椅子の中の世界、身に覚えはありませんか?『人間椅子/江戸川乱歩』考察【本紹介】
こんにちは 心陽菜紫です
今回は、江戸川乱歩の『人間椅子』という小説を読んだ感想と考察について書いていきたいと思います
(感想を含め個人の解釈です)
人間椅子/江戸川乱歩
あらすじ
なにかであらすじを目にしてから、ずっと読んでみたいとエア積読していた作品( ´∀` )
本屋さんで探したのですが、短編のためか表題となっているものは見つかりませんでした
ないはずがない!とぐるぐる探していると、やっと『鏡地獄』が表題作の短編集のなかに収録されていることに気づきました
感想・考察
(ネタばれあります。ネタバレされてもかまわないよ、という方のみ読み進めてください。)
男が椅子の中に入るという内容をあらかじめ知っていいたため、楽しめるだろうか、と心配していたが、みごとな作品だった。
冒頭で椅子の存在を読者に意識させないテクニックが凄く効いている。私が普段読んでいるような、現代のザ・ミステリのような小説だと、いわゆる伏線を張っておいて、後半に「実は○○でした」と回収する。例として本作品をそのような作りにしてみると、冒頭で「彼女は彼女を包み込むような形の立派な椅子に座った。」とか、「最近部屋に運ばれたこの椅子は、彼女のお気に入りになっていた。」などの一文を入れるのではないか。しかし、連保は「彼女は書斎の机の前に坐ると、仕事に~」というだけで”椅子”という単語さえ出していない。はじめから読者にトリックを感づかれることなく、原稿を読み進めていくうちに背筋を冷たくさせることに成功している。
物語の落ちは、考察の余地が十分に認められると考える。私が「こういう意味じゃないかな」と考える結末は、正気に戻った男が、あわてて2通目の手紙を出して取り繕った、というものである。椅子の中に入り込んでいる時は自分だけの世界で、「自分は特別だ、自分の思い考えることは凡人にはわからない素晴らしいことだ」と思っているが、原稿を出しに外へ出てみると以前のように、自分に対する過剰な劣等感が戻ってきて、恥ずかしくなり、弁解の手紙を出したのではないか。
自分しか見えていないときは、気が大きくなるが、ふと、周りの人の視線(本当はそんなに見られていなくても)を感じたり、世界の広さを感じたりして、赤面するといった経験に覚えがあるのは私だけではないはずだ。
以上、『人間椅子』の感想と考察でした!
最後まで読んでくださりありがとうございました
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