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同期の与田#4【警察に行こう】

桜:あっ、お兄ちゃんお帰り

平日の仕事終わりに急いで帰宅すると、オレのベッドでくつろぐ妹に迎えられる。



〇:桜・・・いつも言ってると思うけど

〇:泊まりにくるなら事前に

桜:うん、連絡したよ

確かに連絡は来ていた。今から一時間ほど前に。

絶対部屋入ってから連絡しただろ。



〇:せめて前日までに連絡できないか?

〇:オレにもそれなりに準備ってもんが

桜:え、なんでちゃんと連絡したのに怒ってんの?

〇:いや、別に怒ってるわけじゃ

桜:そーだよね、桜連絡したもんね

・・・・・・

桜:びっくりしたー、なんか怒られてんのかと思っちゃった

・・・・・・

桜:ていうかそもそもなんで連絡がいるの?

桜:急に来られるとなんかまずい事ある?

〇:そういうわけじゃないけど・・・

桜:じゃあいらないよね?

桜:もしかして桜が泊まりに来るの迷惑?

〇:いや、そんな事ないんだけど・・・

桜:そーだよね。お兄ちゃんは桜の事大好きだもんね

〇:ああ・・・・

いつもの様にやり込められる。



桜:じゃあこれからは連絡いらないね

〇:でもほら、事前に分かってたら桜の食べたいもん作ってやれるかなーってさ;;;

桜:あ、そっか。お兄ちゃん優しいね

〇:あ、ああ・・・

〇:とにかく早めに連絡してくれると助かる

桜:分かった。じゃあ泊まるって決めたらすぐ連絡するね


絶対分かってないな・・・

桜にバレない様に脳内で溜息をついてから、いつもの確認する。



〇:なんかメシ食うか?

桜:うん、お腹すいたー

いつものように悪びれずに言ってくる妹が憎らしくて可愛い。







〇:なんか適当に作るから風呂入ってくれば?

桜:はーい

ダメ兄の自覚はあるが、なにせ兄とは妹に甘くて弱い生き物なのである。


妹の桜は大学生だ。

オレのマンションが実家より大学に近いため、平日度々泊まりに来る。

いつも急に来るのが困ってるんだが。

以前にエントランスで2時間以上待っていた事があって、やむなく合鍵を渡す事になった。

可愛くてマイペースな妹には困ったもんだと思いつつ、どうしたって甘くなってしまう。







桜:ねえ、お兄ちゃん

〇:ん?

脱衣所から戻ってきた桜が怪訝な表情でオレを見る。

桜:もしかして彼女できた?

〇:できてないぞ

桜:そーなんだ

・・・・・・

・・・・・・

無言でじーっとオレを見つめて立ち尽くす桜。


〇:なんだよ

桜:じゃあこれは誰の?

妹の手にぶら下がっていたのは、小さい同期の大きな忘れ物だった。


〇:あ;;それは;;;

意識的に忘れようとしていたものを目の前に突き出されて慌ててしまう。


〇:えっと;;;

・・・・・・

・・・・・・

なんて説明したらいいんだ?

説明のつかない状況に困っているとフッと悲しそうな顔をする。




桜:お兄ちゃん

桜:ごめんね、気付いてあげられなくて

桜:そんなにブラジャーが好きだったなんて

〇:違う違う;;;

桜:さくらので我慢してくれればよかったのに

桜:これくらい大っきくないとダメだったんだね

そう言ってオレの手首をぎゅっと掴む。


桜:お兄ちゃん、警察行こ



〇:待て待て;;;兄を下着泥棒にするな;;

桜:我慢できなかったんだよね

桜:大丈夫、桜も一緒に行くから怖くないよ

桜:お兄ちゃんがどんなに変態犯罪者で人間やめても、桜は妹やめないからね

おぅ;;;酷いんだか、優しいんだか分かんないぞ・・・

可愛い妹に可哀そうなモノを見る目をたっぷりぶつけられる。

これはこれで悪くないが・・・いやいやそうじゃなくって

〇:だから違うんだって、それは同期の忘れ物だ;;;

〇:家呑みした時に忘れてって;;;;


桜:お兄ちゃん、嘘はダメだよ

桜:普通異性の同期と家吞みってする?

桜:したとしてブラジャーなんて忘れないよね

桜:泊まる前提で着替えとか用意してたんなら分かるけど

まあ・・・正論だ・・・



桜はおっとりしているように見えて、中身は妙にしっかりしている。

そんな可愛い妹の理詰めに勝てた試しなど一度たりともない。

それでも一生あらぬレッテルを張られるのは避けたいオレは必死に釈明を続ける。


〇:桜、頼むから聞いてくれ

〇:ほんとに同期の忘れ物で疾しい事は何もないんだ

桜:その同期の人と付き合ってるってこと?

