膝蓋骨脱臼の手術記録

初めてのnoteへの投稿がこの若干重いテーマで良いのか不安ですが。
自分自身が手術に臨むにあたって同じような症例の方の情報を集めるのに苦労したので、今後同じ症状で悩む方への参考になればと思います。
症状の自覚から術後約1年まで一気に書いておりますので長文です。
手術前後のことだけ知りたい方は目次をご利用ください。




症状の自覚

2002年夏 9歳
所属していたクラブでダンスの練習中、クロスステップを踏んだ瞬間、右膝がずれる感覚と共に身体がバランスを崩して転倒。激痛に襲われ立ち上がることもできずしばらくうずくまって痛みが引くのをひたすら待った。
しばらくするとなんとか立ち上がれるようになったが、顧問の先生が心配して自宅まで車で送り届けてくれた。
痛みはしばらく続いたが病院には行かず。
(身長がかなり伸びている時期だったので親には成長痛だと思われた)

繰り返す亜脱臼

その後、深くしゃがんだ瞬間や走っている途中等何度も右膝がずれる感覚と強い痛みを感じる経験をするが一度も病院にはいかず。
(卓球のジュニアクラブに所属して練習していたので、右足を強く踏み込む瞬間が何度もあった)

診断

2008年夏 15歳
体育の授業中、深く屈伸した瞬間にそれまでで1番強い痛みと共に膝がずれる感覚があった。当然、立ち上がることもできず痛みで泣いた。
その日はたまたまその授業が終わった直後に三者面談で母が学校に来る予定だったため、先生から母へ事情を説明してもらい面談すっ飛ばして初めての受診。過去のずれる感覚が全て亜脱臼の症状だったことを初めて知る。
そのままシーネ(?名称はよく知らない)で固定と松葉づえを約1ヶ月。街で1番大きな病院を紹介される。

手術検討

検討、にしているのは結局この時はしなかったからなんですけど。
紹介された病院であれこれ検査して手術を勧められる(この時自分の膝がどういう状態かしっかり説明されたはずなのに全く覚えていない)。
自分では手術してでもいいからあのずれる感覚と痛みと不安を取り除きたいと思っていたのに、家族の猛反対で叶わず。固定と膝周辺の筋力強化をすることで経過をみることになる。
自分用にサポーターをつくる。約1年は日常的に付けていて、それ以降も運動にはこれが欠かせなかった。(筋力が落ちたのか数年後にサイズが合わなくなり作り直した)
今思えばここで手術しておくのが1番良かった。

悪化

2022年末 29歳
一気に飛ぶが、この十数年の間にも痛みを感じることは時々あったし、普通に走れなくなった(どうしても右足をかばった走りになる)等多少不便を感じることはあったが歩行には問題なく生活に支障はなかった。
この間に大学卒業、就職を機に上京。
2022年末自宅で落ちたものを拾おうと膝を曲げたら(深めの屈伸)、右膝の内側に電気が走るような強い痛みがあった。すぐに歩けなくなるような痛みではなかったが数日経っても痛みが消えず。立っているだけで膝をしたからフォークで突き刺されているような痛みが出てくる。歩くときは無意識に右足をかばい始める。
年が明けてから整形外科を受診。レントゲンは特に異常なし。しばらくすれば良くなるでしょう、で診察を終えられそうだったので、これまでの亜脱臼の診断や手術を勧められた話をして、とりあえずMRI検査までこぎつける。
数日後に検査結果を見て「いや~別に手術するほどでもなくない?したいなら紹介状書いてもいいけど」な反応だったので、手術するしない関わらずこの病院ではアカンと思い大学病院へ紹介状を書いてもらう。

大学病院の受診と手術決定

2023年1月末 30歳
近所の私大病院を受診。MRIの結果を見て「これ本当に仰向けになって周りから何の力も加えずに撮った?」「ほんとに?今普通に歩ける?」と聞かれる。撮影した画像をよく見せてもらうと素人目でもわかるほどに膝の皿がずれている。先生はこの状態で普通に歩けるほうが不思議だったらしい(紹介状を書いてもらってよかった)。
反復性膝蓋骨脱臼と診断され、改めてのレントゲンやCT検査をして亜脱臼を繰り返してきた原因が生まれ持った骨形態の異常にあることを確認、手術はもう伸びきったゴムの様な状態にあった右膝内側の靱帯再建術と脛骨粗面前内側移行術を行うことに決まる。
この時のCT検査で素因が両脚にあることが分かり、左膝に一度も症状が出ていないことを不思議がられる。
(術後数ヶ月後に亜脱臼はしないものの左膝にもお皿がずれる症状が出始める)

