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春のような温かさ月もある学校に…君が磨いているものの美しさを、君自身はわかっているだろうか 〜心の宝物162

🌷下級生に示したもの


山に囲まれた小さな学校
掃除場所のローテーションが巡り、6年生の彼が、児童玄関掃除に戻ってきました。
それまでの、水を撒いてブラシをかけて何となく終わる方法から、フロアと同様に、掃き掃除と拭き掃除で隅々まで行う方法に、玄関掃除の質を変えた先駆者の一人でした。

少人数の学校のこと、玄関掃除は彼と1年生の二人きりでした。
「土間の水拭きは強制しないでおこう」と伝えてあったので、彼が1年生に押し付けることはありませんでしたが、ほうきで掃いた後でもなお、細かな砂粒でいっぱいのタイルの床を、当たり前のように水拭きする彼の姿を、1年生もすぐに真似始めました。
「きれいだね。私はここで寝られるよ」
そう声をかけてごろりと横になる私を、得意そうに見る1年生と、そんな彼を優しい目で見る彼の姿に心が温まりました。

🌷君が磨いているものの美しさを、君自身はわかっているだろうか


1年生が後を追おうと決意するのに何の不思議も感じないほど、彼が床を磨く姿は力強く、美しいものでした。
ほうきを終えて、一見きれいに見える床ですが、小さな砂粒やほこりが膝に食い込みます。気にならないはずはないですが、そんな素振りも見せず、迷いなく拭いていきます。眼鏡の奥の優しい目が、そのときはきらりと光って見えるほどの集中力です。

「人が、何を踏んだかもわからない土足で通る床に膝をついて、雑巾で拭くことは嫌ではないですか」
 意地悪くそう尋ねてみました。

「そういえば、はじめはそう思ったけれど、今は何とも思いませんね。あたりまえだと思っています」
強く言い切った彼の表情は、出会った4月の頃よりもはるかに強く、そうして優しく見えました。

人が土足で通る場所を、自らの手で拭き清めることを当たり前と言い切る。君のような6年生が、日本中探したってどれほどいるだろう。
そのことにおそらく、君自身は気づいてはいるまい。
君が磨いたのは、床でなく、君自身の心。言い古された言い方だけれど、君が選び取った行動が、君の内に、決してなくならない豊かなものを培ったことは紛れもない事実だ。
君はそれを誇っていいんだよ。
私は、君を誇りに思う。

そんな思いで、お伝えしました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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