#2 名辞以前の感情の話
名前がない感情というものがあると思う。
悲しいことを『悲しい』と思う前、怒りを『怒り』にする前、私たちの中には言葉の輪郭を持たないわやっとした感情がなんとなく存在する。
なまじ歳をとると知っている言葉が増えていってしまうから、自分の感情に名前をつけるのが上手になってきてしまう。もしかしたら、それが大人になるということなのかもしれない。
言葉を知らなくとも、きっと感情はあるだろう。赤ん坊も笑うし犬も怒るのだから。それを単なる生存本能上獲得した生理現象としてしまうとなんとなく色が