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春のような温かさがいつもある学校に…人が気づかないもの、気づいても見ようとしないものを見逃さない〜心の宝物52

🌷黙々と ひたすらに


コロナ機の学校
掃除場所の交代があり、6年生の手洗い場の掃除は彼女になりました。多くを語る人ではありませんが、何事もまず自分で考え、心の内にしっかりとした芯をつくることのできる人。  
時間いっぱい黙々と、ひたすらに。雑念を払い、今はこれをするのだと、決意したら貫徹する。遠目にも、取り組む姿からそんな思いが伝わります。
猛暑の中で、そういう自分を選択できることに、一言敬意を伝えようと思いつつ、彼女のいる方向へ歩みを進めていきました。

🌷ありがとう。でも、そこまでしなくてもいいですよ


そこについたときには、手洗い場の掃除はほとんど終わっていました。シンクはもちろん、蛇口も、鏡もピカピカになっています。それでも懸命に何かを磨いている手元を見て驚きました。

彼女は、その蓋ごと排水溝の構造物を取り出し、歯ブラシで懸命に磨いているのでした。
もうどれだけ手が入っていないかわからないほど、ヘドロで真っ黒です。私も含めて、ほとんどの人が触れることさえ怯むようなそれを、彼女は懸命に磨いています。

手袋とマスクをしているとはいえ、時節柄、危険な作業です。そこは学校としての施設管理の範疇で、子供たちに清めてもらうのは違うと判断しました。
「ありがとう。でも、そこまでしなくてもいいですよ」

彼女はちらっと目を上げましたが、ペースを変えず作業を続けます。
「ありがとうございます。でも、そんな風に言ってもらわなくてもいいですよ」
「自分が気づいて、すると決めたことですよ」

そんな心の声が聞こえるようでした。

ピカピカにし、元に戻すまでそこにいて、心から敬意を伝えました。

🌷人が気づかないもの、気づいても見ようとしないものを見逃さない


 今の世の中は、人と人とのつながりが弱くなっているといわれます。人にはそれぞれ事情がある。親切が、かえってトラブルになることもあるから、必要以上に関わろうとしないことも大切。そんな空気が少しずつ広がっているような気がします。
そっとしておいてあげたほうがいいときも確かにあるでしょう。しかし、その空気の中で、いつの間にか、人の気持ちや身の回りの状況に気づく力が弱くなったり、気づいても「見て見ないふり」をする態度が身に付いてしまったりする。そんな自分になることを、私は恐れます。

恥ずかしいですが、私は、彼女が清めてくれた排水溝の汚れに心が届きませんでした。もし気づいていたら、見て見ないふりをすることなく、彼女のように、迷いなくそれを手に取り、きれいにするという行動を選び取ることができたでしょうか。

それはできたと思いたい。そうでなければ、みなさんに何かを言う資格はありません。

あなたのおかげで、これからも、そういう選択ができる自分でありたいと、改めて決意することができました。ありがとう。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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