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Think Again 批判的思考の重要性

みなさんこんばんはLonです。
夏休みを利用して気になっていたアダム・グラントさん著の「Think Again 発想を変える、思い込みを手放す」を読了しました。
今日は本書を通して考えたことや学んだことを共有し、皆さんの役に少しでも役立てていただければいいなと思います。
(ヘッダー画像はUnsplashから拝借しています)

概要・感想

著者のアダム・グラントさんは心理学の専門家かつ大学教授であり、作家としても著名な方です。
本書ではタイトルの通り、「再考(think again)することの重要性」を一貫して主張しています。
再考することがなぜ重要であるか、そしてどう習慣づけるかを「自分自身」「他人・相手」「組織・社会」の大きく3つの観点に分けて論じています。
ざっくり概要を知りたければ以下の動画はおすすめです。
(自分自身についての言及多めで、組織の観点については触れられていないです。)
以降では各観点に分けて、私が特に印象に残った箇所とその感想をまとめます。

自分の思考モード

このセクションで私が印象に残ったのは主に2つです。
1. 挑戦的なネットワーク」の重要性

私たちに再考を促してくれるのは、別の種類のネットワークだ。私はこれを「挑戦的なネットワーク」と呼ぶ。このネットワークは、私たちの盲点を指摘してくれ、弱みを克服する手助けをしてくれる、信頼のおける人たちの集団なのだ。彼らは、私たちの再考サイクルを作動させ、自身の技術を過信しないよう、自身の知識を疑うよう、そして新しい見解に興味を持つように仕向けてくれる。挑戦的なネットワークの理想的なメンバーは、非協調的な人だ。というのも、非協調的な人こそ、思い込みを手放し、発想を変えるために、これまでのやり方や不文律に対して臆することなく疑問を投げかけるからだ。

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (p.149-p.150). Kindle 版.

何か物事を進めるにあたって、「非協調的な人」や「耳の痛い意見を主張してくれる人」は心理的に遠ざけたくなってしまうものです。
しかしそのような人々こそ我々の思い込みを再考するチャンスをくれると著者は主張しています。

この主張は私にとても刺さりました。
何を進めるにしてもどうしても意見に同調してくれる人と一緒に進めたくなってしまいますが、イエスマンで周りを固めるのではなく、批判的な意見をくれる人こそ身近に置いておくべきなのだなと痛感しました。
この辺りは以前読んだピョートルさんの書籍「世界最高のチーム」でも「カルチャーアド」を大切にせよ、と主張されていたことと重なるなと思いました。
今後自分で組織を構築していく時には是非とも気をつけたいものです。

2.自分の学ぶ能力は確信しつつも、自分の知識ややり方そのものは疑う

将来の目標に達するのに十分な能力が備わっていると自信を持ちながら、そのための正しい手段は何かと現在の自分に問う謙虚さを持つことは可能だ。そう、それが最適な自信レベルである。

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (p.87). Kindle 版.

世の中には「何がなんでも自信を持つべし!!」みたいな主張を時々見ますが、自信が行き過ぎ、傲慢すぎると再考するチャンスを逸してしまうと著者は主張しています。
私はどちらかというと不安を抱えてしまいがちなのですが、適切な自信とセットであれば不安はむしろ再考のチャンスを増やす有用なものであるという主張は学びになりました。
自分の能力それ自体は信じつつも、今の知識を思い切って捨てることができる人間でありたいものです。

相手に再考を促す方法

このパートでは、一流の交渉人の話術について解説していたパートが印象的でした。一流の交渉人は、二流の人に比べて、「より少ない論拠のみを提示し」、「相手に対して質問を投げかける回数が多い」というのです。

交渉人らが意見交換や提案を始めた時、対象グループ間に二つ目の差が現われた。議論というと、天秤を思い浮かべる人が多いだろう。論拠を積み上げていくほど自分たちに有利に傾く、と考える。しかし、一流の交渉人が行なったのは、全く逆だ。彼らは、自分の主張の論拠を、ごく少数しか提示しない。持論のベストポイントの効果を薄めたくないからだ。

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (p.179). Kindle 版.

私も主張をする時はたくさんデータ・根拠がある方が望ましいと考えていたのですが、逆であると知りました。

また、一流は相手の主張を肯定しつつ質問を投げかけることで相手に再考を促すのだと言います。

一流の交渉人は、攻撃や反撃に出ることがほとんどない。そのかわりに交渉相手への関心を示し、「それでは、私の提案には利点がない、と思っていらっしゃるのでしょうか?」というような質問を投げかける

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (p.182). Kindle 版.

