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幼なじみの和#2【訂正する】

きゃっ;;;

突風がスカートをなびかせる。

和:み、見えてないよね?//////

〇:ん、何が?

何も気づいてなかったように答える。


なぎと放課後を2人で過ごすこの高台の神社は、よくいたずらな風が吹く。

その度にスカートが強く捲れて、とても目の毒だ。


〇:あのさ・・・

〇:もう寒くなってきたし、スカートの下にジャージとか履いた方がいいんじゃないの?

そろそろそういう光景も学内で目に付くようになってきた。

和:むー

なんだか不満そうな顔をしている。

〇:いや、別に井上の好きにしたらいいんだけど

和:井上じゃないし!!


ん?

顔を向けると口をぷくっと膨らませてこちらを睨みつけていた。

〇:いや、井上だろ

・・・・・・

〇:はあ・・・なぎの好きにしたらいいよ

和:ジャージ履きたくない

〇:別にいいけど・・・

和:だって・・・ダサいって思われたくないんだもん、○○に

なんだ、その理由。

〇:そんな事思わないし、履いてもらった方がオレも助かるんだけど

正直スカートの中身が見えてしまった時はその光景がしばらく網膜にやきついて色々都合が悪い。

和:助かる?

〇:あ、いやなぎの具合悪くなったら大変だろ

和:ほんとにダサいと思わない?

〇:ああ

和:優しいね。○○は



なぎは幼なじみで昔からずっと一緒だ。

自分のスペックを理解せずに昔と一緒の距離感で接してくるなぎにはいつも困ってしまう。

オレはオレ自身のスペックをわかっているつもりなので、高校に入ってからなぎの事は井上と呼ぶようにしていた。

2か月ほど前、この場所で名前呼びに戻すよう懇願されてしまって、

なぎのお願いにめっぽう弱いオレは昔みたいになぎと呼ぶようになった。

たまに出てしまう苗字呼びの度にさっきみたいに訂正してくる。

どっちでも一緒だろと思うんだが、なぎの中では大きな問題らしい。

そもそも高校で勘違いされないように井上と呼ぶようにしていたんだが。

そちらはなぎの中で大きな問題ではないらしい。



それにしても一生なぎって呼んでほしいだの/////

一生隣にいてほしいだの/////

オレじゃなかったら完全に勘違いするような台詞を突然言ってくるのが困ったところだ。

幼なじみとしてのオレに好意を持ってくれている事は流石に分かる。

それでも、好きだの、付き合うだの、そういう話にはならない。

それはやはり異性としての好意とは違うからだろう。

まあオレとなぎじゃどう考えても釣り合う訳がない。





最近のオレは美術部の活動をサボる事は無くなった。

まあ、放課後に部室に行かずに好きな場所に行って絵を描いているという点において今までと一切変わりはない。

顧問に報告をしているなぎが一緒に来るようになった事で、オレも立派に部活動をしているという事になっているようだ。

そもそも美術部だってなぎにお願いされて入っただけなので、その辺オレはどっちでもいいんだが。

お気に入りの人気の無い神社は相変わらず綺麗で、

毎日違う表情があって季節は感じられるのに、ずっと時間が止まっているような不思議な感覚がある。

ただ一つだけ気になっている事は以前1人で来ていた時によく時間を共にしていた先客がいなくなった事だ。

まるでこちらに興味無い素ぶりでいつもいるくせに。

たまに黒々とした目で何か言いたげにじぃーっと見つめてくる時もあった。

オレの連れてきた新参者に気を遣ってくれているのか。

ずっと静かだったのに、饒舌に話すオレが鬱陶しくなったのか。

多分後者だろう。

多少の罪悪感を抱きつつも、あの自信にみなぎった印象的な黒目を思い出すと

どっかでよろしくやってるんだろうなと思えた。



学校内で気になっている事、こちらのほうが問題だ。

放課後毎日オレの教室に迎えにくるなぎ。

急に名前呼びになったオレ。

心配していた通り、ちゃんと噂になってしまった。


あの超ハイスペックの井上さんがついに、だの

やっぱり幼なじみのアドバンテージが、だの

ある事無い事が好きなように広まって、なんとも面倒な話だ。

まあ丁寧に一つ一つ訂正して、オレとなぎの関係性を説明していけば時間が解決するのだろう。

そうタカを括っていたが時間が経っても噂は大きくなるばかりだった。

日に日になぎとの関係を聞かれる機会が学年、男女問わず多くなり流石に辟易していた。

なんでこんな事にと思うが、思い当たる節がないでも無い。





^^^^^^

和:わっ!!


学校の廊下でオーバーラップしてきたなぎが、クルッと振り返ってポーズを決める。

和:びっくりした?

〇:別に;;;

和:ふふ

オレの顔を見て満足そうにそのまま前方の友人と合流する。

その会話が少し耳に届く。

◇:ねえー、やっぱ〇〇君と付き合ってるんでしょ?

あ、そうか。

なぎも当然聞かれてるんだよな。

自分の事しか頭に無かったが、当たり前の事に今更気づいた。

だから気を付けてたのにと思いつつ、なぎがどういうふうに説明してるのか気になってしまう。

和:えへへへー



なにっ!?

訂正してないじゃねーか!!

そりゃ噂が収まらないわけだ。

こっちがこんなに頭を悩ませてるのにどういうつもりなんだよ。


まあ、噂なんてなぎにとっては大きな問題じゃないのかもしれないな・・・




ーーーーーー

△:なあ、この後女の子達とカラオケ行かない?

HRが終わってすぐ友人に声を掛けられる。

〇:いや、オレ部活あるからパス

△:えー、たまには付き合ってくれよー

〇:どうせ人数合わせだろ?

△:正解!!

△:お前の察しのいいとこ嫌いじゃないぞ

〇:そら、どーも。オレはお前のチャラさがすげーと思ってるよ

△:いやー、照れるなー。じゃあ今日だけ頼むよ

〇:だから部活だって

△:まじかよー

こいつは同学年の女子を全員名前呼びできるような、社交性オバケみたいなやつだ。

オレとは全然違うタイプなんだが妙に馬が合った。


△:今更だけどさ。なぎちゃんと付き合ってんの?

〇:は!?お前までやめてくれよ

△:てか、この前なぎちゃんにちょっと聞いちゃったんだけどねー

△:なあオレに隠し事は無しだろ

△:ちゃんと言わなきゃ、これからもオレに誘われるぞ



はあー、、、

多分ちゃんと訂正してないんだろうな。

なぎは。

〇:隠してる事なんかねーよ

〇:井上がオレと付き合うわけないだろ

〇:ただの幼馴染ってだけだよ

△:ふーん

・・・・・・

・・・・・・

△:あのさ、お前本当にそれでいいのか?

てっきり茶化してくるのかと思っていたら、コイツにしては珍しく真剣な顔をしていた。

△:オレが言っても説得力ないのは分かってるけど、お前はオレと違うだろ?

△:そーいうの曖昧なままでいーのかよ

なるほど、そういう事か・・・

コイツなりに噂の事を心配して言ってくれている事は分かったが、なぎとの関係性については正直深堀されたくない。

〇:曖昧も何もハッキリ言ってるだろ、付き合ってないし、ただの幼なじみだって

△:なぎちゃんの隣りに別の男がいてもなんとも思わないって言うのかよ!!

〇:落ち着け;;なんでお前が怒ってんだよ

△:あっ!!

ん?

驚いた表情の先を確かめようと振り返ると、なぎがこちらをじぃーっと見て立っていた。


【続く】



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