3年の病院実習(2)

病院実習も2週間目、私たちは耳鼻科&眼科での実習。
外来という事もあり、担当が優しく比較的落ち着いて実習を続けていた。記録が実習中に書けるのは本当に有難い。家での作業が減るので、睡眠に時間が割けるのだ。よしよしと思いつつ、週の中盤に差し掛かった時だった。実習病院の最寄り駅で座り込んでいる、社会人クラスの男性が居た。

もういい。俺、病院行きたくない…」

手術室、実習中の学生だった。担当のあたりが強く、精神的に限界だという。それを、他の社会人クラスの仲間が励ましていた。

あと2日で終わりだよ。頑張ろうよ」
と、ある者は言っている

「私もきついけど…何とかなるよ」
と、泣きながら励ますものもいる。

でも、当の本人は
「病院に近づくと足が震えるんだ。もう駄目なんだ」

真剣な顔をして訴えている。泣きながら訴えている。記録で睡眠時間を削られ、実習担当からは心無い言葉や叱咤激励を受ける。それは、時に理不尽と感じる事だってある。慣れない環境…。

こんなにきついことが続くなら辞めよう…

皆、頭にはよぎっている。でもせっかく戦ってきた仲間だ。できる事なら皆で資格を取りたい。そう思うのは当たり前だったりする。でも、みんなギリギリだ…人を気遣う余裕がなくなる。

座り込んでいる実習生は泣きながら
「僕の事はいいから、行ってください。今日は休むけど明日は行くから」

みんなわかってる。もう今日来ないなら、明日も来ないよ。
結局、実習時間が迫っていたからみんな置いていく。後ろ髪をひかれる思いで行く。

実習生の控室。翌日も翌々日もその実習生は来なかった。
坂田先生からその学生が退学した事を聞いた。もし、3ヶ月ある実習の初っ端にきつい事を毎日言われる実習地だったらどうだろう?耐えられるかな。もし終盤なら

「もう終わる。あと少しだから我慢しよう」

と乗り越えられる。だけど、それがあと10週間も残っていたら、この生活がずっと続くのではないか?延々ときついのではないか?と思うんじゃないか。私だと思ったらゾッとする。

3年の実習となると、1人また1人と退学していく。看護師になる為にはこんなきつい事をしないといけないのか?という現実を見させられるのだ。季節が梅雨に入りかけた頃、私にもついに手術室の実習日がやってきたのだ。

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