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アメリカでのこと#24NY到着までと到着してからの乗り物の話

20代で初めてNYを訪れた。
米系航空会社にてNYに向かうことになった。

搭乗直前のカウンターで名前を呼び出された。

ラッキーなことにビジネスクラスに座席変更とのこと。直前の手配でやむ無く正規に近い料金のチケットだったからかもしれない。

俗にいうインボラアップグレードというものだ。

飛行機の座席は過去の履歴に基づき直前キャンセルなどを見越して多めに予約を受付する場合がある。この予測が外れ、座席以上の人数が搭乗を希望するとなると、座席が足りなくなる。

足りない座席がエコノミークラスでビジネスクラスに空きがある場合には、飛行機に搭乗する直前にカウンターに名前の呼び出しアナウンスがかかり、カウンターへ出向くとビジネスクラスの座席に変更の案内、、となる。

カウンターで名前が呼ばれる場合だが、良い話ばかりではない。名前を呼ばれカウンターに行くと、うっかり入れてしまったスーツケース内の持ち込み禁止物品を取り出すよう指示されたことも。

搭乗時間がきて、機内に入った。忘れもしない、この時サービスを担当してくれた客室乗務員は男性だった。当時日系の飛行機では目にしたことがなかったので驚いた。今はもっと増えているのかもしれない。

ビジネスクラスでの空の旅を満喫し無事JFKに到着する。

マンハッタンに出るためにタクシーに乗った。

タクシー運転手は日本では高齢の男性が多いが、この時の運転手は自分とあまり歳が変わらない男性だった。

車中で色々話が弾んだ。

聞くと歳が同じだとわかった。彼はアメリカに来て間もない様子だ。仕事を始めたばかりで中東の国から親族を頼り、アメリカに来ているらしい。

目的地に到着するとタクシーの代金はいらないという。

なぜか。

まだこの国にきたばかりなので、友だちになってほしい、だから代金は無料でいいのだと。彼はそう言って、自分の電話番号を紙に書いて私にくれた。

結局通常通りの料金を支払い、そして彼と別れた。

この運転手との後日談は特にない。

ただきちんと記憶に残っている。

ジェットコースターのような目まぐるしく様々な事が起きる旅の記録の面白さは五感を刺激するが、いつしか刺激には慣れていく。

数年前は、淡々とすぎていく事象だけを切り取った文章が静かに自身を鼓舞したりすることがあるなんて、想像すらできなかったのだけれども。

数年前にはわからなかった感覚。第6感、その先の第7感のような感覚が育ちつつあるので、私はこれを大切にしたいと思う。