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春のような温かさがいつもある学校に… 仲間の命から 絶対に目を切らない 〜心の宝物185

🌷集団登校の引率


コロナ機の学校
夏休みが明けたある朝、いつものように校門で子どもたちを出迎えていました。今日は正門。西門と一日おきのルーティンでしたが、さすがにその時期には、劣化した私の記憶にも、登校班の構成メンバーは大方頭に入っていました。欠席者がいる班には何となく違和を感じたものでした。

この日はその班に目が行きました。いつもは最後列にいる、6年生の彼女が先頭で引率しています。聞けば班長は、同居のご家族の体調不良で、今日は登校をひかえたとのこと。今ではずいぶん遠くに思われるルールですが、その頃、市内でも、児童生徒の感染が報告されるようになり、いよいよ緊張感が高まっていました。

熱中症予防のため、炎天の外ではマスクを外すことを推奨していました。その分、登下校は、感染リスクの高い場面とされ「おしゃべりを控えて」「密集を避けて一列で」などと、ずいぶん無理のあるめあてを、意識に落とし込めるよう、先生方は懸命に指導してくださっていました。

そんな意識の表れか、急な坂を登ってくる彼女の表情は真剣そのものでした。

🌷仲間の命から 絶対に目を切らない


彼女は、先頭で坂を登りながら、度々後を振り返り、下級生たちの様子を見届けていました。まだまだ残暑厳しい中、体調の悪い子はいないか、気持ちのタガが外れておしゃべりしている子はいないか、決しておざなりでなく、真摯に、誠実に見守ろうとしていることが伝わりました。その姿は、仲間の命が守られているかどうかという瀬戸際から、決して目を切るまいとする強い決意に満ちていました。

別の日の「命を守る訓練」、一般には避難訓練、の彼女の姿からも、同じ思いが伝わりました。地震による火災を想定した訓練は、先生方の丁寧な事前指導もあり、整然と行われました。日頃は賑やかでお調子者の上級生が、思いつめたように真剣に集合場所に向かってきます。

訓練だとわかっているのに、こんなに暑いのに、どうしてここまで真剣にできるのだろう。どうしてそんな自分を選び取れるのだろう。

「本部」と大書した旗を掲げた教頭先生の横で、子供達を迎えながら、言いようもなく胸が熱くなりました。

集合完了し、消防署の方のご指導など、全てのメニューの最後が私の話でした。
子供たちの姿と、それを支えた思いへの感動を伝えようと、グラウンドに座している子どもたちを見渡しました。

体操座りをした子供たちを、容赦なく残暑の太陽が照り付けます。さすがに、どの子の顔にも疲労の色が浮かんでいますが、それでも私に注目しようとしています。それにまた胸が熱くなりましたが、長話にならないよう自戒しつつ話し始めた私の眼を射るような強い視線を感じました。

彼女でした。ピンと伸ばした背筋は微動だにせず、真剣な、温かい目で話し手である私を見つめています。たちまち胸が熱くなりました。言葉が途切れそうになるのを必死でこらえました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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