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AIにとってはどこまでが「人間」?『未来からの脱出/小林泰三』考察【本紹介】

こんにちは 心陽菜紫です

やっぱり考察するならSFでしょ!
ということで今回は私が一番好きなSF作家、小林泰三先生の小説を紹介していきます

SFの考察って発見が多くて大好きなんですよね~

小林泰三さんの『未来からの脱出』という小説を読んだ感想と考察について書いていきたいと思います
(感想を含め個人の解釈です)


未来からの脱出/小林泰三

あらすじ

鬱蒼とした森に覆われた謎の施設で何不自由ない生活を送っていたサブロウ。ある日彼は、自分が何者であるかの記憶すらないことに気づく。監獄のような施設からの脱出は事実上不可能、奇妙な職員は対話もできずロボットのようだ。サブロウは情報収集担当のエリザ、戦略家のドック、メカ担当のミッチと脱走計画を立ち上げる。命懸けの逃亡劇の末に彼が直面する驚愕の真実とは?鬼才・小林泰三が描くスリル満点の脱獄SFミステリ。

文庫本表紙裏より

この小説をおすすめする理由は本格SFなのに読みやすいからです!

小林泰三さんはいい意味で振れ幅が大きい作家さんだと個人的には思っていて、、

『アリス殺し』や『玩具修理者』のようなホラー作品はグロの描写がなまなましくて挫折した読書家さんもいるかもしれません。

また、『酔歩する男』のようながちがちのSF小説は一読では難しくて頭がこんがらがっちゃうかもしれません。(私はこの短編がいっちばん好きなのですが、、)

でも!この小説はちゃんと小林ワールドが感じられますが、登場人物の会話がテンポよくてすらすら読めると思います。

皆で小林泰三先生に沼落ちしましょう!!!
ぜひ読んでみてください。

感想・考察

ネタばれあります。ネタバレされてもかまわないよ、という方のみ読み進めてください。)





逃げ出したい過去の記憶

とは言うが、未来についてそういった言い回しはない、

では、「未来からの脱出」の「未来」とは何を指しているのだろうか。時間軸として未来から脱出することは不可能ではないのか。

大好きな作者の本であるが、手に取った際は???ばかりだった。しかし、読み始めて「未来」とはロボットが「人間」の手から離れ、しかしロボット工学三原則に縛られている未来だと分かる。いわゆるディストピアが描かれている。

ユートピアとは何だろうか
ある人は遺伝子操作によって人間をデザインできることがユートピアな未来だと考えたのかもしれない。ただ、それにより「人間」の定義が画一しなくなり、「人間」を攻撃するAIが出てくる。

ChatGPTや警備ロボットなど、「AI」にセンシティブな現代だからこそ広まってほしい小説であると感じた。ロボット工学三原則はSF界で広まったフィクションであるし、このお話も小林泰三先生が作り出したものであるが、哲学的なテーマでは現代に通じるものがあるのではないか。


小林泰三先生らしく、かなり理系なトリックで、本格SFではあるが、キャラクター達の会話がユーモアに富んでいて読みやすかった。その緩急の差がページをめくる手をうまい具合に加速させている。


遺作か…。
私が小林泰三先生の作品に出合ったのが亡くなられた直後だったから好きになればなるほど切なくなったなあ。

「あの世」で「この世」のゲームを楽しんでいてほしい。


以上、『未来からの脱出』の感想と考察でした!
最後まで読んでくださりありがとうございました
この小説を既読の方は感想や考察などをコメントしていただけると主が喜びます!
また気が向いたら読みに来てください('ω')ノ

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