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始まりの坂本龍一 あいてるドアから失礼しますよ

僕にとっての坂本龍一さんは
テクノでも映画音楽でも、偉大な音楽家でもなく
フォークソングの人でした。

フォークシンガー友部正人さんの初期のアルバム
「誰もぼくの絵を描けないだろう」に
若き日の坂本さんのピアノ演奏があります。

僕が高円寺のアパートに暮らしていた頃、
小さなスピーカーから流れたピアノが実に見事で印象深くて(このピアノは一体誰なんだろう?)とクレジットを見たら坂本龍一とありました。 

多分これは彼の最初の公式音源で、この頃はまだ学生さんか駆け出しぐらいだったんじゃないでしょうか。しかも、一発録りだったようです。

動画のコメントには
「このような音楽があったから自分はここまで
生きる事ができた」とありました。
僕もそんな中の1人です。

坂本龍一さんが最後に発表したピアノ演奏は
素晴らしいものでしたが、聴いた時になんだか
最初に還ってきたような気がしていました。

ご冥福をお祈りします。
小さな喫茶店でひと休みを。

あいてるドアから失礼しますよ
月夜に足音のプレゼント
おかわりいかが? にがいコーヒー
やさしい声に かわいた手のひら
路面電車がゴーッと通りすぎる時
ぼくはあなたにふれました

通りの向こうにフォルクスワーゲン
ぼくはボールペンを手に持って
あなたは白い胸もとに手をあてて
ぼくの気持ちに白い胸をあてて
夜風の向うにフォルクスワーゲン
ぼくらは絵を描きました

ちょうどあなたの眠りの辺りに陽が落ちて
ちょうどあなたの背丈ほどの夜が来て
ちょうどあなたが目を閉じる時
街があかりを消しました
ちょうどあなたの眠りのあたりに
僕の顔がありました

吐息はズボンさ
夜風は電車さ
眠るあなたは炎の中さ
メキシコ人たちはハイウェイの上さ
僕は旅する日本人
小さな喫茶店でひと休み

 「あいてるドアから失礼しますよ 友部正人」


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