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春風が吹くと鮮やかに映しだされる恋のお話【春風/ゆず】

春風の吹く季節になりました。

ゆずの『春風』という曲をご存知でしょうか。

『栄光の架け橋』なんかに比べると
少しマイナーというか
あまり知られていないのかなあなんて思うけど

大好きな曲のひとつです。


『春風』の存在は
18歳の時初めて付き合った彼が教えてくれました。

大学生だった私たち。
交際が始まったのが8月の初めだったから
付き合って間もなく長い夏休みに入り
すぐにお互いそれぞれの地元に帰省していまいました。

付き合ったばかりなのに
会えない時間が1ヶ月近く続いて
私たちは焦がれるように毎日LINEをし
色々な話をたくさんしました。

そんな折教えてくれた
彼のお気に入りの曲。
『春風』。

高校生の時カラオケでよく歌ったんだって。

聴いてみるね、とLINEを返して
早速YouTubeで聴いてみた。
その頃の実家にはWi-Fiがなくて
有線の古いパソコンでYouTubeを開きました。
蒸し暑い実家でひとりぼーっと聴いた季節外れの『春風』。

その時の感想は
単調な曲だな〜という印象。

めちゃくちゃにノリが良いわけでもないし
サビで思い切り盛り上がるわけでもないし
かといって超歌い上げる系のバラードでもないし

終始同じようなテンションで
ゆっくりした曲だなあ、と感じました。

要するに
よく分かんなかったの
『春風』がどういう曲なのか。


やがて時がたって
彼も私も大人になるべき時が来て
先を見据えるとどうしても二人の関係を続けられない気配がしてきたのが
ちょうど今みたいな春風の季節。

3回付き合って3回別れた私たちが
2度目に別れたのが春風の季節でした。

ちょうどその頃
再び『春風』を聴く機会があって

ああこれってこういう曲だったんだあって
自分がそうなって初めて理解しました。

昔の恋人か
はたまた好きだったけど想いを告げられなかった人か。
思い出の中にいる相手を想って歌う曲。

夕暮れを思わせるハーモニカの音色も
ゆずのお二人の突き抜けるように明るい歌声も
なんだかとっても切ない。

降りしきる春の雨のなか
ふと鮮やかに思い出す
言葉にすれば壊れてしまいそうなほど
繊細で綺麗な思い出。

ああ
私も彼のこと
いつかこんな風に思い出す日が来るんだろうか。

30歳40歳になったとき
ああこんなこともあったとしんみり思い出す対象になってしまうのか。
繊細で綺麗な思い出になってしまうのか。


お互いがどんな道を歩んで
どんな大人になっていくのかなれるのか
先のことを考えてもまだ何も見えないのに
二人の道がこの先決して重なることはないということだけは決まっている気がして
胸がキューっと苦しすぎて
『春風』を聴きながらただひたすらに泣きました。



その時から『春風』は
何か心が動くたびに聴きたくなる
大好きで大切な曲になりました。

付き合いたての初々しいころ
彼が教えてくれた彼の好きな曲。


それからまたまた長い時間が過ぎ
私はとても気の合うパートナーと思いがけず出逢い
いつの間にか結婚しました。

そしてなんの偶然なのか
今では『春風』の彼の地元の街に暮らしています。

もちろん彼は今この街にはいません。

相変わらず
しとしと雨の降る春には『春風』が聴きたくなって
切なくも優しいメロディラインに心が和らぐ。

大サビでユニゾンになったところでは
雨が上がって光が差して
春風がフワッと吹いてくる映像が浮かぶ。

また君と出会うことがあるのなら
偶然を装ってすれ違えるだろう
君と出会えてよかった
今ならまっすぐに伝えられそうだから

今ならこう言えるかな。
彼の地元のこの街で
もしもバッタリ再会したら。

何の含みもなく
純粋に
出逢えてよかったよって心の中で伝えて
微笑んですれ違えるかな。

10年後20年後に『春風』を聴く頃には
また違った感想が出てくることでしょう。


彼の地元のこの街で
彼の幸せを願います。
どうか元気でいてくれますように。

そうじゃないと私
あんなに泣いた甲斐がないからね。

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