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日曜洋画劇場

時代は昭和。
まだテレビの中に松田聖子はいなかった。
山口百恵がドラマ主役をはじめたころ。

私はたしか小学3年生だった。

父とふたりの田舎暮らし。貧しい家庭にいた。
幸い周りには祖母や親戚もいたので、都会の貧しさとは少し違った。

父は青果市場で働き、トラックで農家を回り野菜を集荷する仕事。
深夜の帰宅が多かった。

学校が休みの日曜日は、叔父の家に行き従兄弟たちと過ごしていた。
ご飯をいただき、テレビでゴレンジャーやバビル2世を観たり、
従兄弟は女の子2人だったので、祖母も交えてお手玉したり、従兄弟たちだけでママゴトや着せ替え人形で遊んだり、学校では男子とばかり遊んでいたので、友だちには知られたくないと思いながらも、その従兄弟(姉妹)たちと楽しく遊んでいた。

叔父夫妻は農家を営んでいたので曜日は関係なかった。
叔父は、早死にした祖父の後を継ぐ形で中学を出て農業一筋。彼は新聞をよく読んでいた。そしてテレビで海外の映画をよく観ていた。何を観ても面白かったもつまらなかったも、好きとも嫌いとも言わない。日本のドラマには関心がないようで、テレビでハリウッド映画が始まると畳に横たわりながら観ていた。

当時、テレビは一家に一台が普通だった。
日曜日、叔父の家で夕飯を食べながら叔母や従兄弟たちとサザエさんを観たり、家族紅白歌合戦を観たり、そして9時になると、それまでテレビは見ずに風呂に入ったり、新聞を読んだりしていた叔父が黙ってテレビに近寄りチャンネルを替える。

日曜洋画劇場が始まる時間だった。

そこで、従兄弟たちは茶の間から立ち上がり、部屋に戻って宿題したり、お風呂に入ったりしていた。
私は戻る部屋がないので、仕事を終わった父が迎えにくるまで、叔父といっしょに日曜洋画劇場を観るしかなかった。

アラン・ドロンの「ゾロ」、スティーブ・マックイーンの「タワーリング・インフェルノ」、クリント・イーストウッドの「ダーティーハリー」、チャールズ・ブロンソンの「(タイトル忘れ)」ほか、「シェーン」「猿の惑星」など多くの作品を無口な叔父と感想を語り合うこともなく、黙って観ながら父親の迎えを待っていた。

10歳にも満たなかった私は、最初その時間が退屈だったが、ある映画を観たことを機にその時間が好きになった。

その映画はアラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」
あれから半世紀近く経った今でも一番好きな映画。

不遇な青年が、富裕族の御曹司である友人をあやめ、偽装した人生を追い求めるストーリー。ラストカットは、子どもながらにも想像というものを初めて掻き立てられ、映画の面白さを知った。

後にマット・デイモン主演の「リプリー」も魅了したが、若きアラン・ドロンがラストで見せた表情は子ども心ながらに引き込まれた。

不遇を感じていた私。
どこかで重ね、そして、いけないことという道理も教えてくれた逸品でした。

そんな私の感銘映画ベスト10を
まとめてみました。(*は邦画)

10.フランティック
9.評決のとき
8.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
7.夜叉*
6.愛と哀しみのボレロ
5.汚れた英雄*
4.ニュー・シネマ・パラダイス
3.遥かなる山の呼び声*
2.ROCKYシリーズ
1.太陽がいっぱい
(どれもちょっと暗いですね)

#映画にまつわる思い出

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