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認知症と混同しやすい『失語症』とは?


失語症の基礎知識

1.1 失語症とは?

失語症は、脳の損傷によって言葉の理解や発話の能力が低下または失われる症状を指します。言語中枢が損傷されることで、話す、理解する、読む、書くなどの能力が損なわれる可能性があります。ただし、失語症は知能の低下や声帯の問題とは異なります。

1.2 失語症の主な原因

失語症の主な原因としては、脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍、感染症などが挙げられます。特に、脳の左半球にダメージが生じると、言語能力に影響が出ることが多いとされています。

1.3 失語症の種類とその特徴

失語症にはいくつかの種類があり、その症状や特徴は異なります。以下は主な種類とその特徴です。

  • ブローカ失語症:発話困難や文法の乱れが特徴。理解能力は保たれていることが多い。

  • ウェルニッケ失語症:流暢に話すが、内容が意味不明であることが特徴。言葉の理解が困難。

  • 導出失語症:単語を適切に選ぶのが難しく、同じ単語を繰り返すことが特徴。

  • 全般失語症:発話と理解の両方が大きく損なわれる。

1.4 失語症と認知症の違い

失語症と認知症は、ともに高齢者に多く見られる症状であり、両者はしばしば混同されがちです。しかし、これらは異なる疾患であり、主な違いを以下に示します。

  • 発症の原因:失語症は主に脳の特定の部位への損傷(例:脳卒中)が原因で発症します。対照的に、認知症は脳全体の機能が低下することが特徴で、アルツハイマー病やレビー小体型認知症など、多くの原因が考えられます。

  • 症状の特徴:失語症は、言葉の理解や発話に困難が伴いますが、一般的な知能や認識能力は保たれています。認知症は、記憶の低下、判断力や思考力の減少、日常生活の機能障害など、より広範な症状が現れます。

  • 対応と治療:失語症の治療は、言語リハビリテーションを中心に行われます。一方、認知症は全体的な脳機能のサポートや改善を目的とした薬物療法、生活習慣の見直し、認知機能トレーニングなどが行われます。

失語症と認知症の症状は一部重複することがありますが、正確な診断と適切な対応が必要です。

失語症の症状とその見分け方

2.1 症状の幅広さと個別性

失語症の症状は、脳のどの部位が損傷されたかによって異なります。そのため、すべての失語症患者が同じ症状を示すわけではありません。ある患者は発話に困難を感じるかもしれませんが、別の患者は発話は問題なく、言葉の理解が困難であるということも考えられます。

2.2 具体的な症状の例

失語症の症状としてよく見られるのは以下のようなものです。

  • 単語を見つけるのが難しい、または間違った単語を使用する

  • 文章が文法的に不正確である

  • 言葉の意味を理解するのが難しい

  • 文章を読むことや書くことが困難

2.3 症状の見分け方

失語症の疑いがある場合、以下のような方法で症状の確認を試みることができます。

  • 会話を試みる:患者に簡単な質問をして、その反応を確認します。

  • 写真や図を使用:写真や図を見せて、それに関する質問を行い、言葉の理解度を確認します。

  • 書き取りテスト:簡単な文章を書かせて、書き言葉の能力を評価します。

症状が確認できた場合、専門家の意見を求めることが重要です。

失語症の治療方法

3.1 早期の取り組みが鍵

失語症に対する治療は、症状が出てからできるだけ早く取り組むことが効果的です。発症直後は、脳が再構築を試みる「可塑性」が高まっている時期で、この時期に適切なリハビリテーションを行うことで、言語能力の回復が期待されます。

3.2 言語療法士とのセッション

失語症の主な治療法は、専門家である言語療法士によるリハビリテーションです。セッションでは以下のような取り組みが行われます。

  • 画像を用いた語彙のトレーニング:画像とその単語を関連付ける練習を行い、語彙の再学習を支援します。

  • 音読の練習:文章や詩を音読することで、言語のリズムや発声のトレーニングを行います。

  • コンピューターを用いたトレーニング:専用のソフトやアプリを利用して、個別のニーズに応じたトレーニングが可能です。

3.3 日常生活での実践

リハビリテーションだけでなく、日常生活の中での言語活動も非常に重要です。家族や友人とのコミュニケーションを増やすこと、日記を書く、読書をするなど、日常的に言語を使用する活動を意識的に行うことが勧められます。

3.4 音楽療法の可能性

音楽は脳の言語中枢と関連が深く、失語症の人にも効果が期待されています。歌を歌ったり、リズムに合わせて言葉を発する練習は、言語能力の回復を助ける可能性があります。

失語症を持つ人とのコミュニケーションのヒント

4.1 忍耐を持って話すこと

失語症の方が言葉を見つけるのに時間がかかることがあります。そのため、話を聞くときには焦らず、忍耐強く待つことが大切です。また、相手が話している間は、適切な目線を保ち、興味を示す態度を持つことで、相手を安心させることができます。

4.2 簡潔で明確な言葉を使う

複雑な文章よりも、簡潔で明確な言葉や短い文章を使うことで、相手が理解しやすくなります。また、質問する際には、選択式の質問(「コーヒーとお茶、どちらがいい?」)をすることで、答えやすくすることができます。

4.3 身振りや図解を活用する

言葉だけでなく、身振りや図を使うことで、コミュニケーションをサポートすることができます。具体的な物を指示したり、簡単な絵を描くことで、言葉の壁を乗り越える手助けをすることができます。

4.4 繰り返しと確認

相手が何を言おうとしているのか、完全に理解できなかった場合、同じ内容を異なる言葉や方法で繰り返し伝えてもらうように促すことが有効です。また、理解した内容を簡潔に要約して確認することで、誤解を防ぐことができます。

最後に

みなさまのダブルケア生活をサポートするために、私達のオープンチャットを開設しました。介護に関するお悩みをお持ちで、中々相談相手がいない方はぜひご参加してください。


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