見出し画像

ファジアーノ、ここにあり...(vs.川崎フロンターレの会報 2019-8/14)



 どうも、お盆いかがお過ごしでしょうか。編集部は岡山で台風による足止めを食らいました。びしょびしょに濡れながら延長戦まで見守って疲れてしまったので、新大阪脱出を諦めたゆえ...w 帰京後の予定もずれ込んでしもうたので17日の新潟戦も諦めることになりそうです。

 つまりは生むっくんチャンスを一つ逸してしまったのですが、それでもなお編集部は「歴史」を目撃した高揚感で一杯です。王者・川崎フロンターレに対して一歩も引かない90分間を見せました。しかも普段試合に出られていないメンバーによってです。これを歴史的瞬間と言わずして何と言いましょうか。

 スタジアムと選手が、1万1千と18人が一つになった延長後半の円陣を編集部はずっと忘れないでしょう。むっくんはいなかったですけど、全きその歴史の一部であるのです。それは素晴らしい。


試合情報


岡山1-2川崎;中野(46分)、ダミアン(90+3分)、家長(117分)

メンバー
岡山;4-4-2
GK13金山
DF31下口、5増田、4濱田、2廣木
MF25久保田、37西村、16武田将、30武田拓
FW7中野、24赤嶺

川崎;4-2-3-1
GK21新井
DF26マギーニョ、4ジェジエウ、5谷口、17馬渡
MF6守田、22下田、41家長、28脇坂、19斎藤
FW9ダミアン




試合内容


墓参り滑り込み到着によりメインスタンドの自由席に座れーず。バックスタンドびちょびちょ観戦ゆえ記録写真もほぼなし。無念である。



最後の最後に食らいつく歴戦の偉丈夫

 戦前の予想通りに川崎がボールを持ち、岡山は奪いにいく展開。これもまた予想通りに川崎は最終ラインからポジションを動かしていって、岡山のSH-SB間を狙ってきます。

 ボールホルダー(CH守田が多かったと思うけど眼鏡も風雨でびちょびちょだったのでよくわかりません)に対して右SBマギーニョと右SHの家長とトップ下の脇坂が入れ替わりつつマークをずらす形がよく採用されていました。これは狙いというよりは単に巧い選手にボールが集まった感じでしょうか。岡山の左SH武田拓君の寄せかたに甘さがあった(対マギーニョ、家長に相対する際の劣勢)もあるかも。

 岡山が苦しんできた、そして自身も取り組もうとしているこの「ひし形で動くと相手を崩せる」方式。J2でも珍しくない光景となりそこにこの二部リーグの進化を見るわけですが、さすが川崎フロンターレは本家本元やなというパスの判断と球速の速さ、トラップと次のプレーへ繋がるスムースさを見せ、岡山の守備ラインはあっという間に突破されてしまいます。CFダミアンが斜めに逃げてあっという間にオフサイドラインを破って一気の裏抜けを狙ったりもしてくるので前線守備の的が全然絞れない。台風によって不安定な雨脚だったのですが、ミスが少なかったですね。技術力よ。

 それでも失点は免れた岡山。ターンオーバー起用となった濱田・増田の平均190センチコンビの水際守備が、幾多ものペナルティエリア侵入を食い止めました。J1でも時に強烈に時に狡猾に点をとっているレアンドロ・ダミアン相手に互角の勝負をできていましたし、斎藤のカットイン侵入にも飛び込まずコース制限して落ち着いて対応。特に後半で空中戦が増えてからも安定感が抜群でした。この二人で食い止めている間に、武田将・西村の両CHや下口・廣木の両SBによる増援が間に合って、攻め込まれたわりには決定的なシュートはかなり制限できました。

 有馬監督が推し進めているポゼッション強化の都合であったり負傷離脱であったりで、濱田と増田は出場機会がかなり少なく、このコンビでのCBは初めてだと思うのですが、4バック守備のオーガナイズもスムースでしたし、対人でもこの固さ。正直驚きました。J2で実績のある跳ね返しマンたるご両人の意地を見たというところでしょうか。

 移籍後即出場となったCH西村も川崎が全力で炎上させにかかる中央~SB間のスペースをうまく監督していて結構驚きました。清水エスパルスは人を見てSB間を埋めることを優先する結果、中央ががら空きになり川崎にボコボコにされるのが通例であるので...w とはいえ、清水仕込みであろう、ちょっとやそっとじゃボールを失わないキープ力、前のパスコースを瞬時に見つけ攻勢に繋げる正確性はさすがJ1という水準を見せていました。良いところを出しつつ有馬監督のサッカーを吸収してビルドアップ精度問題の救世主になってほしいところ...



