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続ければ、できることも増える

地域日本語教室

昨年から、縁あって私が住んでいる市内のある地区で、地域日本語教室設立に向けた活動を行っている。この地区は、在住外国人の割合が2.2%で、市内でも比較的外国人比率が高い地域だ。工業団地があり、ベトナムやフィリピン等からの技能実習生が多く働いている。(韓国、オーストラリア等からの定住者もいる。)地域の産業は外国人にも支えられている。

今、この地域には日本語学校やボランティア型の日本語教室は無い状態である。中心市街地からは離れ、周りは田んぼだらけで、車社会の中で自転車が一番の交通手段である外国人にとって、気軽に市内の他の校区の日本語教室に行ける環境ではない。

また、技能実習生として働いている外国人のほとんどが、あまり日本語を勉強せずに来日し、すぐに工場や福祉施設で働き始める。ベトナム人が多い職場だとベトナム人同士で固まって仕事や生活を共にすることが多く、日本語を独学で勉強しようと思わなければ話せるようにはならない。「学びたい」意欲のある生活者としての外国人に学ぶ機会を提供する場と、地域住民と関わる場として「地域日本語教室」の必要性が高まっている。そこで、市の事業で、地域日本語教室の設立に向けて、現在は地域住民(日本人)と外国人に呼びかけて異文化交流の活動を月に1回行っている。

活動を始めたきっかけ

私が地域の日本語教室に興味を持ったきっかけは、2020年に起きた、ベトナム人技能実習生が双子の子どもを死産し死体遺棄罪に問われた事件。女性は「妊娠が知られたら、帰国させられる」という恐れから、誰にも相談できず、一人で悩みながら仕事を続けるうちに早産をした。誰にも相談ができなかったこと、行政に助けを求められなかったこと、病院に行けなかったこと、言葉が不自由なこと、、この事件をニュースで見た時は、この女性がどれだけ孤独で不安だったのだろうかと胸が苦しくなった。

「もしかして、同じ思いをしている人が他にいるのでは?」と思った。技能実習生だけでなく、夫の仕事の都合で日本に移住をした外国人女性の中にも、日本語が不自由で安定して仕事に就けず行動範囲がスーパーと家の往復だったり、妊娠や子育てをする中で相談できる相手がいなかったりなど、孤独に感じるケースがあるという。万が一、そんな状況の女性が家庭内DVにあっていたら、果たして相談に辿り着けるのだろうか。

昨年、仕事を辞め時間がたくさんあった私は、行政が主催する「地域日本語教室コーディネーター研修」という研修を知った。そのときに「地域の日本語教室」が外国人のセーフティネットになりうるのでは?という仮定が私の中に浮かんだ。

研修には、日本語教室の役割を知れたらいいな〜、日本語教室での日本語の教え方を知る一歩になればな〜というぐらいの気持ちで参加した。私は日本語教師の資格を持っていないが、この研修に参加してから約1年、気づけば日本語教室の立ち上げに向けた教室活動に、一メンバーとして参加し、企画やイベント運営をしている。

少しずつ形になってきた

周りには、大ベテランの日本語の先生、地域日本語教室の立ち上げに携わってきたベテランのコーディネーターの方々がいる。私にできることは、せいぜい運営が円滑に行くようサポートすることだ!と意気込んでいたら、何回か活動をする中で任される役割が増えていった。
気づけば教室活動の計画書作成から進行、日本人に向けた「やさしい日本語」の講座、ベトナム人やインドネシア人が日本人と一緒に日本語を学びながら文化体験をする企画を実施した。

もちろん色んな方々の知恵や働きがあってできているのだが、「ペーペーの私にできることはこれだけだ」と思っていた所から、ここまで任せてもらえるようになり、なんでも続ければできることが増えるな、としみじみ感じている。

これから

担当する地区での教室活動は、去年と合わせるとこれまで7回程実施した。継続して参加してくれている外国人もおり、少しずつ形になってきたなと感じる。
いずれはこの地域の住民の手によって運営されるものを作りたいので、そこまでにどうしていくか、もっと作戦を練る必要がある。

先日、医療通訳講座を受けた時に、市の保健師さんが「この地域に住んでいる外国人からの、妊娠・出産・育児に関する相談が多い」と言っていた。実際にどのくらいいるのか、彼女たちが悩んでいることがないか、必要なサポートや手当ては受けられているか。現状を知ると共に、いつか話を聞くことができたらいいなと思っている。




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