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懐かしい未来

魔法使いの弟子  8


 関ケ原で、天下を二分する戦乱は、過去二回あった。
 
 シャンタンは、関ケ原で「高速を降りよう」と、言った。
「黒血川」は、古い時代の方に起きた戦の時、兵士たちの流した血で川が黒く見えたことから付いた地名だったという。

 関ケ原も中山道の宿場の一つであり、町全体が古戦場の記念博物館のようになっていた。かつて流された多くの兵士たちの血や、残された家族の流した涙は、何百年も経って町の観光資源になっているようにも思われた。

 しかし、シャンタンは、「消化・昇華されない無念は、その土地に重い波動を残し、気の流れを停滞させている」と、言うのだった。だから、霊感の強い人には、幻影のような存在を、見たり感じたりするのだという。
 シャンタン自身は、それを見たり感じたりする能力はないらしく、土地に固有の波動を身をもって体感し、体が重くなったり眠くなったりするのだと言った。

 そういわれて見ると、私もそういう気分になって、戦いに負けた側の人の気持ちと、特に強く同調していると、シャンタンに言った。
 それを聞いて、満足そうにシャンタンは髭を撫でた。

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1,613字

シャンタン仙人との、敦賀「もんじゅ」へ浄化の旅を小説化しました。 「事実は小説より奇なり」という内容ですw  紀行文としても楽しめると思い…

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