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みんな大好き幽霊塔

幽霊塔は時計塔にまつわるミステリー。宮崎駿監督が少年時代にハマり、カリオストロの城に影響を及ぼした作品。ジブリ美術館で2015年に『幽霊塔へようこそ展』をしたり、幽霊塔の絵コンテまで作ったらしい。

幽霊塔はアリス・マリエル・ウィリアムソンの小説『灰色の女』を黒岩涙香が翻案したもの。涙香のファンであった江戸川乱歩が涙香の翻案小説を同題名のままリライト。さらに他にも翻案、リライト作品が多く生まれている。

その中で私が見たのが下記の漫画。かなりオリジナル要素が強い。

舞台は1950年代の神戸。幽霊塔の殺人事件の謎と宝探し冒険活劇。グロい描写があり、ファンタジー要素はなく、現実的にLGBTに切り込んでいる。以下一部ネタバレあり。

登場人物で一推しは山科刑事。運動神経はイマイチだが、頭の回転が速く同期の星と呼ばれている。おもしろ優しい塩顔お兄さん。テスラ博士から生贄選びを強要された際、山科刑事は過去に親友を殺した犯人を差し出そうとしたが、正当防衛の可能性を示唆されて思い留まった。山科刑事の秘密は、前述の親友などの少年しか愛せないこと。そんなマイノリティーの誇りのために出版社を作りたいと幽霊塔に入った。覚悟を決めた山科刑事は迷わない。命の犠牲を伴っても折れずに前に進む。

幽霊塔の中では、いわゆる普通ではない登場人物がたくさん出てくる。「犯罪者、殺人鬼、性的倒錯者しかいない」状況になって、普通の人がマイノリティーになる。殺るか殺られるかのお宝争奪戦なので、受け身でいたら死ぬ。

こんな状況下では、普通の人は怖いし、孤独な気持ちになる。しかし、少年愛者の山科刑事は「一生そんな気持ちのまま生きてく人間が、この世の中にはいるんだよ。」と言う。

幽麗塔を読んでいると、段々何が普通で何が異常かわからなくなってくる。

そうか。変態なんてどこにもいない。
これが、この幽麗塔の主題だ。

随所でリライトや話題になる幽霊塔。また美しく生まれ変わった幽霊塔を見たい。

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