堂々の武田拓、狡猾な赤嶺

 攻撃面の方に目を向けますと、牽引したのは前半は左SHの武田拓、後半はCFの赤嶺でした。

 川崎フロンターレの守備は、圧倒的保持の結果ほとんどが奪われ際のリバウンドのプレスとなっていまして、岡山としてはここを潜り抜ける必要がありました。かなりの割合でミスやGKに戻してたまらず蹴るという状態になってしまいましたが、武田拓君の活躍によって幾分かはここに風穴を開ける局面をつくることができていました。リーグ戦でもちょくちょく見せていましたが、タイマンであればボールタッチにフェイクを入れて抜く技術を持っていて、これが川崎のタイマン気味なサイド守備に結構効いていました。

 特にサイドから中央へ斜めに入る攻撃への対応が遅れがちで、ここを狙えていたのが岡山が善戦できた要因でしょう。後半開始直後の先制点もこの狙いからで、廣木の斜めのパス→武田拓のフリック→西村のダイレクトパス→久保田の折り返し→赤嶺の落とし→下口のクロス→3人が飛び込み中野がさわるという連動した崩しでした。狙い通り、しめしめといったところでしょう。

 先行されたことで川崎はよりいっそう攻めに行き、今度は右サイド、SB馬渡がえぐる攻撃が増えていきました。左サイドの優勢もそのままであったのでかなり厳しかったですが、岡山も薄くなった川崎の守備に赤嶺をぶつけて応戦。ここの赤嶺の競り合いの妙は素晴らしかった。この日スイープしまくっていた(そして全くファウルにならず一部怪しかったのでブーイングの的となっていたw)川崎CBジェジエウとの勝負は中野誠也にしておいて一貫してCHやSBのエリアでの勝負を狙ってボールキープや際どいセカンドボールを作り出していました。ここで落ち着けたことで、岡山が90分リードを守り抜く態勢を固めることができていました。これは...勝ったのでは...!?と編集部もそわそわしましたね。

 

懐かしの終盤失点と終息

 川崎の交代カードは脇坂→知念でターゲットを増やし、斎藤→阿部と馬渡→車屋で右サイドの質を高めるという取り合わせと思われます。知念が入ってからはシンプルなロングボールも増えました。岡山としてはマグ増田・濱田コンビの見せる堅牢さを前面に守りきるぞというコンセンサスはとれていました。彼らを通り越すクロスをダミアンが強烈に叩きつけるところは金山が決死のセーブ。おうおう、ジャイアントキリングのオーラが高まってきたぞ。

 しかし、有馬ファジアーノの課題はその団結力に見合う耐久性があとちょっと足りないというところ...今季の初めからずっと、そのテーマと戦ってきています...。そして、今回も来てしまった...w

 同じターンオーバーでも違いが大きいのは交代カード。岡山の交代は久保田→三村、西村→ユヨンヒョン、中野→レオミネイロという運動量維持、現状維持が主目標だったと思われますが、三村は右サイドを押し込まれてドリブルで押し上げる余裕すらなく、ユヨンヒョンはブロック守備の手当てがやや怪しく、レオミネイロも怪我明けということもあってジェジエウにすりつぶされてしまい、なかなか難しい状況になってしまいました。それでもなお我慢を続けて後半ATにコーナーキックを得て時間を潰すことができたのですが、最後の最後に押し込まれ延長へ。。。

 ここまでくるともう押し返す術が残っていませんでした。それでも選手は必死に戦い、スタジアムはそれに感応して鼓舞の声と拍手の音を強め、そして、我々は一つになりました。力及びませんでしたが、選手も、観客も、誰もが出しきった。そういう試合だったと思います。



未来へ


注がれる大きな拍手と歓声。そこにいるのは敗者ではなく、勇者でした。


 川崎相手に本気で勝つ。やるべきことをやる。90分間それを一貫できたと思います。ターンオーバーの選手であってもそれができたということは、それだけの組織を有馬監督のチームは作り上げているという証左だと思います。

 残念ながら公式戦4連敗ということになりましたし、足りないところも少なくないとは思いますが、一つの集団となって戦っていくという面、これがファジアーノ岡山だ、と内外に示していくという面では理念の上でも実務の上でも方向性は間違っていないという自信を持てるゲームなんじゃないかと思います。

 ミクロな面で言えば守備の強度における濱田・増田コンビの示した堅牢さと武田拓・西村が示した崩しの多様化の可能性、もう少しマクロ面で言えば、Jリーグ興業におけるリーディングカンパニーでもある川崎フロンターレとの対戦によって広げられるであろうファジアーノ岡山というクラブや岡山県の魅力の拡散と、その逆にクラブ自身が見つけるであろう成長の可能性etc....そしてなによりスタジアムが一つになったあの瞬間。

 勝てる試合を落としてしまったので全面的に喜ぶわけにはいきませんが、単なる「胸を借りた良い経験」以上のものを掴みとったように思いました。それが編集部の高揚感の理由かもしれません。掴みとったものをどう活かすか。ターンオーバーで出場を回避したむっくんは何を想うでしょうか。それを新潟戦以降で見られればと思います。


それでは。