中国基層研究所

現代中国を基層/グラスルーツから俯瞰透視する

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最近の記事

プロファイリング習近平

 今日のロシアのウクライナ侵略、イスラエル/イランの報復合戦等に典型的に窺われるように、国家指導者の内面心理、特に、権威主義体制国家の場合、そのトップがなにを考えているか、指導者の内なる思考/志向のありようは国際関係の今後を考える際、極めて重要な要素となっている。  こうした関心から、党中央委員会総書記にして国家主席、党/国家中央軍事委員会主席という中国の党・政・軍の権力中心の座を占める字義通りの最高指導者、習近平が今日の中国をどのように捉え、そこから何を考え、何を進めよう

    • “四不青年”

      “四不青年” 近年のネット流行語の代表格に“四不青年”がある。巨大な生存圧力を前に恋愛、結婚、住宅購入そして子供をもつことを諦め、拒否する青年層の現状を象徴する表現だ。因みに、広州市共青団市委が行った「広州青年発展状況」調査では、15,501の回収済み有効サンプルのうち、“不搞対象、不結婚、不要孩子”、すなわち,恋愛も結婚もせず、子供もいらないという大学生の回答は1,215というから、およそ1割方の青年がこの“四不青年”ともみられる。 こうした現象の蔓延に対し、当然

      • 都市・農村の迭代ー中産ライフの陥穽

         城郷融合の時代と称されるまでに、現代中国には農村セクターの都市化および都市部門への農村要素の流入が未曾有のテンポで進んでいる。農民の住宅、教育情況が都市化され、そこにあってはデジタル革命が都市型ライフスタイルの変化を牽引しているという。これは、武漢大学中国郷村治理研究センターが春節期間に微博、新浪と共同で行ったネット調査(同調査:回収有効標本数115,867サンプル、地級市区44,781、県城36,333、村鎮34,753、都市7割、農村3割の回答分布)で明らかになったもの

        • 中国深層理解のために..

          『レッド・ルーレット』  中国でビッグプロジェクトを如何に展開し、成功を勝ち取るか……上海の貧しい教師の家に生まれ、香港に脱出した後、米ウィスコンシン大学に進み、金融と会計学を学び、香港の「チャイナベスト」の株式仲買人として中国ビジネスに挑んだ「海亀族」(海外留学組)、沈棟(Desmond Shum)が著したのが《Red Roulette:An Insider's Story of Wealth, Power, Corruption, and Vengeance in To

        プロファイリング習近平

          文献:戦后中国人の日本観の変遷(1945-1992)

          [コメント]  日本における対中観に関する調査研究は既に汗牛充棟の感もあるが、中国においてもこれほど多数の意識調査が行われていたとはやや驚き。著者、孙扬(南京大学歴史学院副教授)の記述は、かなり落ち着いた対日観の分析となっている。特に、対日観は、①内的要因;直接体験(戦争経験、訪日生活経験)、集団/家族記憶、情感、理解および②外的要素;大衆文化、文学作品、教科書+構造的要素としての総合実力の消長、政治/イデオロギー風潮の2要素から構成されるとし、そこへの愛国主義を核心とした民

          文献:戦后中国人の日本観の変遷(1945-1992)

          台湾総統選挙分析試論(2)ー台湾民意の所在

           台湾総統選挙分析試論を少し続けてみる。選挙結果に見る台湾民意の所在が興味深い。さしてない土地勘の台湾事情ではあるが、怖いもの知らずの、まさしく抛磚引玉を期待する所以ではある。 ◾️政権交代? 台湾の政治成熟度 前回用いた直前(12月中旬)の台湾民意基金会(TPOF)民意調査によれば、政権交代を期待する回答が59.4%と過半数を占めていた。もちろん、TPOF調査の設問ワーディングは「政党輪替執政」とされており、政権担当政党の交替への期待度如何を問うもので、6割の回答者が民進

          台湾総統選挙分析試論(2)ー台湾民意の所在

          台湾総統選挙分析試論

           TPOF(台湾民意基金会)最新データ(2023年12月22日〜24日、有効サンプル1071、dual-frame random sampling)に基づき、台湾並びに選挙分析にさしたる土地勘はないものの、少し作業を試みた。 ◾️政権交替の期待?  ポスト民主化台湾にあっては、国民党と民進党のいわば二大政党が制度として定着しつつあるが、今回の総統選挙への注目点の一つが蔡英文民進党の8年執政からの転換が起きるか否か、国民党の政権復帰の可能性如何にある。TPOF世論調査もこの

          台湾総統選挙分析試論

          嗚呼、インターナショナル!

           「インターナショナル」はパリ・コミューン直後のフランスで「L'Internationale」として誕生した。パリ・コミューンに参加していたウジェーヌ・ポティエ(Eugène Edme Pottier、1816 - 1887)が1871年作った詞に、1888年6月ピエール・ドジェーテル(Pierre De Geyter、1848 - 1932)が曲をつけた。リールの新聞労働者(La Lyre des Travailleurs)の間で歌われるうちに次第に各地に伝わり、1899年

          嗚呼、インターナショナル!

