見出し画像

美羽の祝福と、一騎と総士の別れについて

THE BEYOND最終巻が届きました。ので劇場で見た限りでは書ききれなかったことを書いていきたいと思います。

美羽が与えた祝福

美羽は、失われたものをよみがえらせ”おはなし”することを選びました。美羽自身が見出した祝福です。美羽は人間の側に生まれ、しかも自然受胎によって生まれた誰よりも混じりけのない人間です。メモリージングがない分他のどのパイロットよりもパイロット適性がなく(そのわりにはザインをびゅんびゅん乗り回していますが)、その代わりにフェストゥムと対話する能力を持っていました。どちらの言語もわかる彼女が見出した祝福は、とにもかくにも停戦させることでした。皆城乙姫が与えた祝福は「悲しみ」(仲間が傷ついたら悲しいよね)、皆城織姫が与えた祝福は「痛み」(仲間が死んだらつらいよね)。二人の島のコアは、フェストゥムと分かり合うために、婉曲的にではありますが、人間の価値観を伝え続けました。これらが意味することは、ミールに対して考える猶予を与えたことでした。悲しみや痛みを伝えたとしても、戦争の終結・フェストゥムと人間の共存には直結しません。二人のコアはミールに対し、メッセージを受けとめ、よく悩んで、結論を出すことを望みました。乙姫と織姫はミールを信じて祝福を与え続けたということです。しかし一部のミール(来主操が属する群れ)との共存は叶ったとしても、べノンを率いるミールやマレスペロに変わってもらうだけの力はありませんでした。要するに、二つの群れはわからず屋でした。わからず屋のミールにわかってもらうために美羽が与えた祝福は戦争によって失われたものを再生すること・おはなしすることでした。過去のコアに比べると即物的な感じがします。

本当の意味で皆城総士はいなくなった

こそうし「僕が皆城総士だ。お前が知ってる誰かは、もうどこにもいない。文句は言わせないぞ、僕はお前に勝ったんだ」
一騎「お前の言う通りにするよ、総士」

BEYOND第12話Bパート

楽園にて、こそうしは総士の灯篭を流すように言います。永らく総士の影と共にいた一騎に、総士と別れるように促します。

総士「君の名を僕は知らない。僕の名は皆城総士」
こそうし「黙れ!それは、僕の名前だ!」

BEYOND第9話Bパート

第9話では、マークニヒトがさらなる変化を遂げるために、総士とは異なる存在であると断言します。ニヒトに残留した影の総士と別れます。

改めて、一作目→EXODUS→THE BEYONDの順に最終巻を見てみると、一騎の元にぴったりとくっついていた総士が、EXOでは姿勢を横に向け、BYDでは完全に背を向けています。かなり大雑把に三作品を概観すると、フェストゥムの側に奪われた総士を取り戻し(一作目・HAE)→転生という形で総士との別れを体験し(EXO)→総士の喪失を受け入れていく(BYD)流れがあります。一騎はBYDの物語を通して、総士との訣別をしなければなりませんでした。そして総士にとっても、「新たな未来」「地平線の果て」にこそうしが辿り着いたことで、第4世代(こそうし、美羽)と彼らを導く一騎への心残りがなくなったと思われます。各最終巻の総士の描かれ方が示唆するところは、一騎と総士が訣別する道のりを表したものだと考えられます。

一騎の元を去る総士、この世を去る総士

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?