【読書】スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック「知ってるつもり――無知の科学」

「知ってるつもり――無知の科学」という本を読んだ。読みやすい。みんな色々な物事を知っているつもりだけれども、実際は理解していないよという話。それどころか、知っているつもりの人ほどパフォーマンスが低かったり極端な意見を持っていたりするよということも語られていた。最先端の研究をしている人はおそらくここから先はどうしても分からないなという感覚を味わっているのに対して、一般の人は全部分かったつもりになっておりどの部分を理解しているかさえ分からない。なので、無知な人ほど却って知っているつもりになっているというのは理解に足ることであった。

一例を挙げると、移民が来ると治安が悪くなるという物事に対して正しいと思いこんでいる人ほど移民に反対だろうが、なぜ移民が来ると治安が悪くなるのかという説明をさせると案外分かっていなかったりする。あるメカニズムについて説明をさせることによって自分の無知を自覚させることができ、その結果として過激な主張も穏やかになっていくというのはなかなか良い話だと思った。

一方で、説明を求められると却って怒る人もいるという。なんで移民が来ると治安が悪くなるの?と聞かれて、そんな当たり前のことを改まって聞くなといった感じで怒ってくる人がいるのは容易に想像できる。「なんで?」とひたすら尋ねてくる小学生をちょっと面倒に思ったのと同じように、こうした介入は苛立ちを増やすかもしれない。

全体を通して読みやすく、「知っているつもりだけど知らない」という主張をしている著者たちであるだけにどこか謙虚な感じが漂ってくる1冊であった。

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