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春のような温かさがいつもある学校に… 明日の朝の、この子の心がどれほど救われただろう 〜心の宝物122

🌷欠席した子の机の上が…


コロナ機の学校
5年生の教室では帰りの会が始まっていました。後方の入り口から見渡す子供たちの背中は柔らかく伸びており、リラックスしながらそれぞれの方法で、司会者や発言者に思いを向けていることが伝わりました。

私の目の前、廊下側最後列の席がぽつんと空いていました。

この年の、この時期は、感染防止が社会の大きな命題であり、学校では、同居家族の体調不良すら、児童に自宅待機をお願いする要件になっていました。職員室の欠席連絡のホワイトボードには、毎日かなりの人数が書き出されていました。

どこかのタイミングで配布されたのでしょう。その子の机の上には、返却されたテストや、連絡のプリント類が、10枚ほども置いてありました。前から回されたものと、傍らから配られたものが混在したようで、ばらばらと、やや乱雑な状態でした。

🌷明日の朝の、この子の心がどれほど救われただろう


「これは整えてあげたいな…」
私が手を伸ばそうとするよりも一瞬速く、一列隣の彼が立ち上がり、机上のプリントを手早く整えてくれました。大きさのちがうプリントの端を合わせてとんとんとそろえ、机の上に丁寧に置き直します。

「ありがとう。あなたに先を越されましたね」
かけようとした声を飲み込みました。
彼が自席に戻らなかったからです。

彼は、ロッカーに行きました。そうして、欠席している子の棚からプリント整理用のクリアファイルを取り出し、その子の机上のプリント類を丁寧にはさみこみ、再度ロッカーに収めた後、何事もなかったかのように自分の席につきました。

「ありがとう。君のおかげで、明日の朝の、この子の心がどれほど救われたでしょう」

ようやく声をかけることができました。彼は一瞬戸惑ったような表情を浮かべましたが、すぐに思うところが伝わったようで
「ありがとうございます」
さわやかな笑顔で返してくれました。
「たとえ欠席していても、そこにその子がいるかのように」

こういう感覚を、担任のときは学級全体で共有したいと願ってきました。管理職になってからは、学校全体で共有したいと願ってきました。
配布物が乱雑に置かれたままになっている、グループの形にしたときに、その子の机だけが前を向いている、長期にわたって欠席している子の机上がいつの間にか、物の置き場所のようになっている。
そういう状況に、心の痛みと共に気づく視野の広さと感性、自分にできることを探し、実行する勇気と行動力。そういうものをどれほど共有できるかで、学級の、学校の温かさは大きく変わると信じています。

小さなことと思うかもしれないけれど、あなたが示してくれた行動には、今後の数十年間、私たちが、地球規模で大切にしなければならないことが全て詰まっていると思います。そこにいない人にも、そこにいるのと同じように思いを向けたあなたの行動は、決して小さなことでなく、「誰一人取り残さない」と決意して歩むたくましい生き方そのものです。

一日の何気ない一コマにも、自分や自分の大切な人の幸せを支える力を鍛えるチャンスがある。あなたのおかげで、改めて全員が学ぶことができたよ。ありがとう。

そんな思いで、お伝えしました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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