初恋がこんなにも心にしみるものだと教えてくれた人
いつもより少し涼しいベッドの中……。
なんたって久しぶりのデートで、
シャワーを浴びて大の字で寝ている。
ちょっとひんやりするので、布団を肩までかけた。さむっ。
「あのそば屋は格別だったよなー」
「うん!めっちゃおいしかったよ」
「いや、そのそばを食べてるナツミの顔がかわいかったよ」
「えっ!もーまたーそんなことばっかり言ってー」
「ホンマにそう思ったし!」
僕は目を閉じて、深呼吸した。
ナツミとの思い出がよみがえる。
…
「あれ?」
「寝ちゃったかな?」
僕はのどが乾いたので、冷蔵庫に水を取りに行った。
ベッドに戻り、またつま先から肩まで、布団をかぶった。
「寒くない?大丈夫?」
…
「ナツミ?」
やはり、寝てしまったようだ。
…
ラインの画面をそっと閉じて、
スマホを枕元に置いた……。
・
・
・
ナツミとの再会のあと、僕はいつもと変わらない日々を送っていた。
もうラインでメッセージを送信しても既読がつかない。
これが「ひと夏の恋」ってヤツか。
いや、なんかちがうんだけどなー。
初恋の思い出だし。
昔、こんな話を聞いたことがある。
『人は2度死ぬ。
1度目の死は肉体的な死。
そして2度目の死は記憶から消えるという意味で、忘却の死』
ナツミの中で僕は順番はちがうが、先に忘却の死がきたのだろう。
人から忘れられるってホントにつらいな。
なんとか自分のことをアピールしたいが、今更電話なんてしたら、カッコ悪いしなー。
よーし!
明日からまた元気に頑張るぞー。
人生は1度きり。
初恋の大失恋はとっとと忘れて、
仕事!仕事!
僕は自分の顔を両手でパンッと叩いた。
人生は1度きり。
口癖のように毎日言っている。
自分の夢や目標に向かって頑張ってみよう。
ナツミだって、自分の夢があって、努力してるはずだ。
きっとそうだろう。
中学のときに上手だったフルートを吹いているかもしれない。
僕は忘れられたって構わない。
友達もいない。
ラインの整理をしようと、友達一覧を見てみた。
するとナツミのラインのアイコンが、
『あっかんべー』になっていた。
えっ!
コレってもしかして、ナツミは僕が送ったメッセージに気付いていたのかな?
タイミング的にピッタリだし。
けど、あっかんべーって。
ナツミっぽいな。
するとラインのメッセージが1通届いた。
ナツミからのメッセージだった……。
恋バナエッセイ
【完】
〈970文字〉
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