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【映画#97】「ブロークバック・マウンテン」『小説「怒り」と映画「怒り」』より

こんにちは、三太です。

先週ぐらいから中学1年生の授業で竹取物語を学習してきました。
はじめに冒頭を、そしてかぐや姫に求婚をした五人の貴公子の話を学んだあと、単元の終わり、六人目の貴公子を創作しようという課題を行いました。
生徒たちは貴公子とその貴公子に与えられた難題、そして結末についてそれぞれ工夫をこらして考えてくれました。
与えられた条件だけ満たして書けばいいや、ではなくこだわって書いてくれたのが嬉しかったです。
 
では、今日も前回に引き続き、『小説「怒り」と映画「怒り」』に出てきた映画「ブロークバック・マウンテン」を見ていきます。
『小説「怒り」と映画「怒り」』の記事でも書いていたように、妻夫木聡さんが映画「悪人」の祐一を演じる上で李監督とともに見た映画です。


基本情報

監督:アン・リー
出演者:イニス(ヒース・レジャー)
    ジャック(ジェイク・ギレンホール)
    アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)
    ラリーン(アン・ハサウェイ)
上映時間:2時間13分
公開:2005年

あらすじ

1963年のワイオミング州、シグナル。
羊の番のためブロークバック・マウンテンという山で一夏を過ごしたイニスとジャック
はじめはほとんど会話のなかった二人ですが、様々な苦難を乗り越える中で、距離が縮まります。
そして、二人はそこで友達以上の関係になりました。
山から下りてきて、二人は一度別れます。
イニスはアルマという女性と結婚し、ジャックもロデオボーイをする中で、ラリーンという女性と出会って結婚します。
イニスには娘が二人、ジャックには息子が一人生まれ、幸せな家庭生活を送るのですが、二人はそれぞれを忘れることができません。
4年ぶりに再会したあと、家族を半ばほったらかしにして、山で二人の時間を過ごすときが増えます。
そんな生活をしているので、イニスは妻に愛想をつかされ、離婚。
ジャックは離婚とまではいかないのですが、ある悲劇がジャックの身に降りかかります。
そのときにイニスはどのような行動に出るのか。
性愛にとどまらない、人間的な愛、結びつきが描かれた映画です。

設定

・男同士の人間的愛
・不器用な生き方
・普通からのずれ

感想

内容が濃く、心に残る映画でした。
イニスとジャックは男性同士のカップルなのですが、性愛という感じがあまりせず、本当に人間的なつながりを感じました。
とにかくイニスは不器用な男で、ジャックと会わずに、アルマと暮らしていれば、おそらく普通に生活できるのにそれができません。
そうしたらいいと自分でも分かっているのに。
ただ、イニスのこれまで育ってきた環境もあるのか、いわゆる「普通」から外れていきます。
そういう意味ではエンディングは一つイニスにとっては救いになっているのかなと思いました。
不器用な男イニスに幸せになってほしいです。

この映画はブロークバック・マウンテンの雄大な景色と哀愁を誘うBGMがとても印象的です。
けっこうえげつないことも描かれるのですが、それらが全てを包み込むようです。
一点、少し展開がはやすぎるのは気になりました。
例えば、あまり説明もなしに一気に時間がすぎたり、ジャックとラリーンには出会ってすぐに子どもが生まれたりします。
ただ、それらを差し引いてもとても見応えがある映画には変わりありません。

冬に入る山不器用な男達

その他

・コロナ禍で行われていましたが、当時も映画を車から見るということはあったようです。
イニスとアルマがデートに行く中でそういうシーンがありました。

・時代状況としてはゲイへの理解のなさがあったのかなと思います。

・ウィキペディアより
→2005年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。ゴールデングローブ賞では、作品賞(ドラマ部門)、監督賞、脚本賞、主題歌賞の4部門を受賞。

→2006年のアカデミー賞においては、作品賞を含む同年作品中最多の8部門にノミネートされたが、作品賞は『クラッシュ』が受賞。監督賞、脚色賞、作曲賞の3部門にとどまった。

→ヒース・レジャーは2008年、睡眠薬などの薬物併用摂取による急性薬物中毒により急死した。まだ28歳であった。

・町山智浩さんの「ブロークバック・マウンテン」に対する解説動画は、大局的な視点で語られていて面白かったです。

『小説「怒り」と映画「怒り」』内の「ブロークバック・マウンテン」登場シーン

妻夫木 実は、微妙に『悪人』と繋がっているところがあって。『悪人』の祐一の役作りをしている時に、李さんに「ちょっと二人で『ブロークバック・マウンテン』を観ようか」と言われて一緒に観たんです。男同士が惹かれあうという内容ですが、ヒース・レジャーが演じた主人公の役の空気を感じ取ってほしかったみたいです。僕はその時から『ブロークバック・マウンテン』が大好きで、いつかゲイの役をやりたいと思っていました。でもそれよりも、なぜ誰よりも優馬に惹かれたのかといえば、祐一と通ずる何かがあると思ったんです。誰からも理解されようと思っていないところとこ・・・。
吉田 いや、本当にそうかもしれない。祐一と優馬は全然タイプが違うけれど、ヒース・レジャーが演じたイニスを真ん中に置くと繋がります。三人とも、同じ系列の人間ですよ。
妻夫木 言葉に表せない、その人の核みたいなところが。

『小説「怒り」と映画「怒り」』(p.194)

これは吉田修一さんと妻夫木聡さんの対談中に出てくる対話の一部です。
妻夫木さんが「怒り」の東京篇だけでもゲイの映画として成り立つし、吉田さんにゲイの小説をもっと書いてほしいというようなことを話して、吉田さんがとても勇気づけられますという風に受けてからの流れで出てきます。
祐一 ― イニス ― 優馬 というラインでのつながりがとても興味深いです。
また、役作りのために妻夫木さんは「ブロークバック・マウンテン」を見ていましたが、その会話に対して普通に受けられる、つまりその映画も見ていた吉田修一さんはさすが映画好きだなと思いました。
私の個人的な印象で言うと、イニスは周りに家族がいるとは言え、その孤独の深さという点で、優馬よりも祐一の方に近いのかなという印象がありました。

以上で、「ブロークバック・マウンテン」については終わります。
ゲイの映画でもあり、それ以上に人間的な結び付きを感じる映画でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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