〇:いや、与田とはそういう関係じゃなくって;;;

桜:ふーん、与田さんっていうんだ

やべぇ・・・

桜:じゃあこのブラジャーは、そのイマジナリー同期の与田さんの?

〇:存在するから;;;

桜:じゃあ写真見せて。そしたら信じる

〇:写真なんかないけど

桜:そっか、じゃあ警察行こ


〇:待て待て;;;

これはどうしたらいいんだ。

でも与田の写真なんて・・・・あっ;;

魔が差して一枚だけ同期の特権を使った事を思い出す。



その一瞬の間に気づいたように

桜:ふいっ!!!

急に近寄ってきた桜が器用に顔認証でオレのスマホのロックを解除する。

〇:おいっ;;

奪い返そうと手を伸ばしたが、シュシュっと躱される。

こんな時だけ妙に素早い。

桜:ふふ、遅い遅い

桜:ムキになるって事は写真あるんでしょー

やべぇ・・・



〇:かえせって;;;

桜:ひゃぁっぅ;;;


勢いよく伸ばした手が桜の柔らかい膨らみに触れてしまう。

というかワシッとしっかりめに掴んでしまう。


既視感のあるシチュエーションと思っていたより張りのある感触に意識が持っていかれる。

桜って意外と・・・

・・・・・・

・・・・・・

〇:あっ;;;すまん////

妹がすごい目で見ている事に気づいて慌てて手を離す。

何やってんだオレは・・・これはさすがにマズイぞ;;;






桜:お兄ちゃん

〇:は、はい;;;

桜:あ、間違えた。人間をやめた変態犯罪者のお兄ちゃん

〇:うっ;;はい;;;

・・・・・・

桜:桜のおっぱいわざと触ったでしょ




〇:違う違う

桜:違う?

〇:事故です;;;

桜:ほんと?

〇:うんうん

桜:ほんとのほんと?

〇:うんうんうんうん

桜:そっか、分かった

なんとかご理解いただけたようで、胸をなでおろす。


桜:よかったよ。わざとだったら警察送りで極刑にしないとだもんね

こわっ;;;

桜:あ、でも次やったら即粛清するからね。お兄ちゃん

笑顔で言う台詞ではない。


〇:以後、気をつけます・・・

というくだりをやった後に、わが物のようにオレのスマホを操作し、同期の寝顔写真を見つける桜。











桜:え、かかっ、かわいい・・・

桜:実在したんだ

〇:だからそう言ったろ

桜:童顔でおっぱい大きいって、お兄ちゃんがこの世で一番好きなやつじゃん・・・

〇:おいっ、勝手に決めるな;;;

桜:え、だって家のお兄ちゃんの部屋にいっぱいそういうの隠してあったよね

ぐぬぅぅぅ・・・・

・・・・・・

桜:え、好きだよね?

・・・・・・

桜:お兄ちゃん?

・・・・・・

・・・・・・

〇:嫌いではないです・・・

自分の口から蚊の鳴くような声が出たのはこれが初めてだ。

隠してあるものには隠してある理由があるという事を理解してほしい。

警察に突き出される事はなさそうだが、色々としんどい。



桜:ねえ、与田さんに会いたい

〇:いやいや;;;なんでだよ

桜:仲よくなりたい

桜:可愛いし

桜:お姉さんになるかもしれないし

〇:そういうんじゃないから;;;

桜:え、でも何度か泊まりに来てるんだよね

〇:泊まりにっていうか、家呑みして結果泊まるみたいな感じだ;;;

桜:ふーん

・・・・・・

桜:でも毎回泊まる前提で着替えとか用意してきてるんだよね

・・・・・・

桜:いつから?

・・・・・・

桜:ねえ、いつから?

・・・・・・

桜:今まで何回くらい泊まった?

・・・・・・

・・・・・・

桜:さっき桜のおっぱい触ったよね?お兄ちゃん

〇:・・・はい

桜の笑顔の圧に耐えられず、一から十まで自白する事になった。




桜:お兄ちゃんが犯罪者じゃなくてよかったー

取り調べが無事終了し、妙に楽しそうな桜。


桜:与田さんって次いつ来るの?

・・・・・・

桜:お兄ちゃん?

〇:・・・金曜の夜です

桜:ふーん

〇:桜、もしかして・・・

桜:大丈夫、突然押しかけたりしないから

振りにしか聞こえないんだが・・・

桜:お兄ちゃんと与田さんの2人の時間を邪魔したりしないよ

〇:別にそういうんじゃ;;;

桜:でも今度ちゃんと紹介してね

〇:だからただの同期でなんともないんだって;;;

桜:うん、分かった。紹介してね

〇:絶対分かってないだろ;;;

桜:お兄ちゃんこそ、ほんとに分かってないの?

〇:はぁ?



桜:あのね、同期ってだけでなんともない人の家に何度も泊まらないし


桜:お兄ちゃんだってなんともない人を何度も泊めないでしょ



まあ・・・正論だ・・・




【続く】




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