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【作品#32(番外編)】『小説「怒り」と映画「怒り」』/『怒り』より

こんにちは、三太です。

今週はハロウィンがありました。
自分が子どもの頃はこんなにハロウィンは盛り上がっていませんでした。
けれども、今では我が家はハロウィンのパーティーをし、学校はハロウィンにちなんで様々な催しが行われます。
楽しく過ごせればそれはそれでよいのですが、若干この盛り上がりについていけていない自分もいます。

では、今回は『怒り』の番外編ということで、『小説「怒り」と映画「怒り」』を読んでいきます。

初出年は2016年(7月)です。

中央公論新社の『小説「怒り」と映画「怒り」』で読みました。


要約

本書は以下の内容で構成されています。
・『怒り』のエピソード0(=山神一也の成育歴に関する証言記録)
・千葉、東京、沖縄の映画撮影現場を訪れて吉田修一さんが書いたエッセイ
・李相日監督インタビュー
・2016年までに刊行された吉田修一全作品解説
・映画『怒り』で藤田優馬役を演じた妻夫木聡さんと吉田修一さんの対談

本書を読むことで『怒り』についてより理解が深まります。
そういった意味でも今回、閑話休題ではなく、作品の番外編ということにさせていただきました。

感想

映画を撮るにあたって、俳優が行う役作りへの情熱が凄まじいなと感じました。
例えば、ゲイの役を演じる必要があった、妻夫木聡さんと綾野剛さんは撮影前から一緒に暮らして、毎日同じベッドで寝て、一緒にお風呂に入って・・・ということをしていたみたいです。(p.56)
他にも無人島の廃墟に暮らす田中という役を演じた森山未來さんは実際に自分でその島で野宿をしていたようです。(p.66)
俳優ってそこまでするんだとその本気度に正直かなり驚きました。
逆に言うと、やれることは何でもやっておきたいと思うほどのプレッシャーもあるのかもしれません。
その気持ちなら少し分かるような気もします。

また李監督へのインタビューから監督が小説を映画化するときに行なった工夫もよく分かりました。
私も映画を見た時にかなり取捨選択はされているなと感じていましたが、主題を浮き上がらせるために、できるだけ余計な部分はカットしたようです。
そこは小説と映画の大きな違いでもあります。
そういった意味では、小説と映画はまた別の作品とも言えそうです。

監督が沖縄であるシーンを撮る時に悩んでいて、さきほど書いた森山未來さんの野宿に、辰哉役を演じた佐久本宝さんと一緒に合流したというエピソードが語られます。
そのときに三人で話しながら、次の日の朝に天啓がひらめき、あるシーンを思い付いたというのが素敵でした。
理屈だけでなく、それこそ体当たりで映画って撮るんだなということが伝わってきます。

『怒り』からは少し離れますが、全作品解説も良かったです。
自分にとっては復習をしているような気分で読めました。
『羅生門』、『こころ』、『源氏物語』など他作品とのつながりを指摘しつつ述べる部分もありとても興味深かったです。 

その他

妻夫木聡さんが対談で語った役作りをするときに見た映画がとても興味深いです。
今回は李監督ら、みんなで映画「ブエノスアイレス」を見て、ゲイについて考えたようです。
また映画「悪人」で祐一を演じたときには、李監督と二人で映画「ブロークバック・マウンテン」を見たようです。
この祐一の話を聞いたときに、吉田修一さんが祐一と優馬とヒース・レジャーが演じたイニスは同じ系列の人間だということをおっしゃっていました。(p.194)
そこまで言われると見てみたくなりますね。
ということで、次回からはこの2つの映画を順に見ていきます。

以上で、『小説「怒り」と映画「怒り」』の紹介は終わります。
『怒り』についてより理解が深まった読書でした。

では、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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