ここまで決まってから家族に話した。

手術前日

2023年4月の火曜日 
手術前日に入院。主治医から改めて手術の説明を受ける。
今回の靱帯再建には人工靱帯を使用。
経過が良ければ1週間も経たないうちに退院できると言われていたので、
最初からそのつもりで入院した(そんな甘いものではなかったけど)。
正直手術への不安よりも膝の長年の悩みから解放されることへの期待のほうが大きかった。

手術当日

絶食のため朝食抜き、普段から朝食抜きが多いのでここは余裕。
朝ドラらんまんを見る余裕があった。
術着に着替えて歩いて手術室へ(術着の下はショーツ1枚なの地味に嫌だった)。
全身麻酔をかけられる。気付いたら終わっていた。
麻酔をかけられる直前に9時のチャイムが鳴って、終わった直後に12時のチャイムが鳴っていたので3時間。
いつも寝起きが悪いのにこの時は目が覚めた瞬間から頭の中が冬の青空の様に晴れてスッキリしていた(今回の手術で1番良かった思い出)。
手術室で目が覚めた瞬間からしっかり記憶がある。心配していた吐き気や喉の痛みも全くなかった。ありがたい。
ベッドのまま病室へ。起き上がることができないので仰向けに寝たまま数時間。持参していた水筒からストローで水を飲ませてもらうなど。
右足の付け根のあたりから末梢神経ブロックが入っていたので、右足の感覚が全くなく、看護師さんに「私、今靴下履いてますか?」と聞いた記憶がある(布団から腕を出すと少し肌寒かったのに足先が冷える感じが無かったので)。
頻繁に体温を測られ、術後数時間経過してから38度ほどまで熱が上がっていた(翌日には下がった)。
右脚は固定した状態で低いクッションの上に置いていて、自分の意思では全く動かせず寝返りもできずただひたすらに仰向けになっているのが意外ときつい。
普段眠るときにうつ伏せで寝る癖がついていて、とてもじゃないがその状態では寝付けなかった(この反省を活かして日常に戻ることができてから仰向けで寝付く練習をした)。そもそも膝の皿がぐらぐらしていた人間にうつ伏せ寝は向かない。今は仰向けで寝付けるようになった。

手術翌日

明け方になって空腹が限界になってきた、と同時に右足の痛みが出てきた。
まだ自分では傷を見られていないが、移行術をした脛がかなり痛んできた。
ようやくありつけた朝食もそこそこに痛みとの戦いになってくる。
この日はベッドから車椅子へ移乗の予定だったが、足をベッドから降ろすだけでヒイヒイ言ってしまう(ずっとクッションの上に挙げていた足を床に持って行くことで血が一気に足をめぐるような感覚が走り、特に足先がかなり痛んだ)。なんとか移乗を済ませるもそれだけでかなりの時間がかかってしまい、この日は一度移乗したのみで終了。

術後2日目

痛みは増すばかり。この日は金曜日で今日中に尿道カテーテルが抜けないと週明けになると言われる(土日は泌尿器科医が不在らしい)。術後いろいろあったがこれが結構辛かった。(痛みとか違和感ではなく羞恥心)
やっとの思いで車椅子移乗してリハビリ室へ向かい、支えを持って立ち上がることはできたが、身体に力が入りづらいのと久しぶりに立ちあがったためか気分が悪くなる。当初の予定通りにリハビリも進まず痛みも増して、退院できるか不安になる。この日カテーテルは抜けなかった。

術後3日目

車椅子移乗がスムーズになってきた。
土曜日でリハビリ室は貸切状態。これ以上痛いからと諦めていると体力筋力が落ちる一方と悟り、必死で歩く。松葉杖も渡されて病棟に戻ってからも看護師さんに付いてもらって病棟内を歩く。
(とにかくカテーテルのバックが邪魔)
少しずつ痛みに慣れてきて食事が完食できるようになる。


