見出し画像

男の勲章を初めて味わった日

もともとコンプレックスの塊の僕は自分から何かをするのが苦手だった。

「できないんじゃないか」が先にきてしまい

手も足もでなくなるのが今までの僕。


高校では、1番前の席でいつも前だけを向いていた。

しかし、高校は見たこともない変わった奴も多くて

むしろ僕は普通の人。


となりの奴がやたらと喋りかけてきて仲良くなった。

クラスで行動的な奴と一緒にいると僕もなぜだか行動的になってしまう。

僕は、中学に比べると自分でも驚くくらいお喋りになっていってた。


自転車でどこへも出かけて行動範囲も広がった。


ある日、自転車を二人乗りして僕が後ろで奴が前だ。

「おさる、お前に未知の世界を見せてやるから後ろ向きに座れよ」

「何、未知の世界って?」

「いいから、いいから」

僕は、それに従った。


すると奴は突然ジグザグ走行を始めた。

「えぇーーーーーー」

「ほぉ~ら、凄いだろぉ!!」

確かにスリル満点で最初は少し怖かったけどめちゃくちゃ面白い。


しかし、そんなスリルで面白いことは続かない。

あっけなく溝に落ちてしまった。

その拍子に僕は顔面から急転直下。


「いってぇ~お前ぇ~」

「おさる、血が出てるって」

僕の顔面は見事に血だらけだった。

道行く人が振り返る。

最悪だ。


家に着くとタローは普段と番う雰囲気に躊躇していた。


もちろん、お母さんも驚いていたが、これも男の勲章だ。


しかし、次の日は学校での僕のあだ名は

おさるからフランケンシュタインとなりみんなに恐れられた。

特に女子からは誰も喋りかけてこなくなるほど顔は腫れ上がり傷だらけだった。

前だけを向いて座っていた僕に

「おさる、ごめんな」と笑顔で奴は僕の横に座った。

「別に」

これが親友というものなのか?

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?