          《級別》:不可解なり

           李克強急死に関して、ネット上ではその「自然死」にギモンを呈する声が急増したが、その背景の一つに、李が“正国級”領導であることから手厚い医療支援があった筈との指摘がある。「国家指導者」といった意味ではあろうと容易に想像がつくが、“正国級”とはなにか…そもそも、そうしたポストの区分を定めるものとして中国には《級別》がある。  各種資料に拠り、少し整理を試みた。  先ず、中国公務員法(2005年)を見よう。 公務員の職務、職級 すなわち,公務員の職位は、その性質、特性等に応じ

          《級別》:不可解なり

          “躺平” から“側卧” へ:幹部のサボタージュ

           ひと頃、“躺平” というコトバが中国社会のリアルな一面を示す表現として中国ネットを席巻した。「寝転ぶ」を意味する“躺平”とは、受験地獄、出世戦争に象徴される中国社会の競争関係の冷酷さに背を向けるライフスタイルの選択(詳細:倦怠ー中国社会の新キーワード)。  このライフスタイルの官僚層への浸透が「躺平式幹部」、これは“領導(=上司、ボス)”への過度の忖度、迎合、同調に精出す上昇志向派とは縁を切り、出世に背を向ける役人のサボタージュといってよい。役人がサボるなぞけしからんでは

          “躺平” から“側卧” へ:幹部のサボタージュ

          黄河、長江不会倒流!

           何とも素っ気ない発表…10月27日午前8時過ぎ、中国国営中央テレビが、李克強死去を伝えた。  翌28日付『人民日報』は1面で前総理逝去を報じたが、その訃告では、お定まりの「党員」、「革命家」、「領導人」への形容詞の扱いはそれぞれ「優秀」、「傑出」、「卓越」とあの天安門李鵬と同フレーズ、ただ、後段の“生平”パートで頻出するのは“他坚决拥护和支持以习近平同志为核心的党中央领导”等の「习近平同志为核心的党中央」であり、“两个确立”、“两个维护”等の習近平フレーズのオンパレード!

          黄河、長江不会倒流!

          倦怠ー中国社会の新キーワード

           ここ数年来、“躺平”が現代中国社会を切り取るキーワードとして注目されてきた。“躺平” とは「寝転ぶ」lay flatという意味ではあるが、“内巻”の対極、つまり過度の競争に倦み疲れた若者の行動として、彼らは“躺平族”とも称された。だが、ここへ来て、“躺平” 、“内巻”に続く切り口として最近では《倦怠》という新ワードが浮上しており、注目される。 “内巻” involution  そもそもこの“躺平”の対極の“内巻”とは、米人類学者、クリフォード・ギアツのinvolution

          倦怠ー中国社会の新キーワード

          “骚扰电话”ー煽动极端情绪的言论

           環球時報の8月30日付社評は、中国側の対日外交戦略の懊悩の一端を示すものとして実に興味深いものがある。以下、詳細に眺めてみよう。 端なくも今回の事態が世論闘争(=心理戦、情報戦)だとの認識が見え隠れする。 情報戦 なるが故に、高度の闘争技巧が必要だと認める。 具体的には、  日本側がいう「在中国の日本人の安全」云々はニセ命題であり、中国社会が憤慨しているのは日本の核汚染水の海洋排出の強行であって、日本公民に対するものではないとする。 軍民二元論  このライン

          “骚扰电话”ー煽动极端情绪的言论

          親中派=優先拘束ターゲット?:ChatGPTに訊ねてみた

          ChatGPTとの対話【Q】以下のネット記事の内容を簡潔に要約せよ。 【Q】本記事の核心としての親中派=「内部情報を握られている危険人物」という論断は果たしてどこまで事実か。 【Q】親中派こそ最優先のターゲットなりとの論断は正しいのか 【Q】中国に対する警戒、逡巡、萎縮あるいは嫌悪感がヨリ一層拡がり、今や中国=ヤバい!との恐怖が拡がるのは、誰にとっての利益だろうか 評価 内容の要約は確かに手際よい。  それにしても、なんとも真っ当な、当たり障りのない無難なやり取りだ

          親中派=優先拘束ターゲット?:ChatGPTに訊ねてみた

          The First Chinese American

           このところ、米国ではアジア系に対するヘイトクライムが急増している。米警察に報告のあったヘイトクライム件数は、全体として2019年の1,877件から2020年に1,773件に6%減少する中にあって、アジア系をターゲットとするものは49件から120件と2.4倍に激増している。地域別では、ロス、ボストン、シアトル、サンノゼに多いが、ニューヨーク市が2019年比833%増と突出している。  トランプ元大統領の「中国ウイルス」発言が直接のきっかけともされるが、最大の背景要因は人種構

          The First Chinese American

          資料庫:中国落馬高官リスト

          出典:『廉政研究会報告書』2023 落馬高官リスト❶「1989-2009年落馬高官リスト」116名 出典:財経網20100619「近20年落馬高官一览」 (うち軍人の落馬は8名) http://blog.caijing.com.cn/expert_article-151178-7642.shtml 党和国家领导人(3名): 国家部委正部级干部(6名): 省、市、自

          資料庫:中国落馬高官リスト