術後4日目

リハビリ室はお休みなので、病棟内を松葉杖で歩く練習をする。
予定ではこの2日後の火曜日に退院するはずだったが、痛みもまだ強いことと1人で杖をついて歩くのは危険で退院延期。

術後5日目

月曜日になりカテーテルを抜いた。気持ちは楽になったが、ベッドから足を1人ではおろせないため(膝を固定して伸ばしたままゆっくり降ろさないと激痛)トイレに行きたくなる度、看護師さんを呼んで足をおろしてもらい、靴を履かせてもらうというかなり面倒なことになっていた。(病院内はサンダル履き禁止で、かかとまで覆う靴を自力で履けなかった)
用意しておけば良かったものランキング1位は柄の長い靴ベラ!
某月9ドラマ初回放送をTverのリアルタイム配信で見られる心の余裕が出てきていた。

術後6日目

脛の痛みが落ち着き始めたところで今度は靱帯再建した膝の傷がかなり痛み始める。痛み止めの薬を変えてもらう。術後6日経ってもまだ明らかな腫れもありベッドにいる間はずっと氷枕を当て続けていた。

術後7日目

朝からリハビリへ。
リハビリ後ようやくシャワー浴の許可が出る。
実は怖くてまだ一度も傷口を見ておらず、この日初めて手術箇所の傷を確認する。縫ったところが黒く盛り上がっている(盛り上がるように縫ったらしい)。脛の傷は約7cm、膝の傷3cmと4cmの計2ヶ所。
固定も外れる。
シャワーを浴びるにも服を脱ぐのに一苦労。裸で乗った車椅子でシャワーの目の前まで運んでもらい、手すりにつかまってなんとか椅子に座る。
車椅子も膝を上げて伸ばせるタイプに乗っていたため、普通に椅子に座ったのは術後これがほぼ初めて。
30分の時間制限があったのに身体が汚れすぎていて全然時間足りない。
この時ばかりは痛みを忘れてた。
下着が自力で履けないことが辛かった。当たり前にできていたことに介助が必要になるのって、こんなに辛くてみじめな気持ちになるのか・・今更だけど結構落ち込んだ。
推しの主演ドラマが初回放送日だったのに見る心の余裕が無かった(寝たら切り替えられて翌朝には見た)。

術後8~10日目

自分で靴を履き自分で服を着ることを目標に過ごす。
退院日が決まる。
10日目には1人で松葉杖を使って院内のコーヒーチェーン店まで出歩けるようになる。

退院日

術後11日目に松葉杖2本使って退院。
スーツケースに荷物を入れていたので、母に迎えに来てもらいタクシーで帰宅。このタクシーに乗るのも大苦労。足元のスペースが狭くて座席に座るというより寝そべるようなスタイルにしないと痛くて耐えられない。
乗るだけで数分かかる。
1人暮らしの部屋にもともと作業用デスクと椅子を置いていたのが、今回とても役立った(床に座れない)。
室内の移動にも松葉杖2本必要、転がり込むように寝ることでなんとか自力でベッドには寝られた。

外来日

4月下旬。退院5日後に外来へ。主治医と母はこれが初対面。
以前手術を反対されてできなかったことも主治医に話していたため、改めて母へ膝の状態と手術内容、今後の経過等説明してくれた(これがかなり助かった)
入院中に撮影したCT画像等見ながら、まずは松葉杖を使ってでもどんどん歩いて筋力回復に努めることに。

取れない松葉杖

症状を自覚してからかなり長期間無意識に右足をかばった生活をしていたせいか、想像以上に右膝周りの筋力が低下していたらしく、術後約1か月経過しても松葉杖2本無いと歩くことができず、少しでも膝を曲げると何かが滑っているような感覚(これまでの膝がずれるのとは違う感覚)で怖くてなかなか杖が手放せない(何度も曲げ伸ばししているうちに滑る感覚は無くなると言われた→本当にそうだった)。1ヶ月以上2本とも松葉杖が外れないケースは初めてらしく、不安になる。手術した意味無かったのかとかしないほうがまだマシだったのかも、とか余計なことばかり考えてしまう。
とにかく歩いて筋力強化するしかなく、疲れるけど松葉杖ついて電車やバスに乗り出かけるようにした。5月半ばからはラッシュ時間帯を避けた時短勤務で復職して日常生活に戻り始める。
まだ長時間座っていると膝下がジンジンと痛むことがあったが、入院中に公開されていた劇場版の名探偵コナンがどうしても見たくて復職前日に映画館へ。約2時間なんとか座っていられたし、映画に集中して痛みを忘れていた。

