ずばばばからのスッスッスッ。

速読、というものに憧れている。

なんというか、こう、ずばばばっと。

ずばばばばばばば! っと、本を読めて、しかも覚えてられたら、素敵。

いや無敵じゃないの?  と、思ったので。

だから、とりあえず、帰りの電車内で、iPhoneのKindleアプリを立ち上げ、とあるライトノベルを開いてみた。

(ちなみに、ぼくは、電車内ではKindleを利用しています。紙の本は両手がふさがるので、家や喫茶店で読みます)

そして、「自分はこのくらいのスピードで読みたい」という速さで、どんどんページをめくってみた。

スッ、スッ、スッ、スッ、スッ、くらいの速度。1秒ごとにめくっていく感じ。

もちろん、なにがなんだかわからない。内容もまったく読みきれない。

でも、構わず、スッ、スッ、スッ。

隣に立っていた男子高校生が、驚愕の表情でこちらを見ている。

何食わぬ顔でスッスッするぼくを、「嘘……だろ……?」というように見ている。

そんなんで読めるはずないだろ……?  と。

うん、きみは正しい。まったく読めていない。もう、何がなんだかわからないんだから。

こんなので、読めるはずがない。

わかってる。でも、続ける。スッスッ。

いかにも「ぼくは天才だから、いつもこうやって読んでるけど?」という顔で、ただスッスッし続ける。

一瞬だけ目に入った情報を忘れないって、天才っぽいじゃん。

まあ、できてないから、天才じゃないんだけど。

ああ、わけわかんない。内容がまったく入ってこないよ!

で、十分ほどで、最後まで到達。

ちょうど目的の駅についたので、天才らしく、颯爽と電車を降りる。

天才らしい電車の降り方など知らぬけど、やはり颯爽と降りるんじゃないかな。イメージ。


しかし、これを速読と呼んでいいのかどうか。

なんとなく、ここで人物紹介をして、ここで事件が起きて、ここでピンチになって、ここで大技を繰り出して解決した……などの全体の構成がおぼろげにつかめたかな? という感じはするけど、やっぱり、たのしくはない。

収穫といえば、「こいつ天才か?」という名誉ある視線をいただけるくらい。

うーん。もうちょっとだけ、お試し速読してみようかな。何か、見えてくるものがあるかもしれない。

と思った、そんな、スッスッスッ、な、帰り道なのでした。




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