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ものを食べる時間が一番もったいない、と言っていた私へ

仕事が早く終わった金曜の夜。
約束はなし。やることもなし。明日の予定もなし。

暇を持て余して、とりあえずアパートを出る。
車に乗って、あてもなく走らせる。

そういえば、欲しいものがあった。
行き先を決めて、ハンドルを切る。

とっても不便、だけど

先週から欲しいと思っていたものが、やっと買えた。
ただのノートだけど、気に入ってるノート。
ネットで買うには安すぎて、送料の方が高くついてしまう。
でも、買いに行くには車で40分かかる。

こういうことを「不便」って言うのだろう。
確かに東京にいたときは、欲しいと思ったその日に買って帰ることができた。便利だった。

でも「便利=素晴らしい」ことなのだろうか。

不便でも実は大丈夫だと

田舎に越して4年。
今のところ、不便で困ったことはない。
困ったことがあっても、なんだかんだでどうにかなった。
大抵のものはネットで手に入るし、誰かが貸してくれたりもする。

そもそも、欲しいものがすぐ手に入る世の中がむしろ異常なのかもしれない。
たくさん手に入れても、結局、持て余してしまう。
それに、すぐに手に入ると、余計なものまで得てしまう。

世の中ちょっと便利すぎるかも

久々に入ったチェーン店でのご飯は、なんだか少し物足りなかった。
大量に仕入れられた材料で、アルバイトがマニュアル通りに作ったそのご飯を、本当に美味しいと感じるか。
家族、学生、おじさん、主婦の二人組。
いろいろな人が席については、料理が運ばれ、食べ、店を出ていく。
表情の変わらない店員さん。こちらも料理を運ぶこと以外は何も求めない。
広い店内は、少し寒い。

「ものを食べる時間が一番もったいない」とかなんとか言っていた自分の価値観は、この4年間でがらりと変わった。
何でもかんでも「うまいうまい」と口にしていた自分の舌は、少しだけ肥えてしまった。

お店の数は多くない。
夜遅くまで営業しているお店も数少ない。
けれど

誰かが大切に育てた野菜を、誰かが自慢の腕をふるって調理する。
思い入れを持って育まれた店内に、その店の味を求める人々が訪れる。
周囲の人とも笑顔を交わしながら食べるその料理は、どうしたって美味しい。

そんな味を覚えてしまったら、「ものを食べる時間が一番贅沢」になった。

不便さの代わりにそんな贅沢を手に入れた。

こうして一人で車を走らせ、欲しいものを求めて街に出る。それもまた、不便だからこそ生まれる、良い時間のような気がした。

#移住 #田舎 #便利さと不便さ

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