ようやく自由の身

7月半ば
自宅では6月頃から少しずつ松葉杖なしの生活を始め、松葉杖1本の外出で少しずつ体を慣らして、手術から3ヶ月半経過した頃ようやく松葉杖返却。
階段はまだ手すりがあっても1段ずつゆっくりとしか昇り降りできなかったがラッシュ時の電車通勤もできるようになった。

日常

自力で歩けるようになってからとにかくたくさん歩くことを意識していたが、歩いている途中で急に右膝上から力が抜けてバランスを崩すことが多く(転んだりはしない)、まだまだ筋力不足を痛感。
8月末自転車に乗り始める。自分の自転車は普通のシティサイクルで入院前日まで通勤に使用。もともとオンボロだったことと少し漕ぎにくさもあり、自分の自転車は使わず、docomoのシェアサイクルを利用して通勤するようになる。片道25分とサイクルポートまで歩くことで電車通勤よりは運動になる?
10月上旬。初めて1日1万歩以上歩く。疲れてくると膝上の力が抜ける感覚が頻繁に起きるようになる。床に座れるようになるが、床から立ち上がるには机に手を付くなど何かしらの補助は必要。
診察でレントゲン撮影。移行術をした脛の骨はもう完全にくっついているとのこと。30歳とはいえまだ若いので早いらしい。

現在

2024年2月(術後10ヶ月)
傷は目立たなくなってきた(退院後約8ヶ月ほどピタシートやテープを傷を押さえるように貼り続けた)。
手すりなしで階段を昇ることはできるが降りるのは手すりが必要。段差が小さいと手すりなしでも降りられる。
長時間の歩行は可能(膝上の力が抜ける感覚はかなり減ってきた)。
自転車は電動であれば痛みなし。
車の運転も可能。
床に座る動作もスムーズになってきた。但し何も掴まず立ち上がるには少し時間がかかる。
椅子に座った状態で足を上げて膝を伸ばしていく動作は完全に水平には上がらない。
右足先で蹴ったり押したりすると膝のすぐ下に痛みがあり力が入りにくい。
靴下を履くときなど膝を折りたたむように深く曲げると少し痛む。
椅子から立ち上がった1歩目に力が入りにくい。
膝立ちすると痛い。
屈伸するとかなり痛い。
走れない。

困ることは多いが、今のところ日常生活にはそこまで影響はない。
横断歩道を渡っている最中に信号が点滅し始めても走れないのが困るくらい。

抜釘手術

約2か月後に予定。
手術後に更新する予定。

同じような症状で手術検討中の方へ

きっと膝蓋骨脱臼で検索しても病院等が症例を紹介したものは出てくるけど、実体験として出てくるのは犬の症例ばかりで人間の症例が出てこずお困りかと思います。
手術に踏み切るのは大変な決断です。必ず痛みの全くない生活が手に入る保証はなく、術前の大きな痛みは無くなっても小さな痛みや日常の不便に思い悩む日々が待っているかもしれません。思うように回復せずもどかしい毎日を過ごす可能性もあります。
私は幸い膝専門医のいる私大病院の近隣に住み、自分のことは全て自分で決断して責任が取れる年齢で、長期間の休職にも文句を言われず、遠方に住む母が上京して生活を支えてくれ(15年前初めて手術を勧められた時猛反対してしまったことへの負い目がかなりあったようです)、入っていた医療保険と傷病手当でなんとか生活が困窮せず、公共交通機関の充実したエリアで生活していたため松葉杖の生活も移動に難儀することは少なく、条件や環境が揃っていたため手術に踏み切れました。
今も痛みが強いことが時々ありますが、手術したことは後悔していません。

同じ病名でも症状や経過は千差万別かと思いますので、1つの参考になれば幸いです。