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家族との距離

タローを連れてあてもなく彷徨っていたけど

やはり僕は途中から怖くなってきた。


もう何時だろう・・・


放り出されたものの偉そうに出ていったしまった僕は何気に親が探しにくるのを期待していた。


何度も立ち止まって後ろを振り返るけど誰もいない。

僕が立ち止まるたびにタローも立ち止まって僕を見つめる。


最初は速足だった僕の歩幅はみるみる小人のような幅になって行った。

10歩くらい進んで振り返る。


親が探しに来たら

「帰るつもりはない!!」

ビシッといってやるつもりでいたのに・・・


今は、どうやって帰ろうかと考えていた。

情けない。


どうしよう・・・


タローだけ帰すか?

そしたら、さすがに親も心配して探しに来るんじゃないか。


チラッとタローを見た。

タローは何食わぬ顔で顔を搔いていた。


「タローお前は家に帰れ」

そう言って紐を離した。

しかし、タローは動かない。

「行けって!!ほら」

タローの体を押した。


タローは吠えもせず力を入れて踏ん張っていた。


僕は、動かないタローを見て安心したのかもしれない。


泣いていた。

もう、高校生なのにだ。

親は僕を見捨てたのか?


多分、見透かされていたのかもしれない・・

あいつは弱虫だから必ず戻ってくるって。


僕はタローと家に向かって歩いていた。

つづく

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