人は自分で選択したことによりこだわりを持ち思い入れも強くなります。
そのため、議論で言い負かして主張を変えさせるのではなく、質問を通して再考を促し、自分で意思決定をさせることこそが、相手の考えを変える上で重要だと言うのです。

私は議論をすることが好きなのですが、これまで議論の際に「相手に自分の正しさを認めさせたい」という感情を抱くことが多かったです。しかしそれでは逆に相手は遠ざかってしまうと学びました。
本書にある通り、「相手とダンスをする」ようなメンタリティで、相手の主張の正しいと感じることは認めつつ、お互いのゴールを探る姿勢でこれからは人との議論に向き合っていきます。

再考し続ける社会・組織を創造する方法

このパートでは、バイナリーバイアスとその克服方法についての主張が印象に残っています。
人間は複雑性を嫌うため、物事を単純化してしまう傾向があります。
しかし当然ながらそのような思想は再考することの妨げになります。
バイナリーバイアスを克服するためには、物事は単純な白か黒かではなく、グラデーションを持っていると理解することが重要だと主張しています。
(このあたりはまさに以前紹介した書籍ファクトフルネスで解説されていた内容と併せて学びが深まりました。)

バイナリー・バイアスのこうした好ましくない傾向への対処法は、「複雑化」である。つまり、何かのテーマについて検討する際には、多種多様な観点を提示するのだ

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (pp.274-275). Kindle 版.

加えて、物事の複雑性と間にあるグラデーションやニュアンスを認め、事実の複雑性を認めることでその人の信用性・評価は上がると主張しています。

本書では地球温暖化に対するスタンスを例にしていましたが、身近な仕事でも、安易に「誰・どのチームがxxxの原因だ」という思考になってしまい、サイロを産んでしまうケースは少なくないと思います。
世の中を単純化してありもしない対立構造を作り上げるのではなく、幅を認めて建設的な議論ができる人間でありたいと思いました。

また、学び続ける組織を構築するための方法についての主張も印象的でした。NASAの失敗を例に挙げ、学びの文化の醸成には、心理的安全性と説明責任の組み合わせが重要であると主張します。

「成果の説明責任」だけではなく、「過程や手順についての説明責任」(プロセス・アカウンタビリティ)を果たし、判断を下す際にさまざまな選択がいかに慎重に検討されたのかを評価しなければならない。

アダム・グラント. THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (Japanese Edition) (p.357). Kindle 版.

成果主義のみにこだわりすぎると心理的安全性が低下すると著者は主張します。失敗を共有することにネガティヴな側面が生まれてしまい、失敗や懸念を共有することに障壁ができてしまうからです。だからこそプロセスを評価することも重要だと言うのです。

私も自分の行いを振り返る際には結果のみではなく「各ステップで選択したことは正しかったのか?」という観点を持ちたいと思いました。
また自分が組織を構築する際には成果のみならずプロセスもFBすることで学び続ける組織を作りたいです。

結論

本書はタイトルの通り「再考することの重要性」を様々な具体例と共に私たちに教えてくれます。
具体例がとても印象的であり、抽象的な主張もスッと理解することができます。
また重要性だけではなく最後にはまとめとして具体的なアクションも提示してくれており、非常に学びが多くて素晴らしい本でした。
大学教授をされていることもあってデータやFactベースでの議論がされているので納得感もあります。総じて非常におすすめです。

私はSoftware Engineerとして働いているのですが、IT業界は移り変わりが早く、Unlearningする機会が他の職種よりも多いと思います。
そのこと自体は大変である一方で、「再考する力」を養う上でこれ以上なく恵まれた職種である、と本書を読んで考えるようになり、ますますモチベーションが上がりました。
本書では「ベストプラクティスではなくベタープラクティスを常に模索せよ」という主張がありました。ベストプラクティスで思考停止するなということです。
これからも一度勉強した「ベストプラクティス」に固執するのではなく、ベストプラクティスは変わり続けるものと心得て、新しい技術や考え方がでた際に「ベターなものはなんだろうか?」と問い続けられるようなマインドを持ちたいと思います。

また、私はストレングスファインダーの1位の資質が「内省」であり、再考する能力とはかなり親和性が高いと感じています。この自分の資質を最大化するためにも、(物事を過度に遅延しない程度に)「そもそもなんでだっけ?」と批判的に問い続ける姿勢をこれからも貫きたいです。

最後まで読んでくださりありがとうございました!
少しでもお役に立てましたら、コメントやいいね・フォローを頂けると幸いです。

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