」は、価値の方向としては達成しうる人もいるかもしれませんが、だからといってその人の「人に親切にする」という価値が終わるわけではありません。
 重要な事は、その人にとっての中核的な価値はその時点でのその人の「ゴール」がどこにあろうとも基本的には不変のものであるという事です。中核的な価値が「家族や自分を大切にしたい」人にとって、目指す方向はいくつもあります。そこで「生活の不安を無くすために1億円稼ぐ」という目標を仮に達成したとしても、そこが価値づけられた方向の終着地点ではなく、そもそも価値は決して完全に到達する事も達成することもできないものだという事を理解しておくことはやはり重要だと思います。

③価値はライフステージの変化でその「見え方」が変わる

 社会人として一定の経験を得たり、子供が生まれて育児に勤しむと、いつの間にか「仕事=自分の価値」「子育て=自分の価値」となっている方は割といると思います。自分もそうです。仕事あるいは育児に参加する事が自分の価値だと思っていました。厳密に言うと、それも大きな括りでは間違いではありません。しかし、そのような価値は生涯を通じて一致はしません。理由は明確で、仕事はいつか辞めるし、子育てもいつかは終わるものだからです。なので、その先のライフステージで価値が破綻するリスクを回避するためにも、「本当の価値は生涯を通して存在しうるかもしれないものだ」という認識をもってACTに取り組むことはとても重要だと思います。

(例)中核的価値が「成長する事」の場合
幼少期:年上の子供や親から学ぶ
思春期:興味のある分野を学ぶ
成人期:社会でより効果的な役割を担うために必要な情報やスキルを学ぶ
老年期:時間があるので、歴史や芸術といった興味のあるものを学ぶ

 どうでしょうか?このように自分の中核的価値をしっかりと見定めれば、ライフステージの変化に振り回されず、自分の価値の方向をブレずに進むことができます。

 以上となります。他にも色々とポイントはありますが、価値を見定める上で大事なことは、「階層性がある」「ゴールとは異なる」「ライフステージの変化に影響を受けにくいもの」であるという点です。ACTの実践には落とし穴が沢山あるので、可能であれば臨床心理士などの専門の方と共同で進めるのが望ましいと思います。
 私のnoteでは、心理療法を独学でやってみる方向けに取り組んでみた感想や気付いたポイントなどを記事にしていきたいと思いますので、興味のある方はまた読んで頂ければ幸いです。

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