幼なじみの和#3【毎日すること】
〇:だから付き合ってないし、ただの幼なじみだって
△:あっ!!
ん?
なぎとの噂について説明していたところ、友人の驚いた表情の先を確かめようと振り返ると、なぎがこちらをじぃーっと見て立っていた。
〇:なぎ・・・
・・・・・・
・・・・・・
無言のままツカツカと歩いて来て、
和:先に行ってる
ぼそっとそれだけ言って教室から出て行った。
△:〇〇、すまん!!
△:最悪のタイミングだった
先ほどと打って変わって頭を下げる友人にやっぱり真面目なヤツだな、なんて思ってしまう。
〇:別に気にすんな
〇:そもそも本当に何もないんだから・・・
△:〇〇・・・
〇:オレはお前の何も考えてなさそうで、結構色々考えてるとこ嫌いじゃないぞ
△:オレの事はいいから、早くなぎちゃんの事追いかけてくれ;;;
早く追いかけるって言っても・・・
行先は分かってるし・・・
何を言えばいいんだか・・・
あれこれ考えていたせいで、結局いつもより時間を掛けて神社に向かう事になった。
ーーーーーー
両端を高い木々に覆われた長い階段を登りきると、画材も出さずに古びたベンチに座っている小さな背中を見つけた。
〇:なぎ
・・・・・・
〇:おーいぃ
・・・・・・
〇:なんか気悪くしたなら謝るけどさ
・・・・・・
〇:実際付き合ってないんだし
・・・・・・
〇:噂とか気にする事もないっていうか
・・・・・・
・・・・・・
返事をしないどころか、こちらを向こうともしない。
なぎのこういう反応は初めてだ。
どうしたもんか。
ゆっくりとなぎの背後まで近寄る。
どう言葉を掛けるべきなのか、思いあぐねているところに
びゅうっと強めの風が顔に当たって、少し視線を上げる。
高台から見える田舎町の景色となぎの後頭部との調和が美しくて、
ああ・・・これはいい構図だなあ、なんて呑気に感動してしまう。
〇:やっぱり好きだなぁ・・・
〇:この場所
なぎに話しかけるでもなく呟いていた。
〇:元々好きだったけどさ
〇:なぎと一緒に来るようになってから
〇:景色が違って見えるようになったっていうか
〇:もっと好きになったっていうか
〇:ここでの時間がより大切になったっていうか
・・・・・・
〇:全部なぎのお陰だと思ってる
〇:だから・・・いつもありがとうな・・・
今言うのはちょっとずるい気もするが、これは嘘ではなくオレの本心だ。
相変わらずこちらを向かないが、たぶんオレの声は届いているだろう。
そう思いながら仕掛けてみる。
〇:別にオレのもんじゃないんだけどさ、井上もこの場所を好きになってくれて嬉しかったよ
和:い、井上じゃないもん!!
いつもの様に呼び方の訂正を要求してきて、
ようやくこっちを向いてくれた。
和:あっ;;
〇:・・・そうだったな
・・・・・・
〇:なぎ
まんまとハメられた事に気づいて更に口が膨らむ。
〇:なんか怒ってんのか?
和:・・・怒ってないもん
〇:そんな口なのに?
和:ずるいよ・・・
〇:ごめんごめん、でも全部ほんとに思ってる事だからさ
和:ほんとに?
〇:ああ
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ふぅーっとオレにも聞こえるくらい深く息を吐いてから立ち上がる。
和:じゃあ私も思ってる事言う
和:ねえ、〇〇
〇:ん?
和:どうしたら付き合ってくれるの?
〇:は?
和:だからどうしたら私と付き合ってくれるの?
〇:なな、なんだよ;;どした急に;;;
和:急にじゃないもん!
今までそんなの言ってきた事無かったのに、いったいどこでスイッチが入ったんだ?
和:さっきのすごく嫌だった・・・・
和:私と付き合うわけないって
和:幼なじみってだけだって
和:私の事なんかなんとも思ってないって
いやそんな風には言ってないけど;;;
和:私は〇〇と付き合いたいの
和:だって〇〇の事大好きなんだよ
和:昔からずっと好きって言ってるのに
〇:待て待て;;そんなの言われた事なんてないぞ;;;
和:え?そうだっけ?
和:んぅ-・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
和:じゃあこれからは毎日言います
〇:いや;;じゃあって;;;
あまりの突飛な展開に戸惑うオレに構わず加速する。
和:ずっと好きだったし、今もこれからも大好き
和:だからちゃんと付き合って
和:毎日〇〇になぎって呼んでほしい
和:毎日〇〇と手繋いで帰りたい
和:毎日〇〇とハグとかキスもしちゃって
和:結婚して子供2人産んでこの町でずーっと仲良く暮らしたい
和:孫におじいちゃんとおばあちゃんはいつも仲良しだねーって言われたい
〇:待て待て;;一回落ち着けって//////
〇:展開がすごすぎて全然入って来ないんだけど;;;
オレが後ずさると、それ以上にぐっと距離を詰めて、キュッと手を握ってくる。
どうやらブレーキは踏んでくれないらしい。
和:ねえ
・・・・・・
和:もうずっと好きなんだよ
・・・・・・
和:これからも一緒にいたいよ
・・・・・・
和:私じゃダメ?
・・・・・・
和:他の子の事好きになったらやだよ
・・・・・・
和:お願い
・・・・・・
和:これからはちゃんと毎日好きって言うし
・・・・・・
和:〇〇の為なら、なんでもするし
;;;;;;
和:なんでも私にしていいよ
;;;;;;;;;;
和:だから私の事好きになって
;;;;;;;;;;;;;
和:ダメ?
こいつっ//////ずる過ぎるっ;;;;
和:嫌なとことか全部直すから
いつまでも終わらないなぎのターンに、一旦区切りをつけようとなんとか言葉を返す。
〇:な;;なぎの嫌なとこなんて無いんだけさ;;;
和:ほんとっ?
〇:ああぁ;;;
和:じゃあ好きになってくれる?
うわぁ//////
たぷたぷに潤んだ瞳を近づけられて、もうどうしていいか分からない。
〇:いや;;なるっていうか、オレだって;;;ずっと好きだし;;;
あれ;;?
中学以来意識して閉じていた気持ちの蓋は、ゆるゆるのガバガバだ。
和:ほんとに?
〇:えっ;;;えぇっと;;;;
和:嬉しいっ!!
規格外の顔面力と津波の様に押し寄せる情報のせいで、脳も身体も機能不全に陥ってしまう。
「カァァーーーー」
懐かしい声に顔を向けると、かつての相方が黒々とした目でじぃーっとオレ達の様子を見ていた。
おぉっ、久しぶりっ。じゃなくって!!
今それどこじゃない事くらい分かれよっ!!
最悪のタイミングで登場したかつての相方を睨みつけていると、身体の前面に柔らかい感触が押し当てられる。
え;ナニコレ;;;
和:こっち見て/////
ゼロ距離で見上げてくるなぎの黒目に映る自分と目が合って、抱き着かれている事に気づく。
〇:ちょ;;待て//////
和:〇〇大好き//////
和:ねえ、外だけど・・・誰も見てないし・・・いいよね//////
和:今日の分のチューしよ//////
じぃーっとこっちを見てるやつがいるにはいるんだが、
幼なじみの悪魔的な吸引力には抗えなかった。